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あ、ちなみに魔力を持っている人は10人に一人くらいとそう珍しくはない。
その中で属性をもって魔力から魔法を生み出すことができる人が10人に一人。だから、魔法が使える人は100人に一人くらい。
だいたいは日常生活でちょこっと役に立つくらいの魔法。戦闘や多くの人の役に立つような大きな魔法を使えるのはさらに10人に一人。つまり1000人に一人ね。
で、属性の種類は火、水、土、風の4つが多くて、光が少ない。闇はもっと少ない。歴史上数名だと言われている。……けれど本当のところはよくわからないんだよね。闇魔法は忌避されてるから、使えることを隠しているだけで本当は光魔法の使い手程度にはいるんじゃないかともいわれている。いつか闇魔法使いにも会ってみたいなぁ。
「ほら、風呂、入れ。あ、石鹸とタオルと着替えが欲しい」
ハーグがお金を取り出して女将さんに渡した。
「石鹸とタオルはあるけど、着替え?」
私の姿を上から下まで眺める。
「うん、この時間クリーニング屋もやってないし服屋も閉まってるからね、中古の服でサイズが合わなくても構わないなら準備できるけど」
「とりあえず着られればいい」
え、あの……っ。
「ハ、ハーツさん、わ、私お金を持ってないので」
石鹸がなくても大丈夫だし、服も自分で洗うし、乾くまでは少し寒いけれど……。
「ははっ、子供が遠慮するもんじゃないよ。お礼を言ってやれば十分だよ」
おかみさんが笑うと、ハーグがしゅんっと頭を下げた。
「お礼を言われる立場じゃない……俺が謝る立場なんだ」
ハーグの言葉に、おかみさんが目を吊り上げた。
「ハーグ、あんた子供に何したんだい?謝らなきゃいけないようなこと」
「……た」
「は?」
「気持ちが悪くなって、吐いたら、吐いたものがこの子……ミオがいて、頭からその……ひっかぶせて……」
おかみさんがハーグをにらみつけた。
それから、棚の箱から石鹸の小さなかけらを2つ取り出した。
「一つはサービスだよ。しっかり洗って綺麗になるといいよ」
おかみさんがにこりと笑う。
「え?あの、でも……」
ゴミ箱にいた私も悪いんですっ。
「さぁ、冷めないうちに風呂に入りな。着替えは準備しておくからね。ほら、ハーグ、お前もくさいからさっさと水浴びしてきなっ!」
おかみさんがハーグと脱衣所を出て行った。
……えーっと。風呂……。
王宮神殿に引き取られたときに1度だけ入ったことがある。
服を脱いで、石鹸を手に風呂場へ足を踏み入れる。
湯船に手を入れると、ほんわり暖かくて、濡れて冷えたからだがほぐされる。
お湯で石鹸を泡立たせて髪や体をしっかり2度洗ってから湯船につかる。
「はぁー」
思わず声が出る。
なんて気持ちがいいんだろう!
■
ゆっくり風呂に使って出る。
……お湯はどうしたらいいんだろう?
「えーっと、とりあえず【浄化】【回復】」
うん、お風呂場ピカピカですし、お湯も清潔になりました。
脱衣所にはいつの間にかタオルと着替えがおかれてる。
巫女見習の服は回収されているため、用意された服を着る。
淡いピンクに染められた足首までのワンピースだ。
……ウエストの位置がお尻のあたりになってるし、袖が指の先まであるので、本当はひざ下くらいまでのワンピースかもしれない。
袖を折り曲げて、下がっているウエストを腰まで引き上げついていたリボンでぎゅっとしめる。
「【回復】」
魔法を施すと、淡いピンクがほんのりと鮮やかな色を取り戻す。裾に施されていた小さな黄色い刺繍もはっきりとした色を取り戻した。
「色のついた服だ……」
巫女見習の服はほぼ白。純白だとかなんだとか白が聖なる色とされていたためだけれど、何もない虚無感みたいなのを感じてあまり好きじゃなかった。
えへへ、嬉しい。
あ、でも、良いのかな?本当にもらってしまって……。
借りるだけで、見習い服が乾いたら返そう。




