第四十四話 夢枕 ※クロキ視点
最近、『推し』に関する論文を見つけたのでリンク貼っておきます。
https://www.humanservices.jp/wp/wp-content/uploads/magazine/vol38/27.pdf
最後の歌は必見です。
長く書けて嬉しい。
荒廃した大地で黒いドレスを着た女性が口を開く。
『いつか私を殺してね』
風で紅髪が揺れる。
見開かれた紅の眼がこちらを貫く。
口元には笑みが浮かんでいた。
私が何かを言おうとすると、突然世界が高速で回転して場面が入れ替わる。
今度はもじゃもじゃとした髪の少年が紫色のスカーフを巻き直しながら言った。
『俺、クロキを料理でまた笑顔にするから!』
その光る茶色めの黒の目から軽く言ったのではないと分かる。
今よりも元気ではきはきしていたな、こいつ。
今はあんな体たらくだが。
再び世界が回転する。
「ふむ、これは私の夢なのか…………?」
どうやらこれらは私の過去の記憶のようだ。
世界の入れ替わりが終わる。
『ワオォォォォォォォォン』
咆哮が深い森の中を響く。
大きな白狼が赤い目をぎらつかせ獲物を見つめた。
従者らしき男たちが赤い水溜りに倒れている。
ただ、金髪の双子の少女は身を寄せ合い、目の前の脅威に怯えていた。
『ウチ、まだ死にたくない!』
『お母様。私たちはいらない子だったの…………?』
白狼は飛び上がり彼女らの首元を嚙みちぎろうとした。
覚えている。
この時はたしか…………。
もしもの時に備えて私は手刀を構えたが、灰色の輝きが通り過ぎた。
『【大椿】』
もう一人の『私』は白狼を切り裂くと、いまだ怯える少女らに言った。
『すまない』
『私』は広がっていく血だまりを見下ろしていた。
世界が回る。
「私を俯瞰して見るのは違和感があるな」
鏡を覗くのとは訳が違う。
底知れぬ何かがそこにあった。
場面はギルドの地下に変わる。
私はただ地面に這いつくばるボロボロの茶髪の少年を見下ろしていた。
少年が最後に呟く。
『化け物が……』
ふむ、これは最近のことだ。
面と向かって『化け物』なんて呼ばれて少し気まずくなってしまった。
私はそれから会ってない。
世界が灰色に塗りつぶされていく。
感覚的にこれが最後だろう。
『ねぇねぇ、貴方の好きな花は何?』
これは…………
『ねぇ。教えてよ、黒輝君』
彼女を掴もうと手を伸ばすが通り抜ける。
『え?私?』
もうじき目が覚める。
まだ少しだけ待ってくれ。
『私の好きな花。それはね…………』
視界が白に包まれた。
ぼやける目に入ったのは女性的に膨らんだ紅い服だった。
「起きちゃった?クロキ?」
リンネが上から覗き込む。
「む?私はなぜ貴様に膝枕されている?」
私は馬車の壁にもたれかかっていたはずだ。
「だって寝てるクロキが可愛くてつい………………じゃなくて!違う!違うの!もちろん可愛くないわけじゃないけど!違うの!」
何が違うんだ?
そ、それよりも、とリンネは続ける。
「泣いていたけど大丈夫かしら?」
「泣いていた?」
この私が?
「ええ」
心配そうにリンネは私の頭を撫でる。
それがいいことなのか悪いことなのか、夢の内容は全く覚えていない。
「悪いがもう少しこのままでいいか?」
段々と眠たくなってきた。
「え?」
「嫌か?」
このまま寝てしましたい。
「むしろ褒美です!」
何を言ってるかもう聞こえない。
私は目を瞑った。
(尊いよぉ!可愛いよぉ!ぐへっ!………………………………は!危うく尊死しそうだった…………!)
リンネはそれからしばらくの間、動かないように悶え続けた。
クラウン「存在が忘れれている気がする?」
ガンツ「ワシもじゃ。なんか嫌な感覚じゃのう」
マオちゃん「吾輩もじゃ。何でじゃろうな?」
クラウン「さぁ?」
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