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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第十章 チーズは何を救う? 後編 始まりの終わりと終わりの始まり

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ラブっていろいろあるんだな

ロールプレイングゲームやった事ない人も~

「やはりてめえはバケモノだ……!」



 全身を震わせるアックーの体が、心なしか小さくなって行く。


 体は小さくなり、どんどん白くなっている。ハラセキの光に勝てそうなほどの白さだ。



「俺は、お前を……」

「許さないって言うんなら別にいい。でも俺は許したい。そして」

「この野郎ぉ!」


 刃の数はもう数えられそうなほどになっている。

 折られたそれもいつの間にか消えており、まるでチーズが魔物としての痕跡をまるっきり消しにかかっているようだ。

「お前の、お前の、増長が………!」

「言い訳はよせ!」

「いいえ、アックーは本当にそう思っています!」

 アックーは俺の暴走におびえていた、怖がっていてくれていた。それだけでも俺は嬉しい。

「良きかな。まことに良きかな。そういう事だぞ、ツヌーク」




 ここまで来て、ようやく余裕のできた俺は後ろに視線をやった。




「兄上様!」

「これが現実だ……!」


 チーズの霧を吸い込んでしまった上にまとわりつかれたキミカッタの体が、アックーと同じように縮んで行く。


 緑色の肌は消え、鎧も縮んで行く。


「これがブラックチーズの顛末だ」

 キミハラ様の淡々とした言葉の通り、キミカッタが急速にただの人間に戻って行く。

 それでも強いはずなのだが、ミナレさんとキミハラ様に左右を包囲されていてはどうにもならない。

「私は、私はァ!」

「もういい、全部デーキが悪いのだ。そうだろう」

「ああ、ヅケース家を乱した重罪人のデーキは既に死亡が確認された」


 デーキの実際の責任の重さがどれだけなのか、俺にはわからない。




 とにかく、俺は改めてキミカッタとツヌークとの決着が付いた事の確認と、俺の最後の使命の確認をした。




「アックー……」

「うう、お前に、お前に、俺は……俺はぁ!」

「すまんなアックー」


 コトシさんが、ハラセキの光の中に入って来た。


「お前の焦りを甘く見ていた。多くの人間たちが一挙に得てしまった地位と栄光にのぼせ上がり、破滅する光景を幾度も見て来た。だからこそ縁の下の力持ちであるノージを称え、決して浮かれ上がらぬようにと警告して来たつもりだった」

「まったくもっともだと思います」

「だがそれが頑迷な片びいきと映ってしまったのだな。我々の不徹底がデーキの跳梁跋扈とこの事件を招いたとも言える」

「いいえ、結局はその言葉を聞き入れなかったアックーさんの責任です」


 


 コトシさんの真摯な反省の言葉に覆いかぶさる、聖女様ハラセキの声。




「ノージ様はアックーさんを今でも慕っています。ですがその思いがアックーさんに届く事はありませんでした」

「……」

「救いを求めていない存在を救うのは、それこそ救いの押し売りです。それは自己満足であり、それこそがデーキの犯した最大の罪です。デーキはその力を他の人のために使おうとしたのでしょうか?」




 ハラセキとは思えない厳しい言葉。



「…わかった」





 

 俺は再びチーズを作った。


 既にほとんど真っ白になり、刃も両肩に二本しか残っていない上に背丈もほぼ元通りになったアックー。



 回転する事もできず、ただこっちに向けて歩み寄って来るだけの魔物。



「お前、お前……」

「アックー……」


 チーズが目に当たりでもしたのか、元から視力がないのか、左右にふらつきながら進むアックー。




「行くぞ!」




 その口に向けて、俺はニュートラルチーズを投げた。


「このぉ……」


 全く弱々しい声と共に、人間の手を振る。


 でもそれで右肩の付け根に残っていた刃が役に立つはずもない。




 チーズは口の中に、飛び込んで行った。


「おげ、あが、ガガガ……」


 懸命に吐き出そうとするも、もう喉の力も残っていないらしい。




「もう、これまでだ……」

「ふざ、け、あが……」


 そしてチーズは嚥下された。




 そのまま、最後の二本の刃も消え、前のめりに倒れ込んだ。




 チーズで一杯の地面に落ち、重たそうな音を立てながら。









 ——————————本当、チーズまみれなのにイケメンだよな。







「どうなんです」

「彼は本来使わないほどの力を使ってしまった。体力の限界などとっくにオーバーフローしているだろう」


 だが、そのイケメンが動く事はない。




 ——————————もはや、手の施しようがないと言う事か。




 一方でいつの間にか縛られているキミカッタはまだ元気そうであり、それこそ感情の差って奴なんだろうか。


「アックー……」


 その事を証明するかのように、アックーはまともに聞こえないほどの声で俺に呼びかけて来る。口から血が流れ、チーズ越しの顔は真っ青を通り越してもう白くなっている。


「しゃべるな、体力を使うぞ。タフネスチーズでも食べるか」

「んなもん使ったってどうせ先は見えてるんだよ、俺が一番よくわかってる……」

「俺はお前に、いろんなことを教わった。そのおかげで決して威張らず、自分がいつも大した事がねえって思う事が出来るようになった」

「ほめてんのかよ、それ……」

「いやそのおかげで、俺は今まで生きて来られた。教えてくれなかったら、俺はとっくに死んでいた」




 その事については、いくら感謝してもし足りなかった。


 アックーはいつも自信満々だったけど、その自信に見合うだけのことをきちんとやっていた。



 俺はできなかった。




「俺は、ずっと、お前……を……」

「もうしゃべるな、体が持たないぞ!」

「だから、だ…だからてめえは、バケモノ、なん、だよ………………」




 その言葉と共に、アックーは地面に倒れ込んだ。




 そして、二度と呼吸もしなかった。







「泣いて、いるのですか……?」

「ああ……」







 これまでで、一番悲しかった。







 涙が止まらねえ、止めようとしてねえのに勝手にあふれて来る。




「……わかった、できうる限りデーキのせいにしよう」




 ——————————そのキミハラ様のお言葉が、俺にはとてもありがたかった。

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