第七十二話 一人だけ雰囲気違うくね?
ちょっと混乱している方がいるかもしれませんので、状況を軽く説明しておきます。
マリトッツォ(港街) 全壊、世紀末
リク(主人公) 実は瀕死の重傷
サツキ 軽い捻挫と打撲
ヤヨイ 肋骨二本折れてる
ヒガン 無傷、強いて言うなら少し右の手のひらヒリヒリしてる
ミリアナ(師匠) 疲労
ワキヲ 寿司
俺は目の前にいる不思議な少年を見た。
黒髪に赤のメッシュ。
目は黒と金のオットアイズで、右腕には赤い包帯が巻かれている。
顔は完璧、と言っても差し支えないほど整っている。
「ふむ………」
顎に手を当てて考える姿も様になっている。
「お前の名は?」
「お、俺ですか?」
「それ以外に何がある?」
そう言って斜め四十五度を向いて、右腕を顔に、左腕を右腰に当ててポーズを決めた。
「俺の名前はリク。あと、十五歳です」
「リク?………ミリアナが何か言ってたような………」
「ミリアナさんと知り合いなんですか!?」
ミリアナさん、俺の師匠だ。
クロキさんに紹介されたときは『ちっさ………』って思っていたのは秘密だ。
「あ!お前、ミリアナの弟子の一人なのか!」
「そうです!」
それからしばらくミリアナさんの話をして楽しんだ。
師匠の裏話とか聞けて最高だった。
じゃなくて―――その話は後程―――ヒガンさんは師匠と同い年らしい。
「俺とミリアナとクロキとリンネ。あと、お前の知ってそうなのは『黒の罪人』のノアか?そいつら全員俺と同期だな」
「―――!?」
やばいやばいやばいやばい!
現在の世界トップの実力者が固まってる!
何だよ!?
クロキさんだけでもチートなのに!
何で世界第二位もいんだよ!?
「俺たちは神の申し子とか言われてたっけ?」
「は、はぁ………」
だろうな………
おかしいだろ………
「おっと……そんな話はどうでもいい!」
良くねぇ!
「俺が聞きたいのはお前の中にいる『それ』のことだ」
「『それ』?」
「お前の傷を必死に治そうとしている闇の塊の話だ」
何となく俺の胸元の闇がざわついた気がした。
一方、瓦礫すらない、不自然に開いた更地の上は―――
「くっ!」
栗色の髪を揺らし、息を荒くした猫耳の少女が地面に這いつくばり、その場から微動だにせず不敵に微笑むピンクの髪の少女が立っていた。
「サツキ、その程度ではこの不気味で歪な『世界』では何もできませんよ?ワキヲさんを元
に戻すんでしょう?」
「んっ!分かっています!私はもうこれ以上何も出来ずに守られている訳にはいかないんです!」
「そうです!その調子です!強くならないと何もできません!」
何なんですか!?
この人!?
リクさんの師匠なので強いのは覚悟していましたが、ワキヲと比べ者にならないほどスパルタなんです!?
「はぁぁぁ!【ダークハート♥】!」
サツキの持つ名刀『スーパーヤクザソード』の軌道に合わせて黒いハートマークが現れていく。
「え!?」
舞うように避けると首元に突き付けられる耀く美しい刀。
「ふぅ…………さ、次に行きましょう!」
「ちょっと待ってください!少し休憩を!」
「敵は待ってくれませんよ?」
「もう………!」
すでに身体が限界を迎えています!
手が痺れてきてます!
「そんなことが許されると?」
ニッコリと笑うピンク色の髪の少女。
そして、月光に照らされ妖しく光る刀を振り下ろした。
「―――ッ!」
散る火花。
「なんだ………出来るじゃないですか?もっと頑張りましょうね?」
ゴクッ
サツキはミリアナに修行を頼んだのを少し後悔した。
また、治療のためのテントでは―――
簡易型のベットの上で猫耳の子どもがうずくまっていた。
「ぁ…………ぅ……」
記憶にこびり付いて離れない『死』の恐怖。
それは自身の『死』に対するものではないはず……
「オ、オレは何も出来なかった………」
自身の手の届かない場所で寿司にされた自分の師匠………
実は割と近い位置で斬り飛ばされた命の恩人…………
「オレは………」
だが、フラッシュバックされたのは自分が教祖に蹴り飛ばされた二つの記憶。
自分の手を見ると小刻みに震えている。
「そう………なのか………?」
気付いてしまった『恐怖』の正体。
「オレは大切な人の『死』よりも自分が死ぬ方が………」
猫耳の女の子の見た目をした子供は頭を掻きむしった。
乾いていく心。
「偽物………」
ポツリと呟いた。
マオちゃん「暇じゃのう………」
リラ「マオちゃん、ならウチらと一緒に旅に出ない?」
リル「いいですね!」
マオちゃん「ほんとか!?」
リラ「うそ~」
マオちゃん「な!?」
リル「こら!冗談はやめなさい!………マオちゃん、安心してください。一緒に行きましょう?」
マオちゃん「そ、そうじゃな」
リラ「じゃ~一緒に行こ~」
ドタバタ
アイリーン「私を置いて行かないで~!」
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