ジュリエッタのやり直し その四
お読みいただいてありがとうございます。この話も5000字を超えています。
作者の私が、男の為、女性の言葉使いや言い回しが微妙なのはお許しを。そして、ジュリエッタのあざとさがより顕著になりますが、嫌わないでやってください。
両親の寝室を出ると、母の執務室に向う。
執務室に到着をすると、ヴェルは何か作っていた。ヴェルは私に書類の仕訳けを頼んできたのでそれを引き受け書類を分ける。
ヴェルの指示によれば、まずは計算から始めるようだ。書類の山を見るとげっそりするが、ヴェルからこの仕事の手伝いのご褒美に、どこか美味しいものを食べに行こうと誘われた。
嬉しさでテンションが上がる。別に食べ物に釣られてるんじゃないよ。
『二人っきりが嬉しいのよね♪』ヴェルは本当に私の心を掴むのが上手い。
それから、ヴェルの作業も終わって私も仕訳の作業がほぼ終わった。仕訳と言ってもほぼ税金の計算7,8割を占めていたので助かった。
計算を始めると、ヴェルが計算をして私が答えを書いていたのだが、ヴェルの計算が速すぎて、全くといいほどついてはいけなかった。なので話し合い、文官であり家庭教師でもあるレイニーに手伝って貰う事にした。
レイニーを連れて来ると、ヴェルのあまりにもの幼さに驚いていたが、1枚書類の計算をさせると瞬間的に計算をして、答えが正確である事に驚いて実力を認めた。
それからはまるで何かの競技のようだった。2対1でも危ういっていうか負けていた。ちょい悔しいかも…集中力が切れ始めていたところで、ヴェルの提案で休憩を取る事にした。
見たところ既に2/3は終っている。流石のレイニーもこれには驚いていた。ヴェルが甘い物が食べたいと言い出したので、レイニーと一緒にお茶菓子と飲み物を取りに行く。
「それにしてもヴェル殿とは何者ですか?あり得ないです。あの計算の速さと正確さは。私の10倍、あるいはもっと速いですね」
「ヴェルは私の週一の家庭教師よ。言わなかったっけ?」
「えっ!確かに聞いてはいましたが、お嬢様の家庭教師がまさか、少年だったとは知らなかったですよ。驚きました。ですがお嬢様の成績が急に伸びたのは事実。ヴェル殿の教養の高さは異常です。文官として自信を無くします。本当に…」
家庭教師のレイニーには申し訳ない。だが、彼女の能力は全般に高く幅広いので、ヴェルの能力とはまた違った方向で勉強になっていた。気を落とさずにがんばって欲しい。
それから休憩後、残りの作業を全て終えて時間を見てみると、実作業では1時間半で書類の計算を全てやった事になる。「奇跡だ」レイニーは疲れた顔してそう呟いた。
それから私は飲み物を、レイニーは母を呼んでくると、書類の計算が全て終ったのを確認して貰う。
すると母は目を丸くして驚く。それはそうであろう。話しを聞く限りでは、母の1か月分の仕事を私達は、たったの2時間で終らせたのだ。
それから、ヴェルはスタンプという、インクを押し付けてサインに使う道具を母に渡すと、母はそのスタンプの有用性を理解したのか、もの凄く喜んでいた。
昼食を食べると、ヴェルが絵画を見たいというので案内をすると、少し疲れた顔をしていたので、夕食まで部屋で休憩を取る事にした。
ヴェルが本を見たいと言う事で母に書庫の鍵を貰いに行って、ヴェルの与えられた部屋に一緒に行こうとすると、母に人目があるからと駄目だと止められた。これだから自分の屋敷は嫌だ。
とは言えここは伯爵家、理由も分からなくもないのでヴェルに書庫に向う途中で「夜はこっそり行くからね」と耳打ちをすると、ヴェルは苦笑いをしていた。迷惑なんだろうか?
それから、自室に入り明日のデートの事を考えていると、先ほどの疲れなのか、突然と眠気が襲ってくる。こんな時にでもヴェルが隣にいてくれたらなっと思いながらマクラを抱きしめると、数分後には意識を手放した。
侍女に起こされて食事の間に行くと、いつもの場所に私の椅子が用意されていたので、椅子をヴェルの隣に移動する。
「お嬢様。客席に椅子を移動されては困ります」
「いいのよ。ジュリエッタはヴェル君の隣でね」
母がタイミングよく食事の間にやってきて、侍女にそう言うと侍女は一礼をして職務に戻って行った。なんだか申し訳ないけど、流石は私のお母様。気持ちを理解してくれていて嬉しいよ。
私はヴェルが来るまでウェールズを膝に乗せてあやしていると、メイドに連れられてヴェルが入って来たので、ウェールズをお母様に預けてヴェルの隣に腰掛けた。
ヴェルは隣に腰掛けた事に驚いていたが、私がヴェルのお父様の誕生の時、誘ってくれたからそのお礼だと言うと、何だか感動をしているみたいだ。ヴェルの感動のツボは良く分からないが、隣に腰掛けて正解だったよ。
それから食事が始まると、ヴェルは緊張した面持ちで食事を口に運んでいた。
教科書どおり以上のテーブルマナーに少し驚いたが、緊張しているのにそこまで気を遣って、果たしてそれで味が分かるのかが疑問だった。
なので、会話でもして緊張を解そうと話をしていると、母にも会話が聞かれていたようで、テーブルマナーを気にせずに食べても良いと言われると、ヴェルは少しほっとした表情になってそれからは、気楽に食事を楽しんだようだ。
食事が終り、デザートとお茶の時間になると自然と姫様の話になった。なぜか私に話を振られて恥ずかしい思いをしたけど、正直に答えておいた。ヴェルも照れ笑いをしていたので満更ではなさそうだ。良かったよ。
お茶終ったので立ち上がろうとすると。母が手を打ち笑顔でこちらに振り向いた。
「あっ!そうだ。お給金を渡さなきゃ。悪いけど2人で今から私の執務室に来てくれない?」
「そんなに焦らなくても…」
「明日二人でお出かけするんでしょ?忘れる前に渡しておきたいのよ」
どこからバレたのかは分からないが、母は自分の事にように嬉しそうにそう言った。ちょい恥ずかしいな~
執務室に入ると母は、ヴェルに小金貨3枚の入った封筒を渡した。子供にしては多すぎるが、やった仕事量に比べると少なすぎる。母は、本来なら金貨3枚が妥当な金額と言う。後は預かりらしい。
ヴェルは顔を引き攣らせながらも給金を受け取ると、お風呂に入りに浴室に向って行ったので、私はウェールズの相手を少ししてからお風呂に入った。
お風呂に入り終わると、お母様にお休みの挨拶をしてからヴェルの待つ部屋へと、そーっと部屋を抜け出した。
子供だがら許されるが、これじゃまるで夜這いだよね。でもここは気にしないでおくよ。心は26歳だけど、体はまだ10歳なんだからね。
ヴェルの部屋に入るとヴェルは本を読んでいた。ヴェルの顔を見ると思わず顔が綻ぶ。
「へへへ…来ちゃった~」と、つい喜びが口に出てしまった。上手く心の制御出来なかったよ。
そんな訳で少し会話をした後、私は我慢しない宣言を出して、ヴェルのベッドに飛び込んだ。
それから、ヴェルの布団に一緒に入ると、柚子の香りと体温に癒されながら、明日のデートで何をしたいのかを尋ねると、スライムが欲しいそうだ。
何をしたいのかは謎ではあるが、ヴェルの事なので恐らく何か目的があるのだろう。
それから、少しの間会話をすると、いつもの様に魔力消費をして眠る。気絶なので昼寝をしすぎても寝られるのがこの魔力消費のいいところだ。
だが、昼寝をしたせいもあるし、デートが楽しみであるのか分からないが、眠りが浅く朝5時には目覚めてしまった。
母にバレると咎められそうなので、そっとヴェルを起こさない様に布団から出て、自分の部屋へと戻ったけど、布団は冷たいし、少し寒いがこればかりは文句は言えない。
それから、デートの事をもんもんと考えていると、朝日が昇り始めたのでそのまま寝る事なく起きた。
そんな訳で着替えをしてから洗顔をして歯を磨いてから、屋敷の外に出るとレリクが朝の鍛錬をしていた。
「お嬢様。今日はまた早いですね」
「ええ。昨日も早かったし、昼寝をしちゃったからあまり寝れませんでした」
「それはまた。そう言えばセレモニー用の宝剣の方が出来たそうですが、今日ロディウス商会に取りに参りますか?それとも屋敷に運ばせましょうか?」
ヴェルはスライムが欲しいと言っていたし、ロディウス商会は毎日この屋敷にやってくるので、その馬車に一緒に乗せてもらい、ロディウス商会へ行って受け取る事にした。
それからレリクと共に、日課である剣を振り一緒に汗を流す。聖女でも12歳までには伸びしろはあるのは実証済みだからね。
転生前のようにヴェルに守られてばかりは嫌だ。そのお陰でヴェルは私を庇って死んだんだ。そう思うと、不思議と挫けずにがんばれる自分がいた。
朝の鍛錬を終えると、浴室に行って朝風呂に入って着替えてから食事に向う。
食事の間に辿り着くと、ヴェルが従者とコーヒーを巡って何か言い争いをしていて、何故だか疲れていた筈なのにすーっと疲れが吹っ飛んだ。天然ヒーラーちは恐るべし。
冗談は置いておき、ヴェルと一緒に食事を始めると、ヴェルの皿にナスが無いのに気がついた。転生前でもナスは絶対に食べなかったので何だか懐かしくなり、転生前と同じように、無理やりナスを盛ると言う嫌がらせをしてみた。
転生前は絶対に食べないと言うので「それじゃ、私に食べさせてくれたら許してあげる」と言う、季節限定の唯一の楽しみである、自分の為のご褒美の時間だ。懐かしいくて顔が綻ぶ。
今生も、ナス嫌いは健在で、『あーん』をして貰う為に同じことをしたのに、怒涛の様に言い訳を並べられて、私の方が戦意を喪失。
『わ、私の楽しみをかえして!』なんて言えなくなり、かなり凹む。
食事が終わって、今日のデートの為の衣装に着替えて階段を下りて行くと、ヴェルが私の衣装を褒めてくれた。何だか凄く嬉しい。
その後、会話をしていると、丁度ロディウス大商会のロディウスさんが、集金に来ていたので交渉をすると、ひとつ返事で引き受けてくれた。
準備が整うと直ぐに出発をする。
ロディウス商会に到着をするとヴェルは早速スライムを見に行くと言うので、ロディウスさんに任せて、私は出来上がったセレモニ用の宝剣をレリクと一緒に取りに行った。
出来上がった剣を手に取ると、預けておいた宝石が柄の部分に施され、柄の部分には伯爵家の紋が彫ってあった。
鞘から剣を抜いてみると、セレモニー用なので刃は削り落とされているのを入念に確認。もしここで刃がついていようものなら儀式は中止になるし、下手をすると国に謀反の意思があるとみなされる為に慎重にレリクと一緒にチェックした。
「これなら。大丈夫ね」
「ええ。私も確認しましたが大丈夫でした」
レリクにもお墨付きを貰ったので、封印の魔法の札を貼ってからヴェルにバレないように屋敷に届けて貰えるようにお願いをした。
それから、ヴェルが購入したと言う清流スライムのお金をレリクが支払うと、財布が無いと不便だと言う事で財布を買ってから町へ出た。
デートが始まると、レリクが距離を置き始めてくれた。お子様の私達の護衛などレリクにしてみたら苦痛じゃないのだろうか?なんにせよ、どこまでも気が利く頼れる兄貴のような存在だった。
ヴェルにどこに行きたいかを尋ねると、この町は初めてなので何も分からないと言うので、ヴェルの好きな本が沢山ある図書館に行く事になった。
図書館に入ると、いきなりヴェルは世界地図に釘付けとなったいた。
読みたい本を手に取りヴェルの横へ行くと、ヴェルからの答えられない質問に動揺をしたが、神様との約束があるので、分からないと茶を濁して図書館を出た。
町の中心部に向かうと、ヴェルのお勧めどおりに、ジャンクフードとやらを大量買いした。肉系ばかりで大丈夫かと思うが今日ぐらいはいいか。
それに、実のところ私は転生前はジャンクフードが大好きであった。伯爵家では出ない手軽に食べれる食事と言う事で嵌って食べまくったのだ。
だが、ジャンクフードには欠点がある。食べれば食べるほど太るのよ。そんな訳で、ダイエットに苦労してからは食べるの控えた苦い経験もあったのよね。
ヴェルは、芝生の上に敷く敷物を購入。公園の木の木陰に敷物を敷くとジャンクフードを並べた。
ジャンクフードを食べ始めると、私は朝のリベンジを果たそうと周りのカップルを探す。すると仲良く食べあうカップルを見つけた。あざといかもしれないが、これは必要な儀式なんだよ。
「ヴェル。せっかくのデートだからさっ。私もあれをして欲しい」
ヴェルは顔を赤くしながら、私の希望を叶えてくれた。私はもちろん舞い上がる。う~ん幸せだな~
心臓の高鳴りを押さえるの精一杯になり、ヴェルの顔を見れなくなったのでレリクのいる方を見てみると、レリクは鳩に襲われて、思わず吹いちゃった。
なんだか、本当に幸せを感じる。魔王軍が動き出すまで後5年。この幸せ糧にしてまだまだがんばろうと誓う。




