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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第三章 おじょうさま

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エプロンドレス

「ずいぶんと懐を温かくしてくれたものだな、まだ大変だろうに」

「いえいえ、ナウセン団がいなくなればこの村はまた富みます」

「あのチーズの力は持って数日です。あまり過信しないで下さい」

「わかりました、どうか言い聞かせておきますので!」


 ナウセン団を壊滅させた俺たちは二日間ほどファイチ村に滞在する事にした。


 今回の一件で相当な額の報酬をもらった、正直申し訳ないほどだ。


「しょせんチーズは食べ物です。そしてあくまでも一時的な道具です」

「それでこの後は」

 だがそう言われると困るのも事実だった。ミナレさんはともかく俺にはこの後の当てなどまるでなく、いっその事この村に住んでもとか思わない訳でもない。

「父様ー」

「どうしたんじゃヤヤ」

「いつもの子が来るって」

「おおそうか。きちんと出迎えねばならんな。

 そういう訳でどうか、その子の護衛と言うか出迎えを頼めませぬか?わしがあなた方の功績を認めた書を記せばその子の勤めているお屋敷にも顔が利くはずですから」


 お屋敷って事は、貴族様かよ。


「でもこの村を守ってくれなかったような貴族でしょ?」

「はあ、ですが……」

 俺が嫌味っぽく言うと、シューキチさんは平身低頭しながらも目を反らす。

「父様、そんなにもじもじしなくてもいいじゃない、あの子が不憫なだけでしょ」

「そうなんです。本当わしらがちゃんと作物を納めないと彼女自身もまともに食べさせてくれないらしくて……うちの村で働けばと言っておるのですがどうにもこうにも不調で……」

 なるほど、どれだけの責任があるかわからないのに叱責を受けるような理不尽は確かに嫌と言う事か。




「山賊は退治したし魔物もいないのではないか」

「とは言えわしは一応村長ですし、それに大事に育てた作物に万一があってはいけませぬからな」


 俺は荷車を引きながら、「いつもの場所」へと向かう。なんでも、あまり村に近すぎると村の内情を見抜かれて税を上げられる事があるからって、ったくどんだけ欲深いんだよ。ましてや今回は山賊をこの村の人たちで撃退した直後だからな、それこそ喜び勇んで上げて来るかもしれねえって、何考えてんだよまったく。


「お待たせしました……」


 で、俺と同じように荷車を引いて来た女の子。


 髪はロングヘアっつーか伸び放題、顔はそばかすだらけで手は荒れている。

 その挙句エプロンドレスも裾がほつれまくりの上に泥が付いている。俺だって正直かなり汚い茶色の服ばかり着てるけど、元がきれいだろうだけになんだか悲しい。

 っつーか隣の男は何だよ、やけにキリッとした真っ赤な服なんか着て頭に何か突き刺せそうな兜なんかかぶって、俺らはともかくシューキチ村長さんを見下ろして。


「そなたは」

「はい、ハラセキと申します。ヅケース様の命で、穀物の方を……」

「何者だ」

「俺はノージって言います、こっちは」


 で、俺が名乗った所でその男は俺に向かって持っていた槍を突き付けて来た、


「見知らぬ人間がなぜここにいるのかと聞いている」

「ナオムン様、この二人は護衛でございます。いや何かと物騒ですから」

「それならば村の者でいいだろう。なぜこのような、冒険者と言う名の根無し草を使う?どういう了見だ」

「やめてくださいナオムン、ちゃんと穀物は確認できています」


 ハラセキってメイドさんがオーケーのサインを出しているのに、ナオムンって男の目はちっともやわらがない。むしろ逆にとがり、俺らと言うか山賊を見るような目になっている。


「そうやって甘やかすから農民はつけあがる……!なぜそのように!」

「でも私たちは農民の皆様の作った物を食べているのです!」

「口答えするな!」


 ナオムンは俺らに向けていた槍を回転する事なく引いた。動かそうとしているのは先っぽではなく、柄。っておいまさか!


「盛るな」


 俺がどうしようかと動く前に、ミナレさんの足が動いていた。

 ハラセキの腹を槍の柄で殴ろうとしていたナオムンを蹴飛ばし、思いっきり蹴り飛ばした。チーズの力が乗っかっていたせいかかなり強力で、ずいぶんと派手に吹っ飛んだもんだ。


「お、おのれ……!」

「ハラセキ殿の言う事はまったくごもっともだ。農民は騎士の胃袋を守り、騎士は農民の安全を守る。そこに左右はあっても上下はない。ああいっておくがもし農民の側に不誠があれば私はそちらをとがめるからな」

「いやー、まことに手厳しい。わしらはきちんと税を納めておりますから、どうか安全の方をお守りくださいませ!」

 ナオムンは歯嚙みするが、仮にも騎士が戦いで負けてれば世話ない。こっちがドーピング状態とは言え、不意打ちであそこまでやられてどうするんだか。それこそ、ミナレさんが剣で斬る気ならばあっさり斬られてるって事だからな。シューキチさんでさえも褒め言葉通り越して嫌味になるのわかるよ。


「ナオムン様、申し訳ありません……」

「あーあ。まったく、どうして村人はぁ、村人はお前を好くのだろうな!」


 ハラセキって人もまったく責任もないのに謝って、それで逆ギレされてさ。あの野郎、ミナレさんや俺の目がなければ何をしていたやら……。

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