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赫奕たる魔光は天に漲る  作者: うーぱー
第三章 嚮後窺窬
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3-15 復讐計画

「私もいつか狼や馬を見てみたいわ」


 何気ない呟きにアッシュは答える。


「別に珍しいものでもない。貴族なら旅に出る金くらいあるだろ? 見に行けばいい」


「行けないのよ。私は皇国から出られないの。監視の目の届かな居所に行ったら、他の四輝将軍に殺されちゃうわ。でも……」


 これは紅茶を飲んでいるときの会話から生まれた何気ない閃き。しかし、ロアヴィエ皇国に対するアッシュの復讐という、途方もない目標が現実味を帯び始める瞬間だ。


「貴方、四輝将軍の一人に殺されてきなさい。そして、残りの二人を一緒に倒すの。そうしたら私は自由よ」


「……え?」


「これは決定よ。貴方……。今さらだけど名前は……。いいえ、聞かない方がいいわね」


「いや、構わない。俺の名前はアッシュだ。今さら過去を探られても、人質になるような家族も友人もいない。全員、殺された」


 一瞬だけアイリの顔が浮かぶが、直ぐに頭から追いだす。


「そう。それじゃ、私だけが貴方を知っているのね。昨晩なんて『目に焼きついた姿を死ぬまで忘れない』と、情熱的な告白をしてくれたし、光栄だわ」


「あれはそういう意味じゃないだろ」


「どう解釈するのかは私の自由よ。ねえ、アッシュ、貴方、ロアヴィエ皇国に故郷を焼かれたのよね? 復讐したいわよね? なら、皇国を滅ぼしましょう」


「まて、お前は皇国軍人の頂点にいる者だろ」


「部下が一人もいないのに? 私はエルフだし、ここに軟禁されているだけよ」


 アッシュは、ロアヴィエ皇国が亜人種を迫害して弾圧してきた歴史を知らないため、シルフィアが皇国に何の帰属意識も忠誠心も抱いていないことに思い及ばない。シルフィアは皇帝から俸禄を貰い仕える貴族であり、独自の所領を持つわけではないから、領民から税を取り立てて利殖を得ることもない。他の貴族と財を争って見栄を張る気も、贅沢な暮らしを望む気もないから、皇帝の下で功績をあげて栄達を図ろうとする意欲はない。つまり、城に住んでいることを除けば、北方将軍は貧民街に暮らす亜人種となんら変わらぬ立場にあるのだ。


「貴方は今日から私の友達よ。なら私の言うことを聞いてくれるわよね。そうだわ。先に私が誠意を見せるべきね。ねえ、アッシュ、どうして私の体が欲しかったの? 貴方がここに来た目的を私が叶えてあげるわ」


「皇国最強と言われる四輝将軍なら、俺の友人を殺した奴に復讐できると思った。凱汪銃士隊の連中を殺す力が欲しかった」


「分かったわ。貴方の復讐、手伝うわ。一緒に凱汪銃士隊を滅ぼしましょう」


 相変わらずシルフィアは何気ない雑談のような口調だ。


「協力してくれるなら願ったり叶ったりだが……。さすがに冗談だろ?」


「冗談は言わないわ。これは信頼を勝ち取るための、真摯な言葉よ」


「シルフィア、お前は皇国の将軍だ」


「別に忠誠を誓ったわけではないわ。将軍なんて、運悪く魔銃に選ばれたから与えられた立場よ」


「いや、しかし……。凱汪銃士隊は全員が魔銃で武装していて……。特に上位の銃士や隊長格は想像を絶する戦闘能力を持っている。俺が所属していた部隊は、数人の魔銃使いに手も足も出なかった。俺の仇は副隊長だ。別格の強さだった……」


「そうね。さすがに、昨日のような弱卒ばかりとは限らないわね」


 シルフィアは知らない。彼女が弱卒と評価した相手は副隊長で、銃士隊の頂点付近に位置する男であり、そして、アッシュの復讐対象であることを。


「分かったわ。皇国を滅ぼすのは時間がかかるかもしれないから、とりあえず今から、貴方の友人を殺したバーンとやらに復讐しに行きましょう」


「今……から?」


「副隊長相手でも、私と貴方で協力すれば、どうにかなるでしょ?」


「いや、復讐自体は俺が自分の手で成し遂げたい」


「そ。なら私の役目は邪魔者の排除をして、貴方に舞台を用意することね」


 シルフィアが立ち上がり、窓辺に立つ。


「アッシュ。貴方と友達になりたいと言った直後に隠し事をするのは気が引けるのだけど、背を向けてくれるかしら」


「構わんが。理由は聞かない方がいいか?」


「魔銃を撃つところ……というより、魔銃を見られたくないのよ」


「分かった。……魔銃は下着の中にでも隠していたのか?」


「下着の中が気になる?」


「ああ、すまん」


 アッシュが背を向けると、パーンと甲高い音が響く。空に連射する魔力弾が、離れの建物へ従者を呼ぶ合図なのだろう。程なくしてボーガがやってくる。


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