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赫奕たる魔光は天に漲る  作者: うーぱー
第五章 苦艱潸然
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5-9 死を繰り返した者の力

「狙いは、悪くね――」


「魔銃展開!」


 アッシュの拳銃が魔力光と共に拡大し、短機関銃に変化。5.8x18㎜『徹甲ピアッシング』魔力弾を『三連射バースト』。油断するバーンの頭部を狙い、銃魔術の複合攻撃を放つ。


「ちっ」


 バーンが身をかがめ、弾丸が頭上を掠める。


(くそっ。通常攻撃に混ぜた特殊攻撃に気付くのか! 俺を侮っているうちに仕留めたかったが!)


 低くした姿勢のままバーンが地を這うように突進してくる。ユウナの魔銃は、威力は弱いが連射性に優れる。アッシュはバーンの胴体を適当に狙って通常弾をばら撒きつつ、左へ走る。バーンの甲はシルフィアに砕かれたままなので、防御は薄いはずだ。


「遅えよ!」


 一瞬でバーンが眼前に現れる。小口径の通常弾は足止めにすらならなかった。すべてバーンの体に到達することなく、魔力場に弾かれたのだ。


(くそっ。速いし堅い! 化け物め!)


 シルフィアという規格外の存在に苦杯を舐めさせられたとはいえ、バーン・ゴズルは皇国でも屈指の魔銃使い。軍人ですらないユウナの華奢な肉体では叶うはずもない。アッシュは瞬間的に引き出せる魔力を全て弾丸に変換、サブマシンガンを薙ぎ払って弾幕を張る。通常弾に『炸裂エクスプロード』と『徹甲』を混ぜる。ユウナの体は大口径魔力弾を撃つことはできないが、銃魔術を短期間で連続使用する器用さを持っていた。


「ちっ! つまらない小細工を!」


 顔面への直撃弾を前腕甲のブレードで弾くため、バーンの速度が緩む。すかさず『閃光フラツシユ』で追撃。バーンの眼前が発光。さらに足下に『炸裂』で小さい穴を開ける。バーンが姿勢を崩しかける。アッシュは距離を取ろうとするが、再加速したバーンに一瞬で追いつかれる。


(視力を奪って足場を壊したのに、まだ止まらないのか!)


「気は済んだか? 命乞いして慰み者になるか、死ぬか、選ばせてやるよ」


 ブレードがエプロンと服を引き裂き、胸を露出させる。胸中に忍ばせてあった木彫りの天使像が宙に舞う。


「くそっ!」


 体は少女でも内面はアッシュなので、恥辱は感じない。たとえ胸を晒したからといって、行動が鈍ることはない。一瞬だけアッシュの動きが遅れたのは、天使像へと手を伸ばしたためだ。致命的な隙を作ったことを悟り、天使像を諦め、苦し紛れに『速射ラピッド』を放つが、バーンはアッシュの右側面に回り込み全弾回避。


「これで終わりだ」


 ブレードが喉元目掛けて突き出される。数瞬後にアッシュの首は胴体から離れるだろう。死ねば、バーンの意識を奪って復讐は成就される。バーンの肉体を使って家名に泥を塗るような恥をさらして、末代までの汚名を着せることもできる。だが、アッシュはそれを望まない。


「貴様に殺されてたまるか! ユシンの仇は俺が討つ!」


 ただひたすらに、アッシュは自らの手で成し遂げる復讐を渇望する。それが己の能力だと分かっていても、バーンにだけは、殺されるという短絡的な結末は許容できない。近距離での勝ち目は皆無。得意の中距離戦闘に持ち込みたいが、速度差がそれを許さない。


 無意識の内にアッシュは手の甲でバーンのブレード側面を殴りつけ、受け流す。それは、皇弟バルフェルトの護衛隊長グエン・マグナの卓絶した技術。グエンは武器を失った時でも、武装した兵士と戦えるように、徒手空拳の技も鍛えていた。バーンの表情に僅かに驚きの色が現れるが、直ぐにブレードを斬り返してくる。ブレードが発火し炎を纏った。同じ技でもう一度受け流すことは不可能だろう。


 アッシュは無我夢中に、速く、もっと遠くへ加速してゆける脚を欲した。そして、根拠もなく、それが可能だと確信し実行する。


「魔銃解除」


 ユウナの短機関銃が硬質な音を残し、魔力の粒子となる。魔力の光は消えずに、アッシュの腕と脚で再び形作る。


「魔銃装着。『闇裂く猛禽の爪(ラプター・クロウ)』」


 竜を思わせる分厚く歪な甲冑が、両腕と両脚に出現した。前腕甲からは短刀かと見紛う巨大な爪が三本伸びる。初めにアッシュを殺した魔銃使いバルヴォワの装着型魔銃だ。アッシュの脚力が数倍に跳ね上がり、体が後方へと急加速する。ブレードの切っ先が胴に触れかけたが、薄皮一枚の負傷で回避成功。土砂が巻き上がりアッシュとバーンを隔てる薄壁となる。バックステップを繰り返し一歩、二歩と距離が開く。


「貴様が何故それを!」


 バーンにとっての復讐相手はシルフィアであり、前座に過ぎない小娘相手にはいまいち乗り気ではなかったが、見覚えのある装着型魔銃を見せられ、俄に闘志が気焔をあげた。アッシュの急加速に追従するようにバーンも急加速する。砂塵を突き破ったバーンの背部甲冑が炎をあげて翼のように広がり、周辺の酸素を一瞬で燃焼し尽くす。発生した乱気流に引かれるようにして、両者の距離が再び縮まる。


「くそっ! 腕部解除。脚部集中!」


 手甲と前腕甲が消え、脚部が肥大化する。まるで酒樽に脚を突っ込んだかのように、均整の取れない全容。全ての魔力を加速度に変換するための形状を目の当たりにしたバーンの獰猛な瞳が大きく開かれた。


「楽しませてくれるじゃねえか!」


 並の装着型魔銃使いであれば、とうに引き離している。だが相手は皇国屈指の魔銃使いバーン・ゴズル。アッシュは追従してくる銃士の間合いから逃れられない。


「加速しろ『闇裂く猛禽の爪』!」


 脚部前の吸気口が空気を吸い甲冑内部で圧縮、後部の噴射口から一気に放出。アッシュは急加速、バーンとの間に距離が生まれる。さらに発生した乱気流と舞い上がった砂埃により、バーンは僅かに姿勢を崩す。アッシュもまた、脚部が暴れ狂いそうになるのを制御するのは困難であった。ユウナの脚力では、いつまでも使いつづけられるものではない。太ももの肉は骨から剥がれそうなほどに暴れ狂い、股関節は悲鳴のような音を立てて軋む。


「魔銃解除!」


 アッシュは勢いそのまま背後に滑走しつつ再び魔銃を解除。木製の靴が砕けて飛んだ。足の裏が石でズタズタに引き裂かれる。アッシュは両足の痛みを無視して地面を削りながら、転倒しないようにバランスを取る。


「魔銃展開! 弾道補正最大!」


 魔力の粒子が手元で結集し、狙撃銃が出現。跳ね上がる銃口を押さえつけながらアッシュはバーンを狙う。


「ようやくだ! 百メートル! これで終わりだ、バーン!」


 長砲身から12.7x99㎜魔力弾が放たれる。キーシュの魔銃は、敵の速度と方向から未来位置を予測し、射撃の瞬間に自動で狙いを補正する。〇・一秒後に、バーン・ゴズルの頭部に命中する弾道。狙撃銃の大口径魔力弾なら、バーンの魔力防壁すら貫くはずだ。いくら強固な甲冑に護られていても、頭部に命中すれば無事ではすまないだろう。


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