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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第四章 雪の女王
23/89

彼女の名前は……!?

 四体の氷の巨人。


「オオオオオオ………………」

「アノオ方、ノタメ……」

「サガレ、サガレ……!」

「イヤ、シネ……!」


 適当な事を言ったり喚いたり唸ったりする巨人たちが迫って来る。



「これは雪の女王様の」

「シ…」

「「「ジョオウサマノタメ!ジョオウサマノタメ!ジョオウサマノタメ!」」」



 あまりにも胡散臭い反応だ。ここまで来た存在に対して、危害を加えると言うより雪の女王様の悪行を言いふらそうとしている。

「やっぱりお前たち、女王様の敵だな」

「……!」

 都合が悪くなるとあからさまに黙って突っ込んで来る。へんな所で人間くせえ魔物だ。

 でもとりあえずやるしかない。



「装甲がかなり厚そうです」

「火でも点ければいいけどな」


 とは言え単純に氷は固いし、火で燃やそうにもそんな事はできない。ギビキとかなら炎で一気に焼いてたんだろうけどそうもいかないしな。


「案ずるな、剣が何でできていると思っている」

「そりゃ金属」

「そういう事だ!」


 とか相手を観察しようとしていると、いきなりミナレさんが剣で氷の巨人をぶん殴った。斬るとかじゃなく、文字通りぶん殴った。

 俺がもったいないと言う言葉を飲み込む間もなく、巨人が一体バラバラになる。


「剣など金属の棒だ。刃物であると同時に金棒でもある」


 チーズの力があるとしてもかなり力任せなお話だが、それでも確かにその通りだ。どうせ派手に戦う事もないだろうって使い古しかなまくらな剣ばかり持たされて来た身としてはうかつだったとは思うけど、実際にそれをやって剣を壊して三日間チーズ以外何も食わせてくれなかった経験がある以上どうしてもためらっちまう。これもお姫様なのかもな。

「よし!俺も!」

 そしてミナレさんに続くようにキミハラ様も剣で殴りかかり、もう一体の氷の巨人を叩き割る。


 残り二体。



 こうなったら俺も黙っていられない。

 どうにか隙を突いて転ばせるぐらい事はしたい。

 と言うかそうでもしないとここまで来た意味がない。

 自分たちの仲間の亡骸と言うか欠片を乗り越えて向かって来た巨人の片方に向けて走る。もちろんよく滑るがそれでも足に力を入れて踏ん張り、横から振りかざしてやらんと得物を構える。

 こっちに来れば的を減らせるからそれでよし!


「来た!」


 ちょうど横をかすめそうだ。

 俺には気付かないっぽい。今こそ!



「ガハッ……!」



 ……後ろから飛んで来た氷の塊が、二体の氷の巨人を打ち砕いた。


 文字通りの即死で、本当に木っ端微塵だった。




「すごいです、すごすぎます!」

「って言うかもう終わったんじゃないのか、正直うるさいぞ」

 そしてその後も氷が氷の壁にぶつかる音が続く。

 すげえ耳障りな音だ。

「これって一体……」

「とにかくその音のする方へ行くぞ」

「そうですね!」


 あくまでも冷静なミナレさんに感心しながら歩いて行く。


 どんどん音が大きくなる。

 氷同士がぶつかって割れる音が耳に入る。

 チーズで寒さはこらえられてもこれは守れない。本当に厄介だ。両耳を押さえたいけどそんな事したら歩けなくなる。

「あと一歩です!あと一歩です!」

 そこに重なって来るハラセキの声。そして全くひるむことなく進む領主様とミナレさん。負けてられないとばかりに俺も進む。





「ああ、キミハラ君!」




 そしてついに見つけた。



 右手から氷を出しまくっている、真っ白なドレスを着た女の人を。 



「女王様!」

「ああありがとう、でも魔力が止まらなくて!なんとか必死に!」

 女王様は、体をひねる事なくじっと壁に向けて氷を出している。

「そうでもしないとまた激しく吹雪が……」

「そうなの、本当ごめんなさい!私、私!」


 泣き叫ぶ女王様に対し、俺はチーズを出した。


「チーズ?チーズちょっと…!」

「大丈夫です!このキミハラを信じてください!」


 やっぱりチーズが苦手らしい女王様に対し領主様は必死に頭を下げる。まったく、たまたまとは言えチーズ嫌いが二人続くなんて。


「私が行きます!」



 とかためらってると、ハラセキが俺の手からチーズをひったくって女王様の口に押し込んだ!

 ミナレさんすら反応できねえ速度で何やってるんだ!


 っつーか雪の女王様のほっぺたに触れて!


「ちょっと!私に触れたら!」

「構いません!私はノージ様のチーズを信じてますから!」



 俺のチーズをここまで信じられると俺だって怖い。

「ああ、うまかった」

 以上の感想を言わねえからな、アックーは。俺自身、そこまで強いだなんて思ってなかったし、なんとなく調子が良くなるぐらいに思ってた。


「あのチーズは」

「頭痛に悩んでたミナレさんに食べさせたのです、他に思いつかなくて」


 まさか体を熱くするやつを食べさせる訳にいかないし、体を元気にするやつも意味があまりなさそうだ。それから甘いのもちょっとと思って、俺が出したのはそのチーズだった。

「うぐ、むぐ…!」

「さあ早く!」

 そのチーズを口の中に押し込むハラセキと来たら、ミナレさんや領主様よりすげえな本当。







 ……で。




「ああ、止まった、止まったぁ……!こんなの、五年ぶりだよぉ……!」




 あっさりと効果が出た。


 女王様の右手から飛び出し続けていた氷が止まり、心なしか外も静かになったように思えた。


「この寒さって……」

「私にも制御できなかったの。リンモウ村の皆にはどう謝ったらいいのかもうわかんないよ…………」


 でもその代わりのように女王様が泣き出した。

 延々五年間も村を寒さに包んでしまってその間どれほどの犠牲が出たのか、正直振り返りたくもないだろう。

 

「まさかと思うが、チーズが嫌いだったのは誰かに無理矢理食べさせられたとか!」

「そうなの、五年前、人間の女性がやって来てディナーだって食べさせてくれた事があるけど、思えばその時から…………」


 この異変を解決したのはチーズだけど、巻き起こしたのもチーズかよ……。


「本当、ノージだっけ。今度の事は本当感謝してるよ」

「ありがとうございます。そして、改めてごめんなさい、キミハラ……」

「女王様が責任を取る事でもないでしょう。その五年間の前は十代以上に渡りリンモウ村に恵みの氷と水を提供してくれたことを俺たちは知っています。そして笑顔を」


 こんな優しい領主様や女王様を狂わせるなんて、本当にチーズは怖いもんだよ。




「でも今日、改めてわかったよ。チーズってすっごくおいチーズって!」




 ……………………。




「フフフフ……相変わらずですね!」

「ありがとう、本当ありがとう!ああノージ君はありがじゅういちかな」

「……………………」

「……………………」




 ……なんか急に寒くなったのは、これのせいじゃないと思いたい。うん。

????「完全にどっかで……」作者「お気に入りなんで出しました……」

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