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赫奕たる魔光は天に漲る  作者: うーぱー
第二章 騎士闡明
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2-11 闇に溶ける三つの影

「リッキ、魔銃……と言っても知らないか。俺の臭いがする道具が近くにないか。お前の鼻なら分かるか?」


「んー? お兄さんの臭い? クンクン……。こっち……」


 迷うことなく進むリッキに従ってアッシュは物置に移動する。


「さすがに魔銃はないか……。だが」


 アッシュは棚から木彫りの人形を手に取る。革袋を手にして人形を入れると、ベルトに縛りつけた。その様子を、室内を物色していたフランギースは、横目に見る。


(ん、んー? 暗くてよく見えなかったが、今何を手にしたのかのお? さっさと脱走せずにわざわざ何を捜しておった?)


「ここはもういい。行くぞ」


「お、おう」


 フランギースは外套を引っ掴むとアッシュの後を追った。月と星が雲隠れした夜であったが、幸いドワーフと獣人は夜目が利く。アッシュは魔銃を失い平凡な人の身になったが、灯りのない牢にいたため目は闇に慣れていた。雲から漏れる微かな月明かりを頼りに、三人は隊舎の塀を越えた。

 そして、闇へと姿を消す三つの影を狙撃銃のスコープ越しに覗く者がいる。牢屋から離れた建物の屋根に伏臥するのは、凱汪銃士隊十二番隊のエナクレス・マレンとイナグレス・マレン。双子の展開型魔銃使いだ。二人とも短い髪と中性的な顔立ちをしているため、エナクレスの軍服が女性銃士用の物で右足を露出していなければ、見分けがつかないかもしれない。


「――魔力の波長登録。バーン副隊長、これであいつらは逃げられません」

 姉と同じく弟も三人をロックオンするが、報告するのは姉だけだ。弟は極度に人見知りが激しく、姉以外の者がいるときは滅多に口を開かない。二人の隣に寝転がって星を眺めていたバーンが立ち上がる。


「獣人のガキに、ドワーフの盗人。妙な組み合わせだが、キーシュの裏切りは確定したな」


「キーシュは、狙撃兵としては私の師に当たります。裏切っているとは、あまり信じたくはありませんが……」


 優秀ではあるが騎士学校気分の抜けない配下の言葉に、バーンの口元がにたりと歪む。平凡な者が同じことを口にしていれば、血を流させて教育していただろう。だが、双子は有益な固有能力を持つので、時間をかけて教育すれば良い。


「魔力が巧妙に『隠蔽ハイド』されていたが、バルヴォワは間違いなく頭に『誘導トレーサー』を付けられていた。隊長格や狙撃兵連中にしか見えない程度のな」


「バーン様、それはいったい、どういうことでしょう」


「キーシュは最初からバルヴォワを暗殺するつもりだった。もしくは、バルヴォワを脅して俺を襲わせた。あいつはグラトの子飼いだ。つまり、だ」


「グラト副隊長がバーン様に危害を加えようとした可能性があると」


「そういうことだ。それを確かめる」


「……了解しました」


 エナクレスは師を信じて困惑する表情を見せる。だが、それは演技で、内心は違う。まだ実戦の傷がつかない綺麗な外見とは裏腹に内面は黒く、意外としたたかである。


(キーシュは魔銃能力による狙撃技術が高いだけ。斥候としての能力なら、既に私は彼を超えているはず。気づかれることなく追跡すれば、それを証明できる!)


 瞳の奥に映る功名心をバーンは見抜いている。だから彼はエナクレスを直属の部下として利用する。時間をかけて育てれば優秀な手駒になるはずだ。バーンは思考を配下から逃走者へ戻し、バルヴォワが裏切った直後のキーシュの様子を思い返す。


(あのときはバルヴォワを殺った直後だから気が立ってるのかと思ったが、違うな。アレは俺へ向けた殺気を孕んでいた……。なら何故、俺を撃たなかった。何故バルヴォワを撃った?)


 狙撃直後に中身が入れ替わっていたなどと、想像出来るはずもない。


「追うぞ」


「はい」


 隊舎の上から三つの影が消える。雲が切れて姿を現した月だけが、その様子を見ていた。半月が大地に光のヴェールをかけ、皇都ロアヴィクラートを幻想的な青色に染める。それは、魔力の放つ光にも似た色であった。


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