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でも、お店の中に入らない。
「うわ、くっせぇのが来た」
店にいたそばかすの浮いた男の子が顔をしかめる。
「近寄るなよっ!」
男の子がしっしと手で追い立てる。
「パンを一つ売ってくれないか?買ったらすぐに立ち去るから」
ラズが銅貨を持った手を差し出した。
「お前みたいなやつに売るパンはないっ!パンに臭いがうつるだろ!早くあっちに行けって!」
男の子が怒って店から棒をひっつかんで出てきた。
「商売の邪魔になるんだよっ!」
棒を振り上げて、そのままラズ君に向かって振り下ろす。
ラズ君がぱっとその棒をよけた。
ひどい。確かに……臭いよ?
ホルン爺さんのお店で臭いがついちゃったんだもん。
でも、お店の中に入ったわけじゃないし、パンを売ってくれと言っただけなのに。外に立っただけで、棒でたたこうとするなんて!
ラズ君の背中から顔を出して、男の子をにらみつける。
「臭くなければ店の中に入ってもいいのね?」
私の言葉に、男の子が笑った。
「あはは、水浴びしたくらいじゃその匂いが取れるもんか!」
「くさくなければ入ってもいいのね?」
もう一度男の子に尋ねる。
「ああ、もちろんだ。だが、臭い付けて近づいてきたら、営業妨害で警邏に突き出してやる!そうなったらむち打ちだぞ!」
ぺっと唾を吐いて男の子は店に戻っていった。
「ラズ、行こう!」
ラズの手を引っ張って、ホルン爺さんの元に戻る。
「ホルン爺さん、お願いがあります!」
ずんずんと奥へと進んでいき大きな声で爺さんを呼ぶ。
「ん?なんじゃい?」
「ルン盤を貸してください!」
ホルン爺さんが首をかしげる。
「私の頭の臭い、ルン盤でとれたでしょう?だから、体中の臭いをとれないかと思って!」
ホルン人さんがぽんっと手を打った。
「なるほど、風呂替わりになるか実験するんじゃな。いいじゃろう」
ホルン人さんがルン盤をもってきてくれた。
「ラズ、そこに寝転んで!」
ルン盤をラズの体の上に置く。
「うひゃっ」
ラズがすぐに悲鳴を上げる。
「くすぐったい、ひゃはは、や、ひゃはは」
そうだった。頭の上に置かれたときにちょっとくすぐったかったんだ。
「ラズ、ちょっと我慢して」
人の体はずいぶん凸凹しているから、ルン盤はうまく移動できないようだ。手で支えて勧めていく。頭の上からつま先まで。
それから、今度はうつぶせになってもらって同じようにルン盤をラズの体の上を隅々まで移動させる。
移動させながら、こっそり浄化と回復魔法も使う。
「ひゃー、くすぐったい、もう勘弁してくれ、ひゃひゃひゃ、ひー、ひー、無理、もう無理」
「はい、おしまい」
ずっと様子を見ていたホルン爺さんが満足げに頷いている。
「ほー、驚いた。こりゃ本当に綺麗になったもんじゃ。風呂替わりに使えそうじゃなぁ。どうだ、ラズ?」
「こんなくすぐったいの我慢しなくちゃいけないなら、風呂なんか一生入らねぇよっ!」
ラズの言葉にホルン爺さんが笑った。
ご覧いただきありがとうございます。
注意*ルン盤は異世界不思議道具ですので、名前の似た現代のアレで、マネしないでくださいね。




