どうしてもこうなるのかよ……(アックー視点)
許せねえ。本当に許せねえ。
「背中からバッサリと……」
「ああそうです。不意を衝かれたとしか思えません」
コトシのおっさんも感心したような目でルワーダの死体を見下ろす。
ったく、こっちは涙も出やしないってのになんでこんなに泣けるのか……。
っつーか、いきなり首だけになってたんだからな。
「コトシさん、容疑者は」
「わからん。だがルワーダほどの人間を斬ったとなると相当な実力者だろう。太刀筋からしても相当に大きな得物を使ったのは間違いない。しかも相当に鋭い」
「人間ですかね」
「わからん。だがルワーダと言えばまだ若くしてかなりの強者だった存在だ。供養せねばなるまい」
供養、か……。
「ったく、何が悲しくてこんな…!」
「そうだな、閃光の英傑がここまであっさりと崩壊するとはな…ギビキの乱心のショックもあるだろうに」
「何様ですかね、本当に、こんな事したのは……そいつを絶対にぶった切って、いやもっともっと苦しめてやらなければ気が済みませんよ」
「血気に逸るな、ルワーダが相当な強者だと言う事はお前が一番よく知っているだろう。お前ひとりで挑めば同じ轍を踏む。こういう時こそ仲間と力を合わせねばならぬ」
「うるせーよ!」
「気持ちはわかるが落ち着け、今度加わったデーキとか言う魔導士がいるだろう。その彼と共に戦うのだ。もちろん我々も力を貸すぞ」
俺はルワーダの生首に向かって頭を下げ、踵を返して宿へと向かった。
……ああ、むかつく。本当にむかつく!
何をどう取り繕った所で、言ってることは全く同じじゃねえか!
(ノージ、ノージ、ノージ……!!結局それかよ!!)
デーキの事を紹介した時でさえギルマスのおっさんもコトシも同じだ。
「よろしくお願いいたします」
「新生閃光の英傑の実力を見たい物だな」
片や塩対応、片や俺の存在ガン無視。
何が新生だ、役立たずを放逐してその隙間を埋めただけなのに!
俺らがノージの存在を黙殺していると、二人してやたらと値踏みするようにデーキの事をジロジロ見やがる。
なんだよ、デーキはノージの代わりか?代わりじゃねえよ、上位なんだよ!
「悔しいと思わねえのか!」
「はあ……」
「ノージってのはチーズを出すぐらいしかできねえ野郎だ!そんな奴の穴埋めになるのかって思われてんだぜお前!」
「ああいう手合いには成果を見せて黙らせるのが一番です。まあどうぞ」
そう言いながらチーズを出してくれたデーキを見ても、オッサン連中はノージと比較しやがるだろう。ったく、ちょっとノージがいなくなったぐらいで何だってんだ、ほんの三、四発不運が続いただけなのによ……ったくたかが荷物持ちと小間使いがいなくなったぐらいで何の問題があるっつーんだか!
「えらく不機嫌なようですね、悲しいのかと思いきや」
「両方だよ!っつーかどうしたらコネなんかできるんだよ」
「ええまあ、これでもその手の筋には知り合いもいるものですから。ましてやこれはある種の仇討ちですからね」
「あいつが悪いんだよ……あの腰抜けが」
デーキが呼び出した魔物により、あいつは首をぶった切られた事になっている。
「それで首から下は」
「ちゃんと確保してあります」
「できるのか、首がないのに」
「大丈夫ですよ」
そして、デーキは首から下をきっちりと確保していた。
俺がギビキのためと言って作らせた棺桶の中で、ルワーダの死体は横たわっている。
腰抜けのくせに、立派な胴体をした男が。
ちなみに本当はこいつのチーズであらかじめ肉体を死に至らしめ、そこから馬鹿でかい刃物で首を斬り落としただけだ。ったく、いいかげんなギルドと冒険者だよな。
「なんであんな事が言えたんだろうな」
「結局、その程度の存在だったと言う事です」
何が悪いだって?全部ノージだ。
あいつに頭を下げて非を悔いるべきだと言い出さなきゃ、こんな事はしなかったのに。
あいつさえいなきゃギビキが死ぬ事もなかったっつーのに。
そして
「仇討ちのためなら何でもできますから」
「仇討ちって、お前が最初に」
「ええ、ノシップはいい男でしたよ。それがああもあっけなく死んでしまうとはね、これはアックーさんの、いや私だけでなくノシップのための戦いでもあるのですよ」
「あの野郎は本当恐ろしい奴だぜ」
ノシップとか言う、デーキの仲間。
腕利きの暗殺者でこれまでも多くの人間を仕留めて来た存在。それがノージの手により殺された。
まったく、あの野郎は腰抜けで役立たずのくせに変に度胸がある。そんなにおごり高ぶり、身を滅ぼしたいのか!
「俺は言ったよ、お前の仲間があいつに殺されたのをほっといていいのかって。したら身を守るためだからしょうがないだろ、って言うかお前何やってるんだって。
あきれた、本当にあきれた。ギビキについてあっさり知らぬ存ぜぬを決め込んだくせにノージなんかに執着して、しかも大事な今の仲間の旧友についてはその態度。本当に信じられねえ」
「弱いんですよ、結局」
弱い、か。
確かに未知の存在に注意することは重要だ。だがそれが進み過ぎてしまうとああなっちまう。
俺はノージのようにはならない。あいつがノロノロと準備をする間、俺達はどれだけのクエストを逃して来たか。
「強くなれるチーズはあるのか」
「もちろんです。ただまだ出すのは早いです」
「そいつで、お前の仲間とギビキの仇を…!」
「切り札は最後まで取っておくべきですからね。それにまだ、チーズとは別の手札もあるのですよ」
チーズとは別の手札。
そう、あいつを追い詰めるには俺達だけじゃ足りない。
勝ち誇って浮かれ上がっている連中に、鉄槌を下さねばならない。
俺だけにしかできない、俺達の正義。
そのために、俺達は動く事を決めた。




