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ジュリエッタのやり直し その弐

今回の話も5000字オーバーしてしまいました。

過去に書いた物を改稿していますので、多少の差異はご勘弁を… 時間があれば改稿する予定ですが、本筋は同じですのでご容赦下さい。

運命の再会から数日後、王都から戻って来たお父様を私は説得して、一緒にヴェルの屋敷に向っている。


「ジュリエッタ。それでアルフォンスの息子はそんなに出来るのか?」


「ええ。作法は私と同等、学力は神童と呼ばれ、しかも年下。これ以上の条件を満たす男性がいるなら、いつでもお見合いでも何でもします」


「にわかに信じられんな」


「嘘は言ってないですよ」


「う~ん。ジュリエッタが人を褒めるなど今までに無かったんだ。信じてみたくなった。しかしそうなるとだな…」


「姫様の事ですか?」


「ああ、良く分かったな。陛下も姫様の婿取りに必死で王侯貴族を当たっていると聞く。もしもジュリエッタが男性ならばと今回も王城に出向いた時に言われたよ」


まさかそんな展開になっているとは…


「ジュリエッタが言うように、そのヴェル君が神童と呼ばれているなら、いずれは陛下のお耳に入るかもやも知れん。早めに手を打たなければならぬかも知れぬな」


こうやって、自分の予想以上のスピードで外堀から埋められていくのは僥倖と言わざる得ない。


我ながらいい作戦だとはおもったけど、あまりにも執着しすぎて性格は悪くなっているかも知れないな~。


今後の展開を考えていると、すぐにヴェルの住む屋敷へと辿り着く。アポ無しの突然の訪問に、ヴェルのお父様はひどく狼狽をしていた。申し訳ない。


それから、ヴェルがお父様に挨拶をすると、お父様は顔には出していないが驚いていた。一緒に過ごしているから分かる。この感触はかなりイケている。


それから、ヴェルに先日と同じ書庫に案内されて部屋に入った。


今日は異世界の教育水準と言うか、ヴェルの実力が見たくなり、今教わっている算術の問題集を机に出した。


「私、算術は苦手なのよね~」


そう、言いながらヴェルに問題を見せはしたが、実のところ苦手でもなんでもない。そりゃ事実上24歳だし、自慢をするわけではないが王都の学園も転生前は飛び級、しかも主席で卒業しているしね。


そんな感じでヴェルに教えを請うと、私の知らない、計算方法ですらすらと問題を解いて見せた。すっ凄い。ヴェルが転生した異世界の教育水準は高かったようだ。しかも一瞬で答えを出す。


私はその事を褒めると、ヴェルは謙遜をするが、これなら神童と呼ばれるのも頷ける。


それから、九九表と呼ばれる物を二人で作り、暗記を始める準備をした。九九は既に暗記しているが、それでも、もの凄く楽しい。


それから、マスマス計算なる勉強とかを教えてくれて、二人でいる時間が夢の様に去って行く。


「ジュリエッタお嬢様。伯爵閣下がお迎えられに参りました」


「え~。もう~」


そう残念そうに言うとヴェルは苦笑いをしていた。でも本当に楽しかった。勉強が楽しいと感じたのはいつ以来であろうか?


ヴェルと一緒に階段を下りて行くと、父が玄関ホールで待っていた。


父は私達の顔を見ると、ヴェルにお礼を言ってから「…文官でもある家庭教師からさじを投げられそうになっているんだが?」と、私の事を皮肉った。


そりゃね。もう知っている事を延々と教えられりゃ、誰でもそうなるってば。まぁ、ワザと知らないふりをしてるんだけどね。


屋敷に帰る馬車の中でヴェルの教養の高さを父に説いてから、定期的に勉強を教えて貰えるように説得をする。


父は成績が上がる条件で定期的にヴェルの屋敷に行く事を許してくれた。この実力ならば、ヴェルも学園に行かずに済みそうだ。



それから、約2ヶ月間、少しづつ本気を出して文官の用意したテストを解いた。実力を隠しているので点数アップは間違い無い。


しかも筆算なる計算の仕方とマスマス計算を極めたので、計算する時間が半分以下となった。これで誰もがヴェルの家庭教師に反対する者などいる筈もない。が、勉強を教えてくれる文官達には申し訳ない気がする。


そんな事もあり、今日もヴェルの屋敷に訪れると、今日はずっと心に秘めていた念願を果たすために、ヴェルに思い切って望みを言う覚悟をする。


それは、呼び捨てで呼んでもらう事であった。転生前から仲のいいカップルが、互いに呼び捨てで呼びあう姿を見て、いつしかそれは私の憧れになっていたのだ。


「もうそろそろ私の事、呼び捨てでもいいんじゃないかなって思ってさ~」


そう勇気を振り絞っりながらも、さり気なく言うと、ヴェルは笑って誤魔化した後に、身分の事などを理由に断わられる。


『ここで諦めてなるものですか』


強く拒否をされたわけではなかったので食い下がると、ヴェルは、ため息交じりに、お父様の許可があれば言いと言われ、思わず顔が綻んだ。絶対に説得するんだ。


それから、私はヴェルに将来何の職に就きたいかを聞いてみると、ヴェルは、王宮騎士になりたいそうだ。


ヴェルは16歳になると聖騎士となったので、王宮騎士にはなれなかったがそれは言えない。しかも、勇者になる事も。


『勇者になると知ったら驚くだろうな~』


そんな事を考えながら話をしていると「ジュリエッタさん。今から見せる事は他人には絶対に内緒にしてくれるかな?」と、ヴェルは笑みを溢す。


「えっ。別に構わないかで何をするの?」


「それは直ぐ分かるから見てて。ライト」


驚く事にヴェルは魔法を詠唱。僅かだが手のひらに明かりが灯る。


「まっ、まさかこんな事あるの?嘘でしょ」


私は、本気で力が抜けて、椅子から滑り落ちた。


ヴェルに魔法を教えるつもりで、こっそりお泊り計画をしていたのだ。魔力を使い果たせば気絶してしまうので、泊りこんで教えるのがベストだと考えていたからだ。


それがどう?ヴェルは自分で魔法を試して自由に使っている。ありえない。計画を変更せざる得ないわよね。


それからヴェルは、私に魔法を試してみないかと聞いて来た。元々私も3歳から鍛錬をしていたのだが、ヴェルに悟られないように、最初はワザと出来ない振りをした。


するとヴェルはあろうことか、自分の指をナイフで切った。馬鹿な事をするわね。


慌ててヒールを使いヴェルの指を治すと「でっ出来たわ!魔法!ふふふふ」と大袈裟に喜ぶ演技をした。何とか誤魔化せたようだ。


『でも、これってあざとい?いえ、ヴェル相手には自重はしないと決めたんだ』と、自己暗示を掛け、強い意志をもって少し残る良心を封じ込める。


それからもヴェルは、眼鏡に黒墨を塗ったものを掛けろと言うので掛けてみると、光の強弱、つまり魔力操作を完璧に習得していた。


ここまで魔力量を微調整出来るなど、相当な訓練が必要な筈であった。聖女であった私さえ、神様に教えて貰って基礎値の謎を知ったのに、ヴェルは自力で答えを3歳の時点で答えを導き出したのだ。


生まれ変わったヴェルは、まさに神童と呼ばれるには相応しい存在になっていた。


これも勇者の血筋だと言うなら納得だが、それにしても凄すぎる。私ときたら、魔法を教えて尊敬されようと言う思いもあったが、そのやましい心を見透かされた気分だ。何だか情けない。


これからも、ヴェルに負けないように魔法操作の鍛錬を精進する事にする。


そして、父が迎えにきたので、ヴェルと階段を下りて行くと、父はいつもの様に玄関ホールで待ってくれていた。


忘れないうちに、ヴェルが私の事を呼び捨てにしてもいいか尋ねてみると、即答で構わないと答えてくれた。私の念願はこうして果たされた。父には感謝しかない。


 そらから、2年の月日が流れて、私は10歳となる。いよいよコレラが流行る運命の年になった。あさってに、コレラの厳戒令が発法れると父から聞いて不安になる。


「ジュリエッタ。知っているとは思うが、コレラが流行りだし、私は王都に召集される事になった。母さんの所で預かって貰おうと連絡をしたんだがやんわり断られたよ。それでだがジュリエッタ。ヴェル君の所に行くか?」


「はっ?はい?」


「ジュリエッタにしては、めずらしい反応だな。実はな、アルフォンスも王都に呼ばれるようなのでな、ヴェル君も寂しいだろうと思ってアルフォンスに聞いて見たら、ジュリエッタを預かってくれると返事が返って来たんだよ。どうだ?無理にとは言わんが?」


「私の気持ちを知っていて意地悪です。今直ぐ準備をします」


「おいおい。行くのは明日だぞ。今から準備は早すぎるって」


はやる気持ちを前面に出しすぎて、顔の緩みが抑えきれない自分を、父は呆れた表情でこちらを見ていた。だが気を遣ってくれた父に感謝だ。


 次の日の朝早くから、ヴェルの屋敷に向う。


「ジュリエッタ。嬉しいのは分かるが、あまりヴェル君に迷惑を掛けたら駄目だぞ」


「ふふふ。分かってますってば」


父は口には出していないが、既にヴェルの事を認めてくれていて、私の協力者になってくれている。まぁ、それはそうだろうな。ヴェルの事が好きだとバレバレの行動や言動ばかりしているんだしね。


ヴェルの屋敷に到着をすると、ヴェルはこの事を知らなかったようで戸惑っていた。ヴェルが言うには心の準備が必要なのだとか。準備もなにも、もう来てしまったんだよね。


非常に申し訳ないないが、ヴェルに拒否権などある筈もなく、荷物を屋敷の中に運び入れた。


しかし、ここからが正念場であった。転生前の世界では、この後にヴェルのお母様はコレラに感染して亡くなってしまうイベントがあった。


この2か月の間、ヴェルと一緒に用意したマスクとやらに、いかほど効果があるのかも分かんない。


神様の話では、ヴェルはコレラを克服した異世界の知識を学んでいると聞いていたが、知識とマスクだけでコレラが克服出来るのかは正直な話、疑問であった。


それはそうじゃない?コレラはもう何百年も流行り廃りを繰り返し、色々研究などもしたが未だ誰も解決策を見いだせていないのだしね。過剰な期待はしないでおくべきだろうな。プレッシャを掛けるのは良くないよね。


荷物を部屋に置きに行くと、ヴェルのお父様から話があると言う事で、居間へと移動した。


父の言っていたとおり、王都から正式に召集が掛けられて、コレラの事について説明があった。


内容は、従者さん達の対応から話が始じまって、厳戒令が布かれている間は給金の7割を出すと聞いて驚いた。ここまで従者達の生活面を支える貴族など聞いた事もない。凄い事だと感心したよ。


それからヴェルは、コレラに感染をしないように、次々と対策を披露して、もし感染した時の対処法までみんなに教えた。ヴェルは異国の本から学んだとは言っているが、コレラを克服した異世界の知識だと直ぐに分かった。


しかも、コレラに感染した時などに飲むスポーツドリンクなるものを試飲してみると、かなりの美味しさで、思わずおかわりをしてしまった。少し恥ずかしいが美味しいものは美味しいのだよ。


それから、大荷物を馬に乗せたヴェルのお父様を見送ると、客室に入れた荷物を片付け始めて、役割分担を決めてから食事を食べた。


それから、お風呂に入ってから、夜は一緒に寝ようと企んでいるので今からドキドキする。


「ねぇ、ヴェル。少し話しをしない?何だかまだ眠くないの」


転生前は、ヴェルと一緒の部屋には寝た事もあったが、ヴェルは一度たりとも一緒のベッドに入ってくれなかった。女としての魅力が無いのではないのだろうかと、当時、何度も落ち込んだ記憶がある。


でもこうして転生をして、再び出合ったのだ。恥ずかしいけど積極的に行動するのみである。今生は絶対に後悔したくはない。


そんな気持ちをが勝ち過ぎないように言葉に表すと、ヴェルは少し迷っていたが、あっさりと受け入れてくれた。嬉し過ぎて抱きしめたくなるが、少年少女の私達にはまだ早いわよね。


ヴェルからも、何のモーションもなく戸惑いを隠せない様子だったので、彼もまた苦悩しているのかも知れない。


それから、ベッドに入ると、父も危惧していた姫様の件を考えて、先手必勝とばかりに、私の専属騎士になって貰おうと話を持ちかける。何度も言うが今生は良心を捨ててでもヴェルの命を救いたい。


転生前も専属騎士にはなってくれたのだが、学園の卒業前であったのであれでは遅すぎるし、今回は姫様も恐らく生きながらえる事を前提で早めに手を打つしかない。


勇者、聖女、賢者は運命の赤い糸で結ばれていると神様は言ったがそれでも、転生前の事を考えると少し不安…


なぜなら、先に王族と婚姻関係を結ばれたのなら、いくら私が伯爵家の娘でも口出しは出来ないし、王都に呼ばれたら数年間、ヴェルと離れ離れになる可能性がある。


もし先に専属騎士の儀を済ませても、王族が本気をだせば、なんだかんだ理由を付けて姫様とヴェルをくっ付けようとするのは容易に想像がつく。


私は神様に諭された自分に、ヴェルを独り占めする気は無い。勇者であるなら優秀な子孫を残すのも役目ではないかと考えを改めた。だけどヴェルから離れたく無い…卑怯かも知れないが、その気持ちを押しての行動であった。


その思いをそれなりにぶつけると、ヴェルは口約束だが約束をしてくれた。嬉しすぎて思わず涙が零れた。


ヴェルは何で泣いているのかと不思議そうな顔をしているが、これだけの思いが詰まっているのだそりゃ泣けるよ。


初めてヴェルと一緒のベットで寝られる幸せを感じつつ、互いに魔力消費をしながら意識を手放すのであった。



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