第六十五話 実は強い二人
久しぶりに書いたせいか今まで一番シリアスに感じます。
これからもよろしくお願いします。
ピンク色の髪に可愛らしい見た目の少女が耀く刀を振るう。
その瞳は暗く、何も映っていないような冷たさを持っていた。
「散れ、奥義【桜】」
―――奥義【桜】、振るわれる刀身から舞うこの美しい桜は優しく包むように死を連れて―――
ミリアナのみが使える、この流派において四つある奥義の一つ。
そして、香り立つ桜の儚く淡い香り。
「奥義っ!?流石ミリアナちゃん!」
テッカと呼ばれた赤い髪の少女の額から一筋の雫が落ちる。
大きく見開かれった瞳は舞い散る桜が映る。
「ぼやぼやしてないで避ける努力ぐらいはしなよ」
「きゃっ!」
テッカの隣に立つ緑髪の少年がテッカの首元を掴んで引っ張り、引き寄せ、迫りくる桜の花弁を避けるために跳び上がった。
「超級魔法【海蛇】」
テッカを左腕で抱え、もう片方の腕から詠唱破棄した魔法を放つ。
緑髪の少年の右腕から無数の蛇が放物線を描いてミリアナに襲い掛かった。
すべての蛇は水でできており、その眼光は怪しく緑色に光っていた。
「…………そんなちゃちぃ攻撃、今の私に効くと思いましたか………?」
抑揚のない声でぼそりと言うとミリアナは耀刀『刹香』を強く握った。
「にぃ!ぼやぼやしてんのはあんたの方でしょぉ!」
テッカが叫ぶ。
だが、その瞳は妖しく闘気に満ちていた。
「【退紅】」
世界が色褪せた紅色に染まる。
緑髪の少年も赤髪の少女も魔法によって作られた無数の蛇たちも、何かを抱えていそうな少女もすべてが桜色に染まる。
「私、きっと上手く笑えてないでしょうね…………」
桜吹雪の中、ミリアナは力なく嗤う。
当たり前だ。
相手はミリアナから大切な人を奪った人間であると同時に、かつての学友だったのだから。
「ふぅ……落ち込んでばかりいられませんね。もうじき【退紅】も終わりますし」
手を頬に当て笑顔を無理矢理作ろうとするミリアナ。
ヒガン君に何かあったのか?と聞かれるのだけは避けなくては、という一心だった。
これ以上彼に何も背負わせたくない、ただそれだけだった。
まぁ、普通に彼に会うときは笑顔でいたいという思いもあるが。
世界を覆っていた桜吹雪が突然晴れる。
多少は桜の花弁が舞っているが視界は大きく広がった。
「終わりましたね……………」
辺りにあった建物はすべて更地と化し、桜色に覆われた物もなくなった。
「ありゃ………明らかにやり過ぎましたね………ヒガン君に何て言い訳しましょう………」
普段はヒガンに注意する側なのに人のことを言えないことに気付き焦るミリアナ。
許してくれるかしら?
「勝手に終わらせないでくれるかな?」
「――ッ!空ッ!」
高速の水の弾丸の雨がミリアナを襲う。
「あんたが強くなってるうちにぃ!あたし達も強くなってんのよぉぉ!」
「まぁ、さっきのは冷や冷やしたけどね?」
緑髪の少年はテッカに対しウィンクしながら言う。
二人は空を飛んでいた。
「その殺意ぃ!あたしは好きよぉぉ!」
「テッカ、相手は色付きなんだから気を付けなよ?」
赤髪の少女、テッカの背中からは赤く燃え盛る二対の羽を広げている。
対して、緑髪の少年は薄緑色の雲のような物に乗っている。
「当たり前じゃないぃ!こんな楽しいことぉぉ!……………」
「【天駆】!」
当たればひとたまりもない殺傷能力を持った豪雨を潜り抜け空を跳ぶミリアナ。
「もっと楽しみたいよねぇぇぇ!!」
テッカは右腕を上に大きく掲げ、振り下ろすと同時に魔法を発動させる。
「超級魔法ぉ!【禍煉】!」
禍々しい紫炎が渦を巻き、ミリアナ墜とされる。
「――くっ!」
奥義を使った疲労と【天駆】を使って精密に水の弾丸を避けている影響で身体が上手く動かせない。
「さっきまで追い詰めていたのにねぇぇ!」
「【椿】っ!」
ギリギリで耀刀で自分の範囲のみ斬ることができた。
「やる、しか…………ないですね……」
再び覚悟を決めるミリアナ。
「そうでなくっちゃぁ!もっともっともっとぉ!遊ぼうねぇ!」
テッカは狂気に染まった顔で大きく笑い、続ける。
「まだまだぁ………イケるよねぇ?」
桜色の空の中、赤く燃え盛る二対の羽を広げた少女と天駆ける少女が激突した。
一方、ヒガンはというと―――
「やべっ。高く飛びすぎた」
遥か上空にて―――
迷っていた。
クラウン「マオちゃん、マオちゃん。おいで」
マオちゃん「どうかしたのか?」
クラウン「今日からまた旅に出るんだけどね?お土産で欲しいのはないかい?お仕事頑張ってるみたいだしね」
マオちゃん「ふむ、ならば――――」
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