第七十一話 ヒャッハー世界
今日ブックマークが増えていてとても嬉しかったので投稿しようと思います。
ブックマークしてくれた方、本当にありがとうございます。
深い不快闇の中、俺は上も下も分からないまま浮かんでいた。
いや、沈んでいた。と言う方が正しいか?
そこには何もない。
物も空気も熱もない。
そこにあるのはただただ闇だけだった。
「ヒャッハー!ヒャッハー!ヒャッハー!」
何だこのヤバい掛け声は……
「ヒャッヒャッハー!ヒャッハー!」
まさか新たな言語なのか!?
リルの授業で一度も出てきたことないんだけど!?
俺、一応古代文字まで勉強したんだぞ!?
「ヒャッハー!」
「うるさい!」
俺はがばっと起き上がる。
「うっ………!」
少し胸が痛む。
「暗いな………夜か………」
俺はキョロキョロと辺りを見た。
そこはテントのような場所でさっきから聞こえてくるヒャッハー音は外からのようだ。
「見てみるか………」
俺は寝かされていた簡素な布団から出る。
「な!?」
俺は夢でも見ているのか?
「「「ヒャッハー!」」」
全身黒タイツにモヒカンのムキムキの爺さん達が大勢で酒を飲み、肩を組んでいる。
「くっ!意味が分からない………」
いまだに痛む胸元を抑えながらゆらゆらと歩いて行く。
「あの爺さんたちは置いておくとして、瓦礫が大量にあるな……」
何があったんだ?
というか凄く痛い。
ここでこれまで何をしていた?
「くそっ!」
人の気配のない大きな瓦礫の影に座り込む。
痛む胸を見ると包帯が巻かれている。
俺はそれを無理矢理剝がす。
「―――ッ!?」
闇に覆われた肉体が露わになる。
闇は時にうねり形を変えて、それでいて俺から決して離れない。
「きも………」
これ以外感想ないんだけど。
え?それ以外に形容する言葉ある?
「見たくないし隠しとこ…………」
服を着なおす。
「さてと………」
俺は瞑想に入る。
戦闘による負傷や精神攻撃による記憶の欠損の場合の対処法を思い出したからだ。
「クロキさん曰く、この世界における瞑想という行為には多くの利点がある、だっけ?」
記憶の復元。
精神の安定。
魔力の向上。
そして、アイデンティティの確立に必要となる、『自分を見つめる』という大切な行程。
「ふぅー………」
俺は深い精神の奥に入り込んでいく。
一瞬でここまで行くことができるようになるのには苦労したものだ。
「【解】!」
忘れていた記憶がフラッシュバックする。
瞑想中に突然覚醒することで記憶を取り戻す方法。
クラウンが教えてくれた裏技の一つ。
「あっ………」
ある程度思い出した。
教祖にボコボコにされて、死にかけたこと。
『猫耳キャウーンアイドル』、サツキと共闘したこと。
ワキヲが寿司になったこと。
そして、ヤヨイが教祖に二回蹴られて退場し、皆から忘れ去られている悲しい事実。
最後のはこれしなかったら、完全に忘れてたかも………?
「ようやく思い出したのか?」
頭上から声が聴こえる。
「?」
俺は視線を上に向ける。
白く光る月をバックにポーズを決め、金色の瞳を輝かせた少年が立っている。
あれ?空中?
「どうなんだ?」
「うおっ!?」
瞬間移動したかのように目の前に現れた少年。
遠いし暗くてよく分からなかったけど凄く顔が整っている。
「■■■、どう思う?」
え?今何て言ったの?
聞き取れなった。
「たしかに……」
この人、誰と話してるの!?
「な!?お前がそう言うか!?」
もしかして……赤い包帯の巻かれた右腕と話してる!?
「あ、あの………」
「なんだ?」
金と黒のオットアイズの視線がまっすぐとこちらに向く。
「誰でしたっけ?」
その辺の記憶だけ、完全に、ない!
「ふっ………仕方ない。もう一度言おう!」
少年は決めポーズをして、斜めに俺を見る。
さっきから何なんだ!?
そうしないと死ぬの!?
「俺の名前はヒガン=アガレア!いつか最強になる者だ!覚えておけ!」
「さ、最強?」
この変な人がクロキさんを超えられるだろうか、と真剣に悩んだ。
タカナシ「ん?何してんだ?」
アイリーン「メトロノームを見ているの」
タカナシ「げ………」
アイリーン「げって何よ!げって!」
タカナシ「いや、ごめんな?そういう意味じゃないんだけど」
アイリーン「どういうこと?」
タカナシ「それ、クロキのだから壊したりなんかしたら消されるぞ?」
アイリーン「……………」
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