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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第五章 俺の最強の切り札!?
29/89

依頼(ノシップ視点)

「そんな任務ですかい…」


 俺は少しばかりため息を吐いた。



 まあどんな仕事でも引き受けるのが俺の流儀であり、生きる道だから。

 とは言え

「でも依頼のダブルブッキングは勘弁してほしいんですがねぇ」

 ってのも紛れもない事実だ。

 何でかは知らねえけど、同時に二つの依頼を受けるのはあっても今回のようなオハナシは初めてだ。


 事実上、同じ存在を殺してくれと二か所から頼まれたのは。







※※※※※※




 話は今から数十年前、オレが文字通りのガキんちょだったころだ。

 そん時から悪ガキだった俺は、好奇心にかまけて変な液体を飲んじまった。それがいわゆる猛毒であり、魔物とかを殺すための液体だって知らずにな。

 そんで俺は命こそ取り留めたけど、故郷に損害を与えたとかで爪弾きにされますますひねくれ、その勢いで魔物に突っ込んで、ほんの少し軽く、文字通りガキんちょのパンチで軽くひっぱたいたんだよ。

 したらその魔物がそんなへなちょこそのもののパンチ一発で倒れ込み、そのまま泡を吹いて顔を真っ青にして倒れ込んじまった。一応手柄だしと思って魔物を引きずって持って帰ろうとしたけど、その姿を見られたせいでか本当に故郷から追い出されちまった。




 そしてまったく当てもねえ一人旅をする間に、俺の体がとんでもねえもんになってることに気付いた。



 その気になればいくらでも、触れたもんを殺せる。

 殺せなくても毒を送り込み、じわじわ弱らせて結局殺す。



 そんな俺だから生きるすべはもう殺し屋しかなかった。冒険者ですらねえ闇の仕事ばかりして、これまでも何百人と殺して来た。

 で、その間に俺は変装も覚えたしコネも作った。そこから仕事をあっせんしてもらって真っ当な飯を食い、最近では貴族様に抱きかかえられそうになっていた。今更裕福な暮らしと真っ当な家庭に憧れるほど図々しくねえが、それでも目の前の仕事ぐらいはやらせてもらいたい。




※※※※※※




「その相手と言うのは」

「冒険者のパーティの一人だよ。なんでもパーティの金を持ち逃げして女に全部渡しちまったとか、確か名前はノージとかって」

「なら問題はないだろう。同じパーティの三人の内一人をやれと言うのが、二人になっただけだ。もちろん報酬は払うぞ、ノシップ」


 俺が最初に閃光のナントカって連中のお使いから殺してくれと頼まれたのは、ノージとかって言う小僧。何の取り柄もねえ小ずるいだけのガキで、チーズを出す事しかできねえらしい。食うと強くなるとかって本人は吹聴してるらしいけど、そんなもんがあったら世の中誰も苦労しねえわな。まあ、俺は実際他にもそんな事ができる奴を知っているしそのチーズを喰った事もある。要するに、有象無象よ。


「で、俺が最初に殺してくれと頼まれた小僧と一緒にいる小娘をやってくれってのか」

 そして今回俺がお貴族様から殺ってくれと頼まれたのが、一人の小娘だ。

「そうだ。そのハラセキと言う女がこれ以上生きていては世界のためにならぬ」

「ずいぶんとあいまいな言葉だな」

「とにかくやってくれと言う事だ。報酬は前払いで半分払う」


 前払いで半分って事は、相当に死体を見たいって事だ。そう言えば前に前払いで半分の仕事を受けた時には、町二つひっくり返ったな。戦争がそこから始まってたくさんの人間が死んだけど、俺にはどうでもよかった。


 だから、その時のように——————————。










「おらぁさぁ、オカマゴ村で木こりやってるベエソンってもんだ。ここ最近急にあったかくなってもんで気合入れようと思ったらいきなり武器持ってるあんたらに出くわしたもんでな」

 田舎の木こりを装い、剣に脅えてみせるぐらいの事はできる。

 さっきの時だって行商人になりすまして野盗にわざと荷物をくれてやるぐらいの真似はして見せた。そして暗殺対象者の下に近づき、そっと肩を触れて殺してやった。もちろん死因をごまかすために背中を一刺ししてから、俺はその場を立ち去った。今回もまた、同じようにするだけだ。



 で、噂通りの三人組。


 一人は王道の鎧を身にまとった女騎士。

 そいつには絶対に手を出すなと二人目の依頼主から言われているが、見た所なかなかの使い手だ。と言うか明らかに一番強い。ま、隙を見せなければいいだろう。

 で、一人が二人目の依頼主に頼まれたハラセキとかって娘。

 文字通りメイドの女で、非常に無邪気な顔をしてやがる。もちろん、そんな奴だって俺は何人も殺して来た。金と仕事のためだからな。別に金に執着する気もねえけど、それでも仕事を全うするのが俺の役目だ。


 そして残り一人が、あの閃光の英傑って奴が言ってたノージって小僧だ。


 なるほど、確かに噂通り女を引き連れてやがる。


「キミハラ様が雪の女王様を止められたおかげでリンモウ村の問題は解決に向かっているのです」

「そうかそうかぁ、聖女様のおかげかもなあ」

「聖女様の?」

「オカマゴ村には聖女様の伝説っちゅーもんがあってなあ」

 聖女様の伝説ってのは確かにある。けどその聖女様とやらは十六年ほど前にあの世行っちまって、残ってるのは手をかざすだけで病が治ったとかっつー眉唾物の話ばっかり。だいたい聖女とか神父なんてのは押しつけがましいのばっかりで俺の事を聞き付けたか必死こいて体質を治してやろうとする自己満足野郎も多くてな、三人ほどそんな連中も殺ったよ。

「私じゃありませんよ!」

 とか言ってたら腹の虫の音が鳴った。まあこれもまた暗殺技術の一つだ、だっていざって時に腹の虫がなって見つかるとかただのアホだからな。もちろん今のは完全にわざとだ。


「あんれまあ!」



 

 そんで俺は、大げさに驚いてやる。


 何だ、真っ白なごく普通のチーズじゃねえか。


「これ、食べていいんだか?」


 で、そう言えばあの閃光の、ああ閃光の英傑のリーダーとやらは言ってたな。あいつは自分のチーズは力が付くって吹聴してるって、そんでそこのおっさん冒険者に自分たちの出世はノージのチーズのおかげとか世迷言を言われてムカついてるって。こんなもんに何の意味があるのか。

 思わず目の前の小僧の気配を確かめるが、こっちが大げさに驚いたのを真に受けてるのがありありとわかる。こいつに詐術をかけるような才能はねえ。もちろん素養もねえ。

「うんうん、実に、実にうめえなあ!」

 だから俺は食ってやった。これもまた相手を信用させるための一手だ。

「いやうまいうまい、お礼に、おらの山小屋で一晩休んでくれねか?旅の話も聞きてえしなあ」

「わかりました」

 そんで軽く誘ったらものの見事に罠にはまった。


 ったく、ずいぶんといい笑顔しやがって。お前らの寿命も、あと数時間だな……。

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