第六十六話 月下美人って実はサボテンらしい
今日のご飯は寿司でした。
美味しかったです。
「あはっ?【熱波】ぅ!」
「―――ッ!」
赤く燃え盛る二対の羽から放たれる灼熱の風。
今、確かな重量を持つ一撃へと昇華された暴風は無理な体勢で【椿】を使ったミリアナを叩き落とすのに十分な威力があった。
「かはっ!」
高速で地面に向かって墜ちていくミリアナ。
「追撃ぃ!」
赤髪の少女は二対の羽を大きくはためくかせる。
その愛らしい見た目からは想像のつかない程の殺意を以て右手に炎を生み出しミリアナに叩きつけるべく、腕を振りかぶる。
「待って!それは!」
緑髪の少年は必死に叫ぶが全身の神経がミリアナに対し向けているテッカには聞こえていないようだ。
「これでぇ!どぉ!」
振り下ろされる赤色の殺意。
「…………待っていました。あなたから近づいてくるのを………!」
バシン!
振り下ろされた右手首を掴み、片頬を上げてニッと笑うミリアナ。
「でもぉ!あんたの負けよぉ!」
だが、火球そのものが消える訳ではない。
「【刹香】」
もう一度、繰り返された刹那の椿の淡い香り。
「なぁ!」
火球が消滅すると同時に技を放つ。
「……【月雷煌】!」
月のように白く煌めく稲妻を纏った斬撃が放たれ、ツンと華の香りが広がる。
「―――ッ!」
迸る鮮血。
舞い踊る血飛沫の中、少女は笑っていた。
『あたしは……あなたを傷付ける者は一つ残らず………』
蒼い瞳に蒼い修道服の中性的な顔立ちに変化した教祖が黄色い剣で空を斬り裂き、蒼いカジキを生み出す。
『……消すぅ!』
教祖が指を鳴らすと蒼きカジキが高速でこちらに飛んでくる。
「「はぁぁぁ!」」
教祖に向かって走り出す栗色の髪に猫耳の少女と茶色の髪に黄色の目の少年。
「サツキ!」
「はいっ!」
瞬時に指示に対応し、スライディングするサツキ。
その上にリクの持つ黒く染まってしまった剣が通り、迫りくる蒼きカジキに斬り込む。
キィィン!
「何っ!」
甲高く響く金属音。
まじかよ!
教祖自身だけじゃなくて蒼い魚達まで強化されるのか!?
「ふっ!」
受け流すように回転することで立ち止まることを回避する。
立ち止まってはいけない。
いや、ここで立ち止まるとは『死』を意味する気がして。
「【天駆】っ!」
走るときに【天駆】を挟みつつ、少し先に進んでしまったサツキに追いつく。
サツキ何か、足エグいぐらい速いんだけど?
「同時に行きましょう!」
「おう!」
教祖に向かって二人同時に剣技を放つ。
俺からは下を向いている教祖の表情を窺い知ることはできなかったが、泣いている気が―――
下を向いている?
気味の悪い汗が背中を走り、俺の心臓が警鐘を鳴らす。
「【ダークハート♥】!」
黒いハートマークがサツキの持つ『スーパーヤクザソード』の軌道に先回りして展開される。
『スーパーヤクザソード』が黒いハートマートを斬り裂く度に加速していく。
「サツキッ!」
俺は使うつもりだった技の構えをキャンセルして別の技の構に移る。
『【未来世束】』
「なっ!」
すっ、と軽く避けると上に酢剣『ガリブレード』を構え、振り下ろす。
「させるかっ!」
俺はサツキの前に飛び出し、剣を振るう。
『【神閃なる一撃】!』
オーロラの如き眩く美しい一撃が前とは比べ物にならない威力で振り下ろされる。
「間に合えぇぇぇ!!」
俺はイチかバチか、教祖の攻撃に間に合うか分からないが【柳】を発動させることにした。
そして―――
見る者を魅了するような鮮やかな虹色が世界を斬り裂いた。
リル「リラ、私の眼鏡はどこに行ったのでしょうか?」
リラ「さぁ?うちには分かんな~い」
リル「おかしいですね……さっきまであったんですけどね……」
マオちゃん「何かあったのか?」
リル「あ!マオちゃん!私の眼鏡が見つからないんですよ!」
マオちゃん「眼鏡?」
リル「はい!」
マオちゃん「頭の上に載っておらんか?」
リル「え?」
リラ「ぷぷっ………あははは!マオちゃん、何で言っちゃうの~」
マオちゃん「どうしてか?困っている奴がいれば助けるじゃろう?」
リル「も~!リラの馬鹿!脳筋!あんぽんたん!」
マオちゃん「はぁ……リラ、後で謝るんじゃよ?」
リラ「は~い」
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