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復活

突発的な不幸というものは、予測することもできず、ある日急に降りかかってくる。


前世の記憶は今でもある程度維持できていると思うが、実は俺には死んだときの記憶というものが無い。


記憶の最後の方、俺は三十代の前半だったと思うが、体は健康だったはずだ。


それが急に死んだというのであれば、きっとなにか、突発的な不幸が降りかかったのだろう。


王城の一室に泊めてもらった翌日、アンティと俺は、ガインとバーナムの付き添いのもと、再び謁見の間に参上していた。


一通りの儀礼的な挨拶のあと、俺の料理についてのべた褒めタイムが始まらんというタイミングで、謁見の間の両開きの大扉が、無造作に開かれた。


何かのサプライズだろうか。


そうでは無い、ということは、開かれた扉から血まみれの衛兵が5人分、投げ込まれたことで、誰の目から見ても明らかだった。

おそらく5人とも、すでに息を引き取っているだろう。


続いて、その扉から入ってきたのは、3人の男だった。


いや、3体と表現した方が正確かも知れない。

それらは、明らかに人ではなかったからだ。


両サイドの2体は、いずれも巨体だった。

身長で言うのなら2メートルは超えているだろう。


3体とも、フード付きのマントに包まれているのと、俺のところまでまだ距離があるので、詳細はわからないが、その足の運び方から、凄まじく鍛えられた肉体を持っていることがわかる。


マントの隙間から見える肌の色は、向かって左側が青黒、右側が赤黒、そして真ん中のやつは灰色だった。


真ん中のやつは、身長こそ両サイドの2体より低いものの、この空間で最も危険な存在であることが、その身から放たれる吐き気を催すような殺気からわかる。


あまりにも想定外な出来事が起こった際、大抵の人はフリーズしてしまうものかと思うが、この場の人々の動きは、流石だった。


まず、扉付近の衛兵たちが、迅速に槍で突きかかる。

それは、とっさの出来事に腰が引けた突きではなく、海での修行のときに見せてもらった、ガインの鋭い動きと遜色のないものだった。


しかし次の瞬間、両サイドの2体が、虫でも払いのけるかのような腕の動きで槍を、そして衛兵自体を叩き、二十人近くいた扉付近の衛兵は、次々と壁や柱に叩きつけられて絶命した。


その間に、謁見の間の各所に配置されていた衛兵たちも集まってきて、今度はすぐには突きかからず、一定の距離を保ちながら3体を包囲するように取り囲んだ。


また、王様を含む国の要人は、それぞれの近衛兵に守られながら、前方の通路より退避する。


「おや、せっかく招かれて来たのに、なかなか連れない対応だね。」


そのとき、真ん中のやつが声を発した。


人の声に似ていたが、背筋の凍るような、まるで人を殺しすぎて人の心を失ってしまった狂人者がしゃべるような声だった。


「これを色んな街にバラ撒いていたんだろう?」


そいつは、マントの中に右手を差し込むと、一枚の紙を取り出し、皆に見えるようにそれを晒した。


何か書いてあるようだが、A4くらいの紙に書いてある文字だ。かなり近くまで行かないと普通は読めないだろう。


俺は、生命力をコントロールして、一時的に視力を向上させてその紙の文字を読んだ。


・魔王消えろ

・魔王死ね

・魔王はこの世界から消えろ

・魔王は差別主義者

・魔王政治を許さない

・私は魔王に◯◯されました

・魔王は✕✕✕✕


その他、魔王に対する罵詈雑言が列記されていた。

そして紙の最下部には、


by第五王女 ラウズケイト・ジェフォンノース


と、記されていた。


……。つまり、俺と第五王女のせいでこうなったのか?


気絶した第五王女のおでこに「魔王参上!」と書いてタルに詰めて出荷して、地方都市で目覚めた第五王女が魔王の仕業と認識し、魔王に怒って悪口のビラを色んな場所でバラ撒いたと。そしてそのビラが一体の魔王の目に触れ、今回の来訪となったということか。


最悪だ。


そして、そういうことであれば、この真ん中のやつが魔王なのだろう。

両サイドの2体は、魔王の従者か。


どうすんだよ、これ。


責任の大部分は俺にありそうなので、逃げるわけにはいかなくなってしまった。


「ホッホッホッ!飛んで火に入る夏の虫とは、正にこのことですわ!」


そのとき、謁見の間の前方から、事態をややこしくしそうな声が響いてきた。

第五王女の御成である。


「貴方が魔王かしら。頭が高いですわよ。まずはそこに跪きなさ、げぇっ」


次の瞬間、魔王は右手を突き出し、その手のひらから放たれた紫色の熱線が、第五王女の胸を貫いた。


「ふむ、やはりただの愚か者だったか。何か策があるのかと楽しみにして来てみたが、徒労だったようだな。」


やばい、まったく反応できなかったぞ。

予備動作が無い上に動きが速すぎる。


事態はややこしくはならなかったが、そんなことを考えている場合では無い。


「貴様ぁー!!!よくも王女殿下を!!」


アンティが、3体に向けて聖なる雷の魔法を使用しようとしたが、ガインから首筋に一撃を加えられて気絶し、ガインに担ぎ上げられて、バーナムと共に前方の通路から退避した。


今はまだ絶対に勝てないと判断し、勇者を逃がす。ガインの動きに迷いは無かった。


去り際、バーナムは「パイクも早く!」と、声をかけてくれたが、そういうわけにもいかないので、申し訳ないが聞こえないふりをした。


それにしてもアンティ、「お願い」無しで魔法を使おうとしていたな。もしやこの状況でレベル2に上がったということか。


「いかがいたしますか?」


「雷の勇者の子供か。まだ取るに足らんな。成長を楽しみにしていよう。」


よくわからんが、アンティは見逃されると。


「人間の総数はあまり減らせんからな。この場に残った者の命で我慢せよ。」

「はっ」

「はっ」


魔王の言葉に、サイドの2体が応じる。

よくわからんが、この場の人間は皆殺しっぽい。


はぁ、怖いけどやれるだけやるしかないか。

俺のせいで、すでにたくさんの人が死んでいる。


せめて一人でも多く、この場に残っている人を逃がそう。

俺は、さすがに殺されるだろうな。


死んだらまたあの空間で修行できるのだろうか。


「モック、魔力貸してくれるかな。」


【……。】


ん?貸してくれないのか。


モックを見ると、完全に表情を無くし、ただ呆然としているようだった。


魔王相手だと、精霊的にも勝手が違うのかも知れない。

まあそれなら仕方がないか。


俺は3体に向けて足を進めた。


「あなたが魔王ですか?」


「そうだ。なんだ、お前子供のくせに怯えていないな。」


「いえ、怖いですが。」


「ふん、おかしな子供だな。おかしなやつは見逃してやる。とっとと消えろ。」


「いえ、それよりお願いがあるのですが。」


「申してみよ。」


「魔王さまたちは戦うのがお好きそうなので、僕がお連れのどちらかと戦って、もし満足されたら、この場の人たちを見逃してもらえませんか。」


「馬鹿なことを言うな!!」

「パイク君、早く逃げるんだ!」


近くの兵士が慌てて俺に走り寄ってそう言ってくれる。


兵士に抱きかかえられそうになったところを、ひょいひょいと避ける。


「ふはは、面白い。良いだろう。ゴウキ、相手をしてやれ。」

「はっ」


赤黒い肌のやつがゴウキという名前か。


俺はやさしい兵士たちを振り切ると、ゴウキに向かって突っ込んだ。


この7年間で、生命力の総量は、コントロール技術は、どの程度鍛えられただろうか。


転生前の修行空間で、一度徹底的に生命力を鍛えた感覚は、転生後も身体が覚えていたので、鍛える効率は良かったはずだ。


また、もう一つ感覚を覚えていたことがある。


それは、生き物がどのように筋肉を動かして、どのように動くのか、何となくわかる。という感覚だ。


膨大な模擬戦の経験が、その感覚を培ってくれたものと思っている。


この世界のモンスター相手でも、そう簡単には負けない自信があった。


突っ込んでくる俺に対し、ゴウキは微動だにしなかった。

子供だと侮って、まずは好きに攻撃させるつもりだろうか。


それならそれで、遠慮なく最大の攻撃をさせてもらおう。


狙うのは胴体中央だ。急に回避行動をとられても、攻撃を当てやすい。


ゴウキの少し手前で、さらに動きを加速させ、胴体中央に右手の貫き手を打ち込む。


インパクトの瞬間、指先に生命力を集中・圧縮させ、叩き込もうと、した。


「むっ!」


その瞬間、ゴウキは身をひねり、回避行動をとった。


俺の貫き手はゴウキのマントを切り裂きながら、右脇腹をギャリギャリと削った。


硬ってぇ!鋼鉄かよ。


「ガァッ!!」


次の瞬間、凄まじい衝撃と激痛、身体がバラバラになるような加速度に襲われた。


一瞬、何が起こったのかわからなかったが、どうやらカウンターをくらって吹っ飛んだらしい。


勝てるとは思っていなかったが、従者でもここまで強いのか。まるで歯が立たない。


謁見の間の前方まで飛ばされ、王の玉座に至る階段に激突し、俺は無様に転がった。


奇しくも、俺が転がった場所には第五王女の亡骸が横たわっていた。


そして、俺の胸は大きく陥没していた……。

肋骨は粉砕され、臓器があらかた潰れている。


ああ、死ぬな、これは。


ここまでの体の損壊は、今の俺の生命力による治癒では治せない。


今はかろうじて生命維持に努めているが、もってあと数分だろう。


はぁ、あっけないものだ。


無意識に第五王女に手を伸ばす。

間違いなく生命活動は停止していた。


権力を利用して、色んな人を処刑したり拷問したりと、とんでもないやつだったが、やはり外見はとても美しい人だ。


【グッ!、グウゥゥゥゥゥ……!!】


そのとき、俺のそばで、モックにも異常事態が起こっていることに気がついた。


可愛らしかった顔は醜悪に歪み、目は不気味な真っ赤な色に染まっていた。さらに、全身からはドス黒い魔力が立ち上っている。


しまった、このリスクを全然考えていなかった。

これが精霊の魔族化というやつか。


このままでは被害が拡大してしまうし、何よりモックに申し訳ない……。


と思いつつも、魔族化するということは、それだけモックから大切に思われていた、ということと考えて良いのだろう。


それは冥途の土産としては、正直嬉しいことだった。


短い付き合いだったけど、強い絆がそこにはあった。そう考えさせてもらおう。


そしてモックは、体を黒い光の粒に変えながら、第五王女の遺体の中に入っていった。


そうか、精霊が魔族になるときの「受肉」というのは、手近な死体に入ることなのか。


「!」


ここで俺の頭に、あるアイデアが閃いた。


この閃きが正しければ、もしかしたら……。


しかし、それを実行するためには、ここから一つのミスもすることはできない。



ーーーーーーーーーー



俺は、生命維持に使っていた生命力を最小限に留め、第五王女の遺体に触れながら、その変化の様子を精密に観察し、感じ取った。


モックが、その存在自体を変質させ、第五王女の体内に入り込み、別の理を持つ物体へと変換しながら同化していく。


……。


そうか、わかった気がする。

これならコピーできるかも知れない。


だが、もう時間が無い。

間に合うか。


俺は強く、転生前の肉体を具現化するよう念じた。


すると、具現化キーが脳裏に浮かんだ。


具現化キーは、九枚の写真だった。


《横断歩道の画像をすべて選択してください。》


そういうのいいから!


急いで脳内で選択する。右上、真ん中、左中央……。


《認証できませんでした。》


ムキー!


も、もう一度だ……。


……。


《認証しました。格納物を具現化します。》


二度目の挑戦(?)で、見事認証を得た。

このミスですべてが水の泡になったら死んでも死にきれんぞ。


認証と同時に、俺の体内に異空間が生じるのがわかった。


その異空間から、出てこようとするものがある。すごい密度の光の粒子だ。


この現象についても、精密に観察して感じ取る。


光の粒子は、俺の目の前に集まると、人の形の像を結び、気づくとそこには転生前の俺の身体が横たわっていた。


うおぉ。なんか感動する。この身体にどれだけの鍛錬を重ねたことか。


しかし、感慨にふけっている時間はない。


俺は転生前の身体に手を当てると、すぐさま魔族化の感覚のコピーを実行した。


まず、俺の中の魂と呼べるような、俺を俺自身たらしめる、俺の本質を、すべて生命力に変換する。


体の感覚はすべて消え、この上なく不安定な状態となる。


視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、時間の感覚、上下の感覚、すべて消えた。


ただ、転生前の身体のことを想い、魔族化のコピーを実行した。


……。


真っ暗だ。


何も見えない。


何も感じない。


いや、あっちの方に、遥か遠くの方に、何か、あたたかい光が……。


……。


そして俺は再び目を醒ます。


隣には、パイクの抜け殻が横たわっていた。


俺は先程の、この身体を具現化したときの感覚を、逆再生するように再現し、体の中に異空間を生じさせ、パイクの抜け殻を光の粒子に変えて収納した。


よし、成功したかな。


身体の状態を生命力を使って確認する。


違和感は無い。


そして、とても懐かしい感覚だ。



筋繊維は金属のような光沢を放ち、重く、理想的な弾性・剛性・靱性を兼ね揃えている。


体重は5トンを超え、走れば最高時速700キロを突破する。


そして身体の中には、高密度の生命力が渦巻いていた。


これで何とかならなければ、素直に諦めるしかない。


ちなみに、この身体には転生直前に身につけていた、Tシャツと短パンが装着されていた。


てっきり、この世界に持ってくることができるのは身体だけだと思っていたので、全裸を覚悟していたが、サービスだろうか。


全裸でないのはありがたいが、ファンタジー世界でメタリックボディにTシャツと短パンって、なかなかシュールだな……。


まあ贅沢は言うまい。さて。


魔王たちの方に足を進めようとしたとき、声がかかった。


「おい、お前は何だ?」


ん?


おお、魔族化したモックか。


自分のことだけに集中していたため、魔族化が完了していたことに気づいていなかった。


フォルムや髪の色は第五王女のままだが、見えている肌は焦げ茶色で、タトゥのような模様が浮き出ている。瞳は金色。なんかギャルみたいだ。


「パイクの亡骸をどこにやった?」


口調からは知性を感じる。

存在の有り様を変えたばかりなのだから、精神状態とか不安定でもおかしくなさそうだが、意外と安定しているのか。


「オレガパイクダヨ。」


「ウソつけ!さっきパイクの亡骸を体内に取り込んでいただろうが!」


どうやら、モックの記憶は持ったままなのだろうか。


可能性は高そうだが、「パイクの味方のまま」とは限らない。


さらに、この身体の俺が、パイクの抜け殻を光の粒子に変えて格納したシーンを見られていたのであれば、説明するのはなかなか骨が折れそうだ。


「パイクハシンデイナイ。」


とりあえず軌道修正する。


「パイクニマタアイタケレバ、スコシオトナシクシテイルコトダ。」


一旦、元モックがパイクの味方のままであると期待して、思わせぶりなセリフを残す。

残念ながら声帯は適正化していないままなのでカタコトだが。


俺は元モックの返事を待たず、魔王たちの方に足を進めた。


元モックが魔族丸出しで、暴れて被害が出る可能性も十分あるが、今は魔王の方を優先しよう。


「ふん、魔王に挑むのか。馬鹿なヤツだな。まあいい、魔王に殺されたあとに、体の中を調べてやる。」


よし、とりあえず元モックの方は時間を稼げそうだ。


謁見の間にいた衛兵たちは、さらに数を減らしており、残りは二十人弱か。ずいぶん殺してくれたな。


「魔族が新たに2体生まれたか。ベインシュルト様にご挨拶するが良い。」


また一人の衛兵を、左腕の一振りで弾き飛ばしながら、ゴウキが近づいてきた俺に向かってそう言った。


俺のことを新たに誕生した魔族だと思ったのか。

そして、魔王の名前はベインシュルトと言うのか。


「オレハマゾクデハナイ。」


「なんだと?」


「ソレヨリオマエラ、ヒトヲコロシスギダ。」


とりあえず試運転も兼ねて、思いっきりゴウキをぶん殴ることにする。


狙うのは、先程と同じく胴体部分。


急接近し、ゴウキのふところに入ると、右ストレートで思いっきりぶん殴る。


ゴウキはかろうじて反応し、両腕をクロスさせて防御したが、構わずその上からぶん殴った。


ゴウキの両腕は破壊され、そのまま体ごと後方にふっ飛び、大扉の横の壁を破壊して突き抜け、その奥の通路の柱に激突した。

ゴウキはただの肉塊となり、絶命していた。


てっきりモンスターのように、死んだら消滅して魔石を残すのかと思っていたが、そうはならないようだった。

魔族とモンスターは、やはり全然別物なのか。


よし、この身体なら通用しそうだな。


次の瞬間、俺の体は氷漬けにされていた。

巨大な氷の塊の中に一瞬で閉じ込められたらしい。おそらく氷の攻撃魔法をくらったのだろう。


とりあえず全身に力を入れて身をよじる。

すると、氷塊に亀裂が入り、バラバラに弾け飛んだ。

意外とあっけ無いな。


俺は剥がれ落ちた、尖った氷の塊を掴むと、肌の青黒い従者に向かって投げつけた。


肌の青黒い従者は、ぎょっとして目を見開くが、回避行動は取れず、マントの上から胸のあたりを、自ら作り出した氷で貫かれることになった。


「ぐあぁっ!!」


間髪入れず、俺は青黒い肌の従者に接近すると、左上段蹴りで頭部を攻撃した。


蹴りは従者の頭にヒットすると、そのまま容易く頭部を刈り取り、吹っ飛んだ頭部は壁に衝突して、トマトのように潰れた。


よし。大丈夫だな。


それにしても、二人の従者を倒す動きだけで、謁見の間の床をかなり破壊してしまった。

床は頑丈な石材で作られているようだが、今の俺の攻撃動作に伴う足の踏み込みにはまったく耐えられず、割れて無残に陥没していた。


謁見の間があるのが城の一階部分でまだ良かった。

もし上階だったなら、床を踏み抜いていたことだろう。


転生前の空間の白い地面は、壊れたり陥没したりするようなことは無かったからな。

戦うときの足元については、これからの課題だろう。


「貴様は何者だ?」


いよいよボスと対決だ。

魔王は従者を2体ともあっさり殺されたばかりだが、何事も無かったかのような落ち着いた声で問いかけてきた。


「ユウシャデハナイコトハ、タシカダ。」


「ふん、ふざけたやつだ。魔族では無いようだが、人間には見えんな。」


「オレハニンゲンノツモリダケドネ。」


「まあいい、面白そうな奴ではあるな。少し相手をしてやる。」


そう言うと、魔王は着ていたマントを脱いで、床に無造作にほうった。


マントを脱いだ影響か、さらに濃密な殺気があたりに撒き散らされた。

何もしていないのに、恐怖の魔法を放っているのと同等の強迫感がある。


髪はくすんだ紫で、禍々しい髪飾りをしている。肌は無機質な灰色、瞳は血のような赤。


人間にしてみたら、普通なら四十代くらいに見えるだろうが、そのオーラ、その佇まいから、途方もなく年経た存在であることが感じさせられる。


体には、漆黒の鎧を身に着けていた。その鎧にも、強力なエネルギーが籠もっていることが感じられる。


「ニ、ゲ、ロ!!」


残った二十人弱の衛兵たちは、魔王の瘴気にあてられて、その場にへたり込み、動けなくなってしまっていた。


俺は恐怖の魔法のコピーに、「逃げなければ死ぬより恐ろしいことになる」というイメージを追加して、周囲に放った。


衛兵たちはそれに触れると、一目散に逃げ出していった。

これでいいだろう。


「ふん、妙な力の使い方をするな。ますます興味深い。」


よし、緊張してきたぞ。

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