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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第六章 ひとつの決着

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もういい!(アックー視点)

 なん、だって……?


「間違いない……」


 ルワーダが持って来た情報は、全く信じられねえもんだった。


 いつものギルドからかなり離れた町外れ、いやその町さえも飛び出した文字通りの雑木林。

 確かによそ様に聞かれたくないとは言え、何でこんな場所で話し合わなきゃならねえのか。この一流冒険者パーティの閃光の英傑がよ……。


 そんな場所で最悪の報告を持ち帰って来たルワーダは本当に申し訳なさそうに下を向き、デーキはやれやれと言いたそうに両手のひらを上に向けてやがる。




「それで、あいつは……」

「処刑されるかもしれない。少なくとも魔法使いとして、いや冒険者としてはまったく使い物にならない」

「使い物にならないって、どっか腱でも斬られたか?」

「違う、頭がおかしくなって大笑いし出して……あそこまで精神が乱れるともう使い物にならないだろう」


 オカマゴ村ってとこへ牛に変身して潜入したギビキ。


 ノージを首根っこを引きずってでも連れ帰って来ると豪語したギビキが心を壊し、冒険者生命を失っちまった。



「まさかノージか」

「ああ、それと二人の女性。片方は騎士で片方はメイドで、そのメイドの歌がギビキの魔法をことごとく無効化していた」

「お前どうしてギビキを助けに」

「馬鹿を言えよ、何もかも燃えて牛も人も草も燃えていたはずの村が数分もしない内に蘇ったんだ。そんな相手とどう戦えって言うんだ」


 馬鹿馬鹿しいとかって片付けるには、声色が真剣すぎる。ルワーダはいつもそうだ。昔っから都合のいい事も悪い事も全部ダイレクトに報告して来る。その度に余計な事を言うなと舌打ちさせられると共に、教えてくれてよかったと思わせる。ったく、大した才能だ。


「戦うとか助けろとかおっしゃいますが、そんな状況でどうしろと」

「デーキ!」

「彼の言う通りだとすると、ノージの仲間のメイドはこちらの攻撃をことごとく無効化した事になります。そんな相手に勝つ方法があるのですか?」

「…ねえな」

「ですよね。むしろその場から密かに逃げ切った方が素晴らしいと思います」

「逃げるには少なくとも都合がよさそうだよな」


 俺は皮肉をぶつけてやった。


 デーキが寄越したチーズで、ギビキは牛になった。


 そしてルワーダはネズミになり、経過観察をしに同行した。


 どんなに姿が変わっても小さくなってもポテンシャルは変わらねえって、確かにすげえチーズかもしれねえ。

 ———だが、それ以上の力を与えるもんじゃなかった。


「っつーかお前のあのチーズでギビキはオカマゴ村っつーとこに行ったんだろ」

「それが誠に残念ですけど、私自身を動かせるものではなくて……」


 さらに言えば、別のチーズには食べた人間を何処かへ飛ばす力もあった。

 ああこの様子だとどこかじゃなくて狙った場所に行ける。俺もこの前任務を解決するためにそのチーズを食べたけど、なぜか作った本人には効かねえらしい。チッ、ポンコツが。


「とにかくギビキはもういないと考えるべきだ。あれほど強力な魔導士の代わりはそうはいないぞ」

「で、どう報告するのです?」

「それはその…単独で任務に赴こうとして失敗したとか」

「バカ、んな事言える訳ねえだろ。俺があいつならギビキは間違いなく処刑だ。お前もそう言ってただろ」




 で、ギビキと言う戦力を失った俺らに襲い掛かる課題は二つ。


 その代替戦力と、ギビキがどうやっていなくなったかの説明。もちろん前者は大問題だが、目先の問題は後者だ。

「ギビキと言うリンモウ村を焼こうとした輩」を殺した所で、世間的な罪はそれほど重くないって言うかないに等しい。そんな奴とつながっている事がばれたら、こっちだって無傷では済まない。ノージからしてみれば自分の正当性をアピールする絶好の機会だって訳だ。そうなれば閃光の英傑の名前は完全に地に墜ちる。


 そんなだってのに、ルワーダが急にイケメンになりやがった。

 何のアピールだよ俺様を差し置いて、誰に見せる気だ!




「……なあ、認めよう」




 ルワーダはそのイケメンのまま、とんでもない事を口にした。


「何をだよ」

「確かにデーキは素晴らしい。デーキのおかげで数日で難関クエストを三つも突破できた」

「ありがとうございます」

「でも、デーキの素晴らしさとノージの実力は違う。

 ギルドの人もこの前はデーキ、そのまた前はノージのおかげ様だって言ってたように、俺とアックー、そしてギビキはそこまでの存在なんだ。それこそノージの言う事を聞いて動くべきだった。

 もちろんこれからデーキの言う事を聞いて動くってのは一向に構わない。今の俺らを支えているのはデーキと、そのチーズの力なんだから」



 …………回りくどいんだよって言い返す気もならねえ。



 結局、敗北宣言じゃねえか。



 俺達が、ノージよりも劣っているっつー……。


「で、認めた上でどうする気だよ」

「素直に謝ろう。俺達が馬鹿だったと」

「それで許されるのですか?」

「許されなきゃそれでいい」


 イケメンフェイスのまんま吐かれる、ヘタレ発言。


「考えとくよ。でもな、ギビキについては知らぬ存ぜぬを通せ。あいつが勝手にやった事にする。お前はちょうどいいだろ、見捨てたんだからな」

「だな」


 こんな事を言う程度には卑怯な奴。それがルワーダだった。

 



 だったら、俺もそうするまでだ。




 俺は違う。




 ギビキのように力がねえ訳じゃねえし、ルワーダのように卑怯者でもない。




 ましてや、あんなノージのような奴とは……!




 俺は……違う!

いよいよ「もう遅い」である。

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