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ジュリエッタのやり直し その壱

この話は本編49話からの派生の話となります。(結構長い話になります)


転生したジュリエッタがヴェルにどう接するのか?などの心情を過去に書いたものです。

計算高い、あざとい、押しかけ女房かよ!など、ご批判はあるかもとボツにしたネタなので、どうかメインヒロインのジュリエッタを嫌わないでほしいです。


私は記憶を持ったまま生まれ変わわり、また愛する家族と再会をした事に歓喜した。


「おぎゃ~ おぎゃ~」と。


「おやおや。この娘はよく泣く。元気があってよろしい」


両親が寝ている時に言葉を発して見たけど、色々なところが発達をしていないのか喋れやしなかった。もし仮に喋れるとしても、喋れる赤ちゃんなんて逆に不気味だよね…


記憶は神様に封印されて16歳までしかないが、両親はまだ若く初々しい。そんな印象だった。


転生してから3年の月日が流れた。まともに発音出来ない…体が言う事をきかない…目立てない…縛りが多すぎて知識と意識があるぶんだけ、この3年間地獄の毎日だったのは記憶に新しい。


オムツは夏場はムレて痒いし、良い事などこれっぽっちもない。強制的に与えられる、母の母乳を直接貰う時のあの絶望感…生きていくためには必要な事だとは認めるが、もうごめんだよ。


そんな地獄を振り返ると、苦笑いするしかないよね。


神様に魔臓の発達と魔力操作の鍛錬が出来るようになる3歳になるまでは、絶対に魔法はご法度と教えて貰っていた…やっと解禁だよ。


それから徐々にではあるが魔力操作の練習を始めると、転生前の経験や実体験もあるのですぐにヒールを使えるようになる。


そうとなれば、こっそり部屋を抜け出して屋敷を徘徊したりして体力作りを開始。体がまだ出来上がっていないので調子に乗ると簡単に転んでかすり傷を負う。


『痛いけどここは我慢ね』「ヒール」


私は基礎値を上げる為に。毎日寝る前に魔力切れを起こして気絶するまで鍛錬を開始していた。誰も見ていないところで魔力消費の少ないヒールを自分に掛け傷を無かったことにする。


『いいのかなこれで…反則のような気がする』


だが、まだまだ先の話だけど、魔王は必ず復活する。


『自重はしないとあの時に心に決めた筈だよね、今度こそヴェルを死なせる訳にはいかないんだ』


その甲斐あってか6歳になる頃には徐々にヒールを唱えれる回数が増え、3歳では5回、4歳では20回…と徐々に1日に使える回数が増えていった。魔法が使える事は当然誰にも言ってない。


6歳の頃から、この屋敷にある従者の子供用の学び舎で一緒にみんなと勉強を習う事になるが、王都の学園を卒業している私にとってあまりにも無意味。


テストは簡単で余裕、余裕。これが全ての間違えであったのに気が付くには思慮が足らなかったと言わざる得ない。


なぜなら、お父様の執務室に呼び出されて、


「はぁ~。ジュリエッタ、君が本を好きで毎日読んでいた事を知っていたがまさかここまでとは思わなかったよ。まだ早いとは思うけど文官を付ける事にするよ」


そうお父様が嘆く。


折角の申し出だが、申し訳ないがやる気が出ない…そんな事が決まって執務室から自室へ戻る最中の事。


屋敷で働く文官達がこそこそ何かを話している。さっと隠れて聞き耳を立てる。はしたないとは思いつつ、話題が自分のものだと知れば聞かずにはいられなかった。


「ジュリエッタ様のテストの結果を聞きました?」


「ええ、12歳の子供用のテストなのに満点なのだとか」


「採点をした文官が控えめに言っても天才だと。このままの調子でいけばもう学園に入る必要などないんじゃないかと仰っていらしたわ」


そんな会話が耳に入る。


『まずいわね、このままじゃ…歴史が変わってしまうと学園に入るルートが無くなってしまう』


そうなれば、ヴェルと一緒に学園に通うことすら叶わなくなってしまう…それからは、適当に知らないふりをしてみたり、ワザと間違えてみたり調整が難しい…


ここで、思ったのはこの先の2年間は体力作りや、こっそり庭の木陰で剣の鍛錬をしようと心に決める。


そして運命の出会いが待つ8歳になる。天才なる称号を薄れさす努力をしたが、


「やる気がなさそうには見えるが、些細なミスはあるもののほとんどの問題が解けている。やはりジュリエッタ様は天才と呼ぶに相応しいお方だ。将来が楽しみだよ」


と文官達の認知バイアスが悪い方向に働いてしまい、更に悪い結果に…


「なかなか、自分の思いどおりにいかないよね」思わず苦笑してしまった。


そんなある日の事、待ちに待ったイベントの日が訪れる。


「ジュリエッタ。お父さんとお母さんは、急遽王都に行かなければならなくなった。遠縁だが、親戚のじいさんの所で預かって貰おうと考えているが嫌か?嫌なら王都に連れて行くが」


来た来たついにこの時が!ついにヴェルと会えるんだ。


「そうですね。分かりました。お仕事の邪魔をするといけないので、おじい様の所で帰りを待っています」


嬉しい気持ちを抑えながら、そう答える。


「聞き分けが良くて助かるよ。それにしてもジュリエッタ。学力も然ることながら、その口ぶりはとても8歳とはとても思えんな」


「それはこんな環境ですもの。こうなっては仕方が無いのではありませんか?」


中身は16歳+8歳=こんなもんでしょ。


「そうか。エリザベートとも話しをしたが、これだけ大人びていたら、ジュリエッタに見合う友達すら見つからん。あわよくば従者の子供達とコミュニケーションをとも思ったがな」


「ええ。本当に困ったわね~。上級貴族の娘は早く許婚を見つけないと直ぐに良縁が無くなってしまうわ。お母さんもそれだけが心配よ」


「陛下もその事で悩んでいるそうだ。王侯貴族を色々当たっているらしいが、姫様に見合う相手が見つからないらしくてな。出来た子を持つ親も大変だよ」


「そんなに慌てなくても大丈夫よ。私は自分でちゃんと見つけますからね」


両親の心配なんて杞憂なだけだ。そう、もうすぐ私の専属騎士と会えるのだから。今は、ヴェルにこの溢れる思いを伝えたい。自然と笑みがこぼれてしまう。


それから数日経つと、私はついにヴェルが住む屋敷に行く事になる。怪しまれずにどうやって接しようか。それだけを考えて行動すると決めている。


馬車に乗り、馬が走り出すと久しぶりに会うおじい様が、何かを思い出したように口を開く。


「ジュリエッタよ。今日ワシ達が向う屋敷には、ヴェルグラッドと言うワシの息子の孫がおる。ヴェルはジュリエッタと似ていて、とても歳相応には見えぬ共通点がある。仲良くするんだぞ」


なっ、なにそれ!確か転生する前に会ったときは、内気で大人しくて、寡黙な感じじゃなかったっけ?


どうやら、その後聞いた話では、ヴェルは3歳から読み書きが出来ていて、神童と呼ばれているらしい。歴史が大いに変わっている事に驚いた。


それから、ヴェルの屋敷に到着をすると、あの事件がフラッシュバックする。そう、義母に虐げられ怯えて震えるヴェルの姿である。


歴史は変わったんだ。心を真っ白にしないと顔に出る。


玄関で挨拶をしているヴェルが遠巻きに見えると、すかざす、おじい様の後ろに隠れた。


『ヤバイ。本当にヴェルだ』


生まれ変わってから、初めて感じるこれほどのドキドキ感、それに高揚感。そのことがバレないように深呼吸をして、手櫛で乱れているかどうかも分からない髪を整える。第一印象が大切だ。


「おっ、久しぶりだなヴェル。また一段と大きくなったな」


「ありがとうございます。こうして大きく成長出来たのも皆様のお陰です」


久しぶりに声変りをしていない、ヴェルの声を聞くと感動した。失った物を取り返した。そんな気分になる。


「流石は神童と呼ばれた子じゃな。7歳とは思えぬ口ぶりよ。そうじゃ、ジュリエッタ前に出て挨拶をせぬか」


そう呼ばれるとはっとする。一歩前に出ると、噛まないようにゆっくりと挨拶をする。


「私は、ジーナス伯爵家が娘、ジュリエッタ・ジーナスと申します。以後宜しくね」


私はどんな顔をして挨拶をしてるんだろうか?顔が綻びそうでヤバイ。だが耐えた。


「こちらこそ。私はヴェルグラッド・フォレスタと申します。ヴェルとお呼び下さい」


「うむ。それでは、お前達は年も近いし、遠縁だが親戚同士だ。身分など気にせずに仲良くするんじゃぞ」


「はい。友達がいないので楽しみです」


『今生も友達いないんかよ!!』そう突っ込みそうになるが、私も友達は今の所いない。転生前も二人とも同じだった事を思い出して思わず苦笑いする。


「そうだヴェル、玄関前での挨拶はもういい。お嬢さんの相手をしてやってくれないか?見たところ年頃の子供もいないようだし」


「はい。お父様。それではジュリエッタお嬢様。参りましょうか?」


「はっ、はい」


58年振り、いや記憶の中では8年振りに会ったヴェルは転生前と違い饒舌で、まるで別人のようだった。でも容姿、声、そして優しい感じは以前と同じで何だか安心をした。


それにしてもヴェルは7歳にしては大人び過ぎている。そんな事から、ヴェルは異世界の記憶を保持しているのだと確信した。


それから、まだ食事の用意が出来ていないと説明をされたので、書庫で話をする事になった。いきなり二人きりって…緊張しすぎて胸の高鳴りが止まりそうもない。


ヴェルは、私に「さぁ、こちらにお掛け下さい」と椅子を差し出した。


転生前はこの書庫には来た事が無かったので部屋の中を見てみると、うちの屋敷ほどではないが本がいっぱいあった。


子供が好きそうな英雄譚が多いが、自分で書いたのあろうか?見慣れない物まである。


ヴェルはベッドに座わると「緊張は解けましたか?」と聞いてきた。


そりゃ緊張もするわよ。どれだけあなたに会いたかったって思っているのよ。少しは私の気持ちにもなってごらんなさいよ!そう言いたいが言える訳が無い。


「ええ。この書庫に来て幾分は。それよりも、ヴェルさんは何で神童って呼ばれているのですか?」


異世界の知識があるのだと断定しているが、神様との約束で余分な事は聞けない。だが話題が無いのでそう切り出した。何でも3歳で読み書きをマスターしたそうだ。


「3歳で読み書き出来るなんて凄いです。私にも教えて欲しいです」


「それは機会があったら、と言いたいですけど勉強を教えるのは大人の役目でしょうから僕では大役過ぎます」


「そっかな~。私はそうは思わないです。同年代のお友達に教えて貰う方が、やらされてる感が無くていいと思います。そうは思わないですか?」


「言われてみればそうかもしれませんね」


「あ、話をしていてちょっと違和感があるので、これからはヴェルと呼び捨てで呼んでもらえませんか?出来ることなら敬語もやめて欲しいです」


『きっ、来たよこの好機。絶対にお嬢様と呼ぶのを止めさせてやるんだ!』


「それでは。お嬢様と付けるのは止めて欲しいかな。それと、自分だけ敬語を使われるのは嫌だから、ヴェルも敬語はやめてくれると嬉しいな」


「それでは、ジュリエッタさんと呼びますね」


「それでいいわ」と、しれっと答えた。


『やった!一歩前進!!』心の中でそう歓喜する。転生前は何度言っても頑なに拒否していたヴェルが、あっさりと呼ぶのを止めてくれたのだ。嬉しくないわけが無い。


それから、好きな食べ物などの話をしなから数十分経つと、書庫の扉をノックする音が聞こえた。


「はいどうぞ」


「失礼致します。準備が整ったと奥様から言付けがありました。大広間にお越し下さい」


メイドさんがそう伝えに来たので、ヴェルと一緒に大広間に向うと、ヴェルは「少しこの場を離れさせていただきます。楽しんでいって下さいね」と言ってこの場を離れていった。


今日はヴェルのお父様の誕生日なので、仕方が無い。私は、おじい様の隣の席に座った。


転生前は、確かここから私が伯爵家の娘だと知った者達が集まってきて、食事も食べすじまいでつまらなかったと記憶している。


ヴェルのお父様の挨拶が終ると、ヴェルが、父親と何かを話していた。そう思っていると、すぐにこちらに向ってやって来た。


「ジュリエッタさん。子供は僕達だけなので、ご一緒にお食事しませんか?」


そう言われて嬉しくない筈はない。


「はい。喜んでご一緒に」


そう答えると、ヴェルは従者さんに子供用の椅子を用意させ、小さなテーブルへと移動した。しかも、自然と手を繋がれたので赤面する。


『ヴェルって、こんなに積極的だったっけ?異世界で生活をしただけでこうも性格が変わるのかな~』


少なくとも、私の知っているヴェルとは違うが、これはこれでいい感じだ。むしろこっちのほうが積極的で好きだよ。


それから、先ほど私が話した好きな料理を次々と皿に盛って貰うと、席について食事を始める。しかし、ヴェル。子供なのに出来すぎでしょ?これでモテるなと言うほうがおかしい。探りを入れる。


「ヴェル。あなたは女性に対していつもこんなに優しく接するの?」


「まさか。こうして女性と相対するのは始めての事です」


『ほんとかな~。あやしいぞ~』


「それにしては、女性の扱いに慣れていますわね」


「同年代の子供と今まで遊んだ事がないので、ついはりきってしまいました。気に障ったのなら謝ります」


「そんな。謝らなくても結構です。でもこの先は気をつけた方が宜しいかと思います。誰にでも優しいと、勘違いをされるかもしれませんので」


「そうですね。以後気をつけます」


これはヤバいやつだ。女の感だ。転生前の子供の頃のヴェルならともかくとして、ヴェルは学園に入るとモテまくる。そんな訳で釘を刺しておいた。


私は、計算高く姑息な女かもしれない。神様にも指摘をされたが、ヴェルを独り占めしようとしている。


私は記憶を50年も封印された。ヴェルとこうして会うのに58年も待った。未婚のまま処女も守った。きっと今の間だけなら神様も許してくれるだろう。







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