(間章)全部あいつのせい(ギビキ視点)
「なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?なんでよ?」
他に言葉が出て来ない。
おかしいわよ、何もかも。
せっかくクエスト三連勝して帰って来てAクラス復帰だと思ったのに、あのおっさんはまだもう一、二回はやって来いって渋るし、それにもう一つの報告はもっとショックだった。
って言うか体が重い。なんでここ数日、思うように動けないの?
「何かの間違いだろ?」
「彼は嘘を吐きません。失敗した時は失敗したと言います。しかもどんなに都合が悪かろうと全てを言うのです。そうやって誠実だから彼は今まで生きて来られたのです。あんな事をやっておきながら、ね」
ノシップと言う名の超腕利きらしい暗殺者をデーキは紹介してくれた。あの女二人に囲まれて浮かれ上がっているノージに痛い目を見せてくれるはずの男。
「デーキ…?」
「何ですか」
「何ですかじゃないわよ、あの男に任せておけば絶対大丈夫って言ったわよね」
「残念ながら、私がノージを少しなめていたと言わざるを得ません」
せっかくあのノージが無残に死んでくれると思ってたのに、結果は生還どころか返り討ち。
何なのよ、あいつは一体何なのよ。
「あのおっさんたちがますます調子に乗るだけじゃないの!」
ノジローとかってギルマスも、コトシとかっておっさんも、あいつの事を買っていた。あいつがいない閃光の英傑はほどなくして没落するって自信満々に吠えていた。せっかく三つクエストをこなして鼻を明かしてやろうと思ったのに、何もかもが台無し。これじゃ私たちが倒して来た魔物も盗賊団も、見つけて来た宝石も報われない。ついでに、ご飯がものすごくまずい。
「何の間違いでもねえのかよ……ハァ………………」
「どうしたのよ」
「あのギルマスにはっきり言われたよ。まぐれか、さもなくばデーキのおかげ様だって。デーキのおかげ様ってのはまだともかく、それってノージのおかげさまで俺達は出世して来たのか、デーキはノージの代わりなのかよって聞いたら何も言わねえで首を縦に振りやがった」
「私の伝手は秘密ですよ」
「わあってるよ、おいルワーダ」
「……」
ルワーダはうつむきながら食事をかき込むばかり、目が死んでるし文字通り何も考えたくなさそう。ごもっともだけど使い物にならないって感じで話をする気にもならない。
「なあアックー……」
「何だよ」
「今更だけどさ、ノージに」
「馬鹿を言え、デーキが加わってから俺達は調子を取り戻してる、あんなお荷物を加える必要がどこにあるんだてめえ」
で、口を開いたと思いきやこんな調子。本当、マジ何を考えてるんだか。
そう言えば三人であいつを放り出すってなった時もルワーダは本当にいいのかってごねてたわよね、それに決まったら決まったでもっとたくさん金を渡すべきだったとか。
「まあ、あいつがどうしてもって泣きついて来るんなら戻してやってもいいけどさ」
最終的にそれで話は決まったはずだった。
だけどあれ以来ちっとも、ノージが私たちに触れて来る事はない。それどころか、好き勝手に名前を上げている。
私の方がずっと強いくせに、いやアックーともルワーダとも勝負にならないぐらいの実力差があるのに本当生意気。幼馴染とか言うけど、あんな力がなければただの雑魚。私が養っているも同然のぼっち男。何が悲しくて私が頭を下げなきゃいけないんだか、本当意味が分からない。
「何を望んでるんですか?」
「閃光の英傑がAランクに戻り、そしてさらに上の、世界一の冒険者パーティとなる事」
アックーはデーキの尻上がりな質問に言い返したものの、これこそ上っ面そのもの。文字通りの棒読み。
もちろんそれが最終目的ではあるけど、そのつもりで村を出て来たんだけど、大勢の人間、父さん母さんたちに祝福されて来たんだけど!
(何よ、あいつが踏み台どころか土台で、私たちはその土台をぶっ壊したバカだって言うの!)
でもこのままあいつが成功しようもんならいくら閃光の英傑がその上を行った所であいつが有能だと認めざるを得なくなる。そうなれば永遠に
「なんでノージを放り出したんだよ」
「もうちょっとすんなり出世できただろ」
「デーキを加えて巻き返したようにアックー・ルワーダ・ギビキの三人はノージのおまけ」
とか言われ続ける。
何としても、私たちが正しかったことを証明しなければならない。
「デーキあんたの知り合いは当てにならなかったじゃないの」
「私の魔法とマッピングは有効だったでしょう?」
「それはそうだけど!」
「ならばご自分でお話を付けてみてはどうですか?」
で、デーキに聞いたらこれ。
あほくさ。なんで私が頭を下げなきゃなんないの。わざわざ出向いてまでなんであんな奴に私が間違ってましたって言わなきゃなんないの。
「いやいや、何もへこへこしろなんて言っておりませんよ。二人ほどいる女たちを叩きのめし、己が非力を見せつけるのです。自分の側以外に生きる場所などない、と」
「ああなるほどね」
私は吐こうとしたため息を飲み込み、丁重に頭を下げてやった。
確かにその通り。ほんのちょっと忘れている間に新しい飼い主によって餌付けされただけ。元々の主である私たちが愛情を示してやればあっという間に元通り。これまでのように何でも言う事を聞いてくれる。
ああデーキもいるけど、二人して足でも舐めてもらおうかな。
「ですが相談として」
「なーに?」
「こんな物がありまして」
そんなデーキが取り出したのは、小さな一枚の板。
いや!
「チーズじゃねえかよ!」
その通り、あいつが出してたのと同じチーズ。
いや、少し違う感じのチーズ。
「まさかあんたも」
「まあ少しばかりできましてね、でもあんな事があった手前なんで」
ああ、なーんだ。
ぜんっぜん、特別じゃないじゃない。
「それならそうと早く」
「いえいえ、あくまでも皆様のためですから。それで……」
私はデーキから、二種類のチーズの使い道を聞かされた。
あいつはいつも何にも説明しない。
自分でも何もわかってないだけかもしれないけどいつも申し訳なさそうにチーズを差し出して、それで役目は終わったと言わんばかりに引っ込んでる。
それで陰で笑ってるんでしょうね!今頃!
「じゃあ、ちょっと行って来るから」
「おう、頼んだぜ!」
「言っとくけど殺すなよ」
「あくまでもお話するのが大事ですから」
私はアックーとルワーダとデーキ、三人からそれぞれなりの激励を受け、向かった。
見てらっしゃいノージ、あんたの自分勝手な悪戯は、オカマゴ村で終わりにしてやるから!!
「登場人物の紹介は?」「明日の午後7時」




