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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第十章 チーズは何を救う? 中編 究極のチーズ

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村人を守る「粉」チーズ

「こ……これは!!」


 キミカッタに付き従う軍勢から人間がいなくなっていた。


 キミカッタと、ツヌークを除いて。


「コボルトもいるが、オークやスケルトン、いや……!」

「なぜだ、なぜ小柄とは言え竜人がいる!?」



 竜人は竜の血を引く存在であり、並の人間とは力のケタが違う。



 しかも、だ。



「あの装備はどう見ても騎士のもんじゃねえ!」



 竜人が持つ武器は剣や槍じゃない、どう見てもクワや鎌だ。


「……村人さん、なのですか……?」


 ハラセキが尋ねたように、あの装備は明らかに村人たちのそれだ。


「どうして騎士がコボルトやオークで、村人が竜人になるんだ!」

「デーキは言ったんだよ……このチーズは心の中の悪意って奴に反応する、とな……」

「てめえ…………!」

「何がてめえだよ、てめえが悪意を抱かれるような真似をしたから悪いんだろ」

「メシ食ってても悪意なんて買えるだろ!」


 うまい飯を食うだけで悪意が買えるだなんて事は、俺だってもう知っている。

 ファイチ村でミナレさんと一緒に飯を食ってた時、マセケとか言うチンピラに絡まれた。その時本人そのものはそれなりに純粋な気持ちで泣いていたが、それゆえにむしろ怖かった。俺やミナレさんへの哀れみと、その底にある軽視。それゆえに悪意が膨れ上がり、あんな事を言ったのかもしれねえ。



「ああ、ああ……!」

「ギビキ、ギビキ、ギビキィ……!」


 正体を失った村人たちが次々と迫って来る。

 目標は間違いなく俺だ。

「皆さんはいったん後退して下さい!俺が全て引き付け振り回しまふ!」

 タフネスチーズを口に入れ、体力を高める。全てを引き付け振り回し続ければ、むしろ戦いは楽になる!


「さあ来い!」

「ノージィ…!」

「アックー!さあこっちへ!」


 スピードでは俺に負けているアックーを引き連れる。

 そしてギビキを殺したも同然の俺を狙う村人たち。その全てをこの戦場から消せばいい!

 その間に……!


「ギビキィ!」

「さあ来い!さあ来い!」

「ギビキの仇ぃ!」




 ……だが、来ない。

「え!?」

 竜人と化した村人たちは事もあろうに村人、それもリンモウ村の人たちの方にばかり向かう。


「大丈夫だ、やってやれん事はない!」


 村人さんたちはやる気だが、それでも犠牲は生まれてしまうだろう。何より

「これ以上お前のような奴に好き勝手される訳に行くかバーカ!」

 と言う言葉が腹立たしい。


「しょせん庶民は庶民だ、おとなしく言う事を聞いとけばいいのに!」

「庶民もなしで国が成り立つか!このままこの国全ての人間を軍人にして戦場に駆り出す気か!」

「それも悪くねえな」


 で、これだ。




 ——————————呆れた。心底から呆れた。




「人間はずっと魔物に苦しめられて来た。その力をこっちの物にできればこの領地を、この国を発展させ、世界を手に入れる事なんか簡単なんだよ!残念ながらデーキは死んじまったようだからな……!」

「人間を魔物に変えるような奴は要らねえ!」

「魔物じゃなきゃいいんだな、それもデーキしか作れねえが」




 この言い草に頭に血が昇らなければ、俺はでくの坊だろう。




「ふざけんじゃねえよ……!」

「お?」

「ふざけんじゃねえよ!」




 俺は走りながら、たくさんのチーズを作り出した。



 こんな時、何が必要か。どうすればいいか。



 チーズを作り、抱え込みながら、距離を開ける。



 コボルトやオークもいる。



 その村人や騎士のために!




 追いかけて来ないおかげで、簡単に距離は取った。口に向かって、投げ付けて……

「待って!」

「オユキ様!」

「そのチーズ、私に貸して!」


 オユキ様が、空っぽの鍋と共に駆け付けて来た。

「どうするんですか!」

「こうするの!」

 オユキ様は俺の懐のチーズをひったくり、鍋に叩き込んだ。

 今更焼いても間に合うはずがないのにと思っていると、オユキ様は吹雪をチーズに吹き付けた。



「ニュートラルってのよねー。それを、こうして!」

「えっと…!」

「こうするの!」


 そして凍ったチーズを氷製のハンマーで叩き割り、粉チーズにしたニュートラルチーズを手でつかんで投げた。




「チーズが、宙を舞っている……」

 牛乳の味の強さを示すように真っ白な氷のようなチーズが宙を舞い。次々と体中にくっつく。


 俺の口にも入る。味はしない。




 そう。




「ウ、アア……!」

「アアアア…………!」


 魔物たちの口にも入る。


「どうした!魔物たちが苦しんでいる!」

「お前たち、口を塞げ!口を!」

「ウオオオオオオオ……!」

 魔物たちが苦しみ、体を震わせている。



「なんだぁ、スケルトンの右手に肉が生えてるぞ!」




 魔物たちが悲鳴を上げる中、決定的とでも言うべき言葉が飛ぶ。




「なんだよ、お前!魔物さえも…………!」

「自分が何やったかわかってんのかぁ!」


 不自然な形で作られた魔物。


 それを救えるのはこの「ニュートラル」だ。


 あるべき姿・自然な状態に戻す事の出来る、チーズの力。




「フン……だがお前はまだ勝っていない!」

「何を…!」


 しかしそれでもなおキミカッタの自信は崩れていない。

 まったく、まだアックーが残っているとしても…………




「ノージ!竜人たちはまだ健在だ!」

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