第四十二話 酢剣『ガリブレード』
シュールストレミングって火を付けたら爆発するそうですよ。
やってみたいです。
「ぐはぁ!」
俺の斬撃がマグロの怪人に当たり吹き飛ぶ。
「終わりだ!」
俺が止めを刺そうと接近し、剣を横薙ぎに振る。
「【椿】!」
過去、クロキさんが使ってた技の劣化版だ。
斬撃は美しい弧を描き…………
「君、あまり調子に乗るなよ」
「―――ッ!」
突然【加速】と【ラブコール】のバフが掛かった俺の斬撃が止められる。
それの成したのは黒い修道服に琥珀の首飾りをし、手には濁った黄色い剣を持つ黒髪の男だった。
修道服の男はマグロの怪人に優しく語り掛けた。
「ブルーフィン、君は寿司になるにはまだ早い。我らの悲願を達成するまでは待て」
「きょ、教祖様!?」
教祖!?
教祖と呼ばれた男はこちらを向いて言った。
「あぁ!少年、私は君を今すぐ寿司にしてしてしまいたい!だが生憎、我が幹部の鮮度が落ちてしまった。よって今回は見逃してやる。寿司と共にあらことを」
「寿司と共にあらんことを!」
寿司を握るポーズを決める。
そのまま二人はどこかに行ってしまった。
深追いはしない。
他にも幹部が居ればヤバいからだ。
「大丈夫ですか!リクさん!」
「怪我はないでござるか?」
サツキと眼鏡が走ってこっちに来る。
すまん眼鏡、お前名前なんだっけ?
「すいません。お店を全然守れませんでした」
先の戦闘で店は大きく半壊し、見るも無惨な状態だった。
「いいんです!命が無事ならやっていけます!」
「残念でござるがサツキ様が生きているならオールオーケーござる!」
横目で見てたけどコイツ、身を張ってサツキを守ってたんだよな。
案外すごい奴なのかもしれない。
「それで、シースー教って何なんですか?」
めっちゃ強かったぞ。
「この町の寿司店以外を消し、逆らうものは寿司にする恐ろしい集団です」
なんて横暴な。
「ここ、寿司店にしないんですか?」
サツキは首を振る。
「ここは先々代から受け継いできた由緒ある店なんです。半分壊されてしまいましだが」
メイド喫茶が由緒ある店ってなんか嫌。
「そしてこのマリトッツォでは本来、フェリスファミリアというマフィアが仕切っていました。でも国の方針で解体されたんです」
怖っ。
『マフィアもニッコリ』ってそういう意味だったんだ。
「その隙にシースー教が裏で暗躍しこの町を乗っ取ってしまったんです」
この町の警備隊よりもマフィアの方が強いのな。
「拙者も元は組織の一員だったでござるよ」
そう言って少女の描かれたシャツをめくる。
右横腹に小さく猫の刺青がしてあった。
「マフィア!?」
「元でござる。今は真面目に働いてるでござるよ」
そう言ってオタッキーな男は笑った。
シャクセン「一人で帰んのだるいわ」
自分以外誰も乗っていない馬鹿でかい船の上でそう呟いたのだった。
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