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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第三章 おじょうさま
18/89

おかしいな……(アックー視点)

ざまぁのターン!ドロー!

「ハァ!?」




 俺は他に何も言いようがなかった。




 あのファイチ村の山賊を根こそぎやったのが、あのノージだって!?




「正確にはノージと、彼と一緒にいた女騎士の二人だ。二人はナウセン団を壊滅させた手柄で村から相当な大金を受け取った。まだ正式なパーティ申請はないが、村人の犠牲をほぼゼロで守り切った事からしても、少なくともCランクは固いな!」

「Cランク……?」

「まあ元からその女騎士がDランク相当の冒険者だったからな、それでもまあ、そう言う事だ!」


 無駄足を食わされた俺らがトウミヤに戻って来たそうそう、こんな話を聞かされるとは思わなかった!


「本当の本当にノージなんだろうな」

「村から来た少女が報告してくれたんだよ!まだ若いのにえらく元気で足も速くてな、私のようななあなあに生きている人間とは全然違う!こんなに元気なのはあと数日だってさっと帰っちゃって。ファイチ村も当分安泰だろうなぁ!」

「……………………」


 信じらんねえ。

 このノジローってギルドマスターのおっさんと来たらまるで自分が手柄を立てたかのようにはしゃぎやがる。そりゃ俺達閃光の英傑が手柄を立てた時でもはしゃぐからそれ自体はいいけど、普段の冷静さをここまでかなぐり捨てるほどに浮かれ上がるのは理解できない。

「それより手紙はないですか」

「ないよ。あれば真っ先に言う」

 で、募集はまだ来てないらしい。何なんだろうな。

 どうしてこの閃光の英傑に加わりたがらねえんだろう。




「ダメだったの」

「ああ、ダメ。ちっともかからない」

「まだたった十日だろ、あわてるな」

 二人の下に戻った俺はぐったりしながら失敗の報告をするしかなかった。

「ったく、どうしてだよ。どうしてだよ。どうして」

「別にそんな厳しい事を言ってるつもりもないのに、私回復魔法イマイチ自信ないから、それと普通に食事が作れればいいのに」

 ギビキの言う通り、俺達はそんなにむちゃぶりをしたつもりもない。




※※※※※※

「閃光の英傑に入りたければここのギルマスに連絡を入れろ!

 ギャラは基本四等分で最高四割!最低でも荷物持ちができれば合格!

 さらに回復魔法とマッピングができればサイコー!さあ、今すぐこの新進気鋭のAランクパーティ、閃光の英傑の仲間になろう!」

※※※※※※




 な?これだけだろ?一体何が足りないんだか、マジでちっともわからねえ。


「坊ちゃん嬢ちゃん」

「なんだよコトシのおっさん」


 そんな所に割り込んで来る、コトシのおっさん。こないだまで「閃光の英傑」だったのに、坊ちゃん嬢ちゃんってどういう事だよ。

「今からでも俺が取りなすから、ノージに頭を下げたらどうだ」

 で、何かと思ったらノージの話だ。ったく、何なんだよもう。

「冗談やめてよ」

「これは冗談じゃないぞ。彼のチーズが閃光の英傑をAランクパーティにした、俺は食べてないけどわかる。チーズがなくなるとお前たちの力が落ちている。技もまだ大してないのに力押しだけで進められるほど冒険など甘くはない。ルワーダ、ギビキ。お前たちは聞いていないのか?」

「ファイチ村の山賊がノージのせいで全滅したって話でしょ?ったく、どうせもうひとりの騎士様のおかげなんだから」

「嬢ちゃんがそう思うならそうなんだろう、嬢ちゃんたちの中ではな」


 で、結局ノージをほめちぎって帰って行った。ああムカつく。


「あーっもういい!次のクエストを受けるぞ!」

「でもこれって」

「うるさいルワーダ!俺達はAランクパーティなんだぞ、Aランクの仕事を受けて何が悪い!」


 最悪なほどむしゃくしゃした俺は、ギルドの手配書の中でも特段高い所にある手配書をもぎ取った。

 —————ドラゴン征伐。


「その気になれば一日で行けるぞ、それからこっちとこっちも」

「地下20階のダンジョン制覇に、火山の主の魔人討伐……?」

「そうだよ、どれもAランククエストだ!Aランクパーティがやって何が悪い!」

「ちっとも悪くないけどさ」

「ルワーダだってドラゴンを倒したいみたいとか言ってたじゃん」

 ギビキの言う通りだ。これまでいろんな魔物を狩って来て地位を上げた俺たちにとって、ひとつの目標はドラゴンの討伐だった。

 そのドラゴン討伐を成し遂げるのは、むしろあのお荷物が消えた今しかないっつーのに。

「ああそれとも何、あのノージのまだ早いまだ早いって口癖が伝染でもした訳?ああ怖い怖い、本当マジ怖すぎ!」

「そういう事だ。ギルマスの所にこのドラゴン征伐の手配書持ってくからよ」

「う、うん……」


 ったく、そうだよそうなんだよ。

 あいつは慎重を通り越してヘタレで、これでもとか物資を揃えたがるし、その気になれば一日で済む任務に三日も四日もかけさせたがる。

 でも今はそいつがいない。この前はちと油断してたせいかい疲れてたけど、今なら絶対大丈夫だ。


「そういう訳でさっそくいくぞ!」

「いやさすがに一日ほど」

「ああうるさい、行くったら行くんだよ、どうせ途中に休憩できるとこあるだろうし」

「そうだよね!」

 

 かくして俺たち「閃光の英傑」は、ドラゴン征伐へと向かう事となった。




 あいつのいない、栄光の道を。

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