雪の女王様の登場!
「よう、チーッズ!」
この前と同じように、ギャグと共にやって来た女性。
「雪の女王様!」
「これまでさんざん迷惑かけちゃったからね、ここで恩返ししないと!」
「はい!」
俺はさっと雪の女王様ことオユキ様にタフネスチーズを渡す。
戦いの場に出る以上欠かせないはずだ。
「いただきまーす!」
口をモグモグさせながら氷の礫を投げ付ける。
マナーが悪い?戦闘中に知った事かい、まあ戦闘なんて舌をかむ事もあるから十分危ないけど、今はそんな場合でもない。
「drd、おmyh…mqrpr。p:99うw90~!」
言葉が途切れて来ている。やはり、ハラセキの祈りが効いて来ているのか?
「オユキ様!」
「道を開けてください!」
オユキ様が両手を合わせ、氷の力を貯めている。
五年間もこの村を襲ってしまった力を、正しい方向に使おうとしている。
「わかった!」
「うむ!」
ミナレさんとコトシさんもさっと横へ避け、オユキ様とファントムが真っすぐ一直線の関係になった!
「いざっ!」
氷の光線が、ファントムを襲う。
命中した光線はファントムをあっという間に氷に包み動きを止める。
でも、
「あーもう薄いなあ、これじゃすぐ破られちゃうよ!」
オユキ様が言った通り氷が薄く、すぐに動き出しそうだ。
「どうする、何度も何度も止めてもしょうがないぞ」
「ファントムって守りは固いんですか」
「ああ固い。だが個体差があり、やはり生前の魂によるだろう。
この一撃でこの程度の打撃だと、かなり…」
「y……え……」
ああもう、もう動き出しそうじゃないか!
って言うかこの声どこから出てるんだ!
「ファントムの声は、喉からは出ない。出るとすれば鎧そのものだ、生前使われてた鎧からだ」
「でもそう思っていたんですが、鎧と本人が一体化してて、なかなか引きはがせないんです」
「引きはがす?」
「はい、間違いなくここには魂があります。人間の、でもファントムって魔物に強く縛り付けられて、いや!」
「y、、l、hdkう。あgむyflうぇ、hqrぁうい~!」
ああ、氷がはがれた!
また襲い掛かって来る!
「どうしたんだ!」
「魂そのものが、鎧になってる感じです!」
「魂そのものが鎧に!」
「そうなんです、ファントムってそういう存在なんですか!」
「それはない!ファントムは迷える魂を操る魔物だから魂は二つあるはずだ!」
このファントムは、強い弱い以前に他の奴とは違う。
でも違うからと言って対策があるのか、「素直に」この鎧を叩き割るとか、そんな事が出来る訳もないし……。
「d-k、rkrst……gymぇ…」
「でもどこか弱っている感じはする。依然として攻撃は止まないが、必死に何かに対抗しようとしている」
「同じ魂の中で?」
「わからん。おそらく、強引に戦闘兵器としての存在を植え付けた感じで、本来の魂と違っているのかもしれん。だがとりあえず止めなければ」
止めると言っても、オユキ様の氷の光線でもほんの一瞬となると……
「ねえノージ、もう一つない?飛び切りおいしいの」
「おいしいのって」
「それを、キミハラにくれないかな」
で、女王様は一体何を言ってるんだ—————?
「えっと、おいしいと言えば、ラブ……」
「やってみる価値はあるだろう」
そしてミナレさんまでこの調子。まあ、このラブってチーズにどれほどの意味があるのかはわからないけど、作ってみるしかない。
「うむむむ…」
必死に力を込めて作る。一個分だけど、正直力がいる。
「sr、gbk、tbtt、tykntt……!」
—————ファントムの叫び声が、だんだんと短く、具体的になっている気がする。
何だ、何か言いたいんだろうけど、いったい何なんだ!
「とにかくチーズを!」
「はい!でもキミハラ様じゃなければ」
「よし!」
キミハラ様は機敏に動く。俺だけが恐ろしく悠長に思える。
何だろう一体、何が問題なんだろう。
「受け取ってください!」
俺は素早く下がって来たキミハラ様にチーズを投げる。キミハラ様は素早く受け取り、オユキ様にチーズを渡す。
「俺達にこの危機を乗り越えさせてくれ」
「危機を乗り越え、木々《きぎ》に祝福を!」
……ダジャレはもういいとして、そのチーズを口に含んだオユキ様の周りの空気が一挙に冷え出した。
「来た、来たわ!これが、キミハラの思い!」
キミハラの思いって、キミハラ様唇をかんでるじゃないかよ、まあ明らかに笑いをこらえてだけどな、正直そんなんで……!
「すごい!」
「これが雪の女王様の本当の力だか!」
——————————ものすごい速さと細さの、氷の光線。
それでいてファントムに直撃するとあっという間にさっきの数倍の厚さでファントムを包んで行く。
「魂が弱っています!」
「何!?」
「いえ、魔物にされていた魂が弱ってるんです!」
そしてそこから出て来たハラセキの爆弾発言。
「ファントムにされていたのか!?」
「ええ、元々の魂を強引に染め上げたんです!そう言っています、しかも…」
「の、mycwl……お、うきぇlぴほ:…、じぃ…6むqwlh、p98、…!」
ファントムの声が響く。
って、聞き取れた文字は……の……お……じぃ………………。
ノージ!?
「なんで俺の名前を!」
「おれ、は、る、しうlふl、わあ……」
「まさかお前ルワーダなのか!」
ルワーダと言う単語に、みんなの背筋が凍り付いた。
ルワーダは俺とは違う、名うての冒険者だ。
「ルワーダは殺されたはずだが、まさか……!」
「ん6えmlうyめg、あっ、うmh;q83、くー……でーき……!」
「アックーとデーキがやったのか!」
「あ、ああ…tg87おむc;え;い、い、えゑ;、hxxy、いえmw。m…ああああ……」
二人の名前を出した途端、ファントムが苦しんでいる。まさかこれも!
「いや、もう魂が限界のようです……」
「とどめを刺してくれって事か……」
「ち、bちぇ、い、ず、くび、ない……のに、いぶ…ybj、lmbjlw、くろに、むり、bぇkvmぅいぇうぃwlq、そし、でぇぇぇぇ……!」
本当に、聞くにも見るにも堪えない。
これが、あの少し気が弱いけど真面目で優しい男の最期かよ……!
「オユキ様…」
「わかった。栄光ある勇士よ、安らかに眠れ……」
三発目の光線がファントムになっちまったルワーダの体に当たり、さらに大きな氷の塊となる。
その氷塊がファントムの体を構成する鎧を押し潰し、砕いて行く。
「これで、ルワーダは完全に…」
「ああ……」
勝利の喜びなんかどこにもねえ、戦いが終わった。




