第五十五話 電気と魔力は身体に通して間違いはない
近況ノートの更新をしてみます。
「放せよ!このままだと師匠が死んじゃうだろ!」
悲痛そうに叫ぶヤヨイ。
「少しはお前の師匠を信じてやれ!」
今は生きていることを信じるしかない。
三人でやっとなのに、一人となると厳しいだろうが。
「それよりもヤヨイ!サツキの場所は分かるのか!?」
俺には、なんとなくは分かるが正確には分からない。
「えっ……ここを右に行って!」
「おう!」
獣人族のヤヨイは鼻が利く。
というか感覚が俺とは違う。
俺と違う世界を見ているのだろう。
指示通りにしばらく進むと広い道に出た。
脇の建物は火の手が上がっている。
「サツキ!」
道の真ん中にサツキがうずくまり、その横に教祖が立っていた。
「ちっ、早いじゃないか。あのオタクを置いてきたか?」
「姉貴を放せ!糞野郎!」
ヤヨイは飛び上がり、接近する。
「邪魔だ、獣人族の少年」
「ぐはっ!」
蹴り返され血を吐くヤヨイ。
俺は吹き飛ぶヤヨイを受け止めた。
「アイツは教祖だ。舐めてると死ぬぞ」
俺は忠告する。
「お前か……………よくもエホウをやってくれたな」
教祖の目に殺意が籠る。
その視線は俺の瞳を貫いた。
「この酢剣『ガリブレード』の錆にしてやろう」
言うや否やサツキをこちらに蹴飛ばし斬りかかる教祖。
「ヤヨイ、一旦サツキを持って下がれ!」
俺は白い剣で受け止め片膝を付く。
「【柳】」
受け流しをして少し後退した。
「忌々しい!実に忌々しい!」
蒼い海月と魚が現れ、空を舞う。
「闘銃『豆汁』!」
黒い汁が左手に持つ銃から放たれた。
避け損ね、少し掠る。
「イッ!」
ジュワリと音が鳴る。
掠ったところを見ると少し爛れていた。
「ああああああああああああああ!」
教祖は軽く身体を反り、叫ぶ。
「なぜ!なぜっ!私は君をあの時すぐに寿司にしなかったのだ!そうしていればきっと、エホウは、奴は死ななかった!」
教祖の目の焦点がブレる。
顔は怒りに歪み、それに呼応して空の蒼い魚たちは激しく泳ぎだした。
『いいねぇ!その調子だよ!』
教祖の後ろからそんな声が聞こえた気がした。
幻聴かな、怖いんだけど。
「ここで必ず君を寿司にする!」
「っ!」
俺は【加速】を発動し、【雷撃】を自分に打ち込んだ。
これはやりたくなかった魔法の使い方。
リンネさんがミスったら死ぬわよ、と言っていた。
一時的に自身の身体能力を底上げする裏技だ。
魔法が切れれば動けないし、現在進行形で身体じゅうめちゃくちゃ痛い。
だが、代償に見合うぐらい世界が遅くなっていく。
「【天駆】」
空中で【天駆】を重ね、高速移動する。
今の俺でも、三、四個しか重ねられないけど、それでも速い。
「【椿】!」
「速くなったところで私には届かない!」
俺の白い剣と教祖の黄色い剣がぶつかり合う。
赤い火花が散った。
地味に酸っぱい匂いがする。
縦、横、斜め、様々な角度から切り込むもすべて防がれる。
全部酸っぱい匂いがする気がする。
「【三枚おろし】!」
「【大トロ】!」
マグロ怪人の上位互換みたいな技で防がれる。
やっぱり、酸っぱい匂いがするんだけど?
この状況は不味い。
このままだと時間切れが来る。
「リクさん!受け取ってください!【ラブコール】!」
ピンク色のハートが俺に当たり、ハートマークが溢れる。
「ん!?あの少女、厄介そうだな」
力が増したことにより、顔を歪めた。
ここから戦いは激しさを増していく。
シャクセン「ここであったが百年!リベンジさせてもらおうやないか!イカ野郎!」
クラーケン『ン?ウオォォォォ!』
シャクセン「ちょっ、待て!こっちくんなや!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回、シャクセンは……………。
読者の想像にお任せします。
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