第四十一話 マグロ装備は大体強い
千字に五字足りなかった。
ちょっと悔しい。
俺はすぐに店に乱入してきた男を見る。
「今度は逃がさねぇぞ」
男は屈強な筋肉を誇っており、手には黒く太い魚を持っていた。
「俺はシースー教最高幹部の一人、ブルーフィン。この黒剣『ツナソード』で切り刻んでやる。覚悟しな」
ブルーフィンと名乗った男は魚を掲げ、振り下ろした。
「なっ!」
爆音と共に衝撃が伝わる。
俺はぎりぎり防御魔法を展開し、サツキと眼鏡野郎を守る。
「ほう?少しはやるようだな」
「食事中に戦闘なんて趣味が悪いですね。マナーぐらい守ったらどうです?」
俺の皿、吹き飛んだんだけど。
「ハハッ!面白れぇ!お前もシースー教に入らないか?」
青色のタトゥーの入った鬼っぽいことを言うブルーフィン。
なんとなくだよ?
「丁重にお断りするよ!」
リラとガンツからもらった白く美しい剣を抜き、切り込む。
「なら寿司になれ!」
そっちの方が意味わからん。
「それもッ、嫌だね!」
黒く太い魚で斬撃が受け止められる。
なに?この魚クッソ硬いんだけど。
それから俺は男と何度も斬り合いをする。
奴が右に魚を振れば風圧が現れ、下に振り下ろせば地面に穴が開く。
コイツ、パワーがありすぎる。
あ!
魚の剣だったらこれでいいじゃん。
「【三枚おろし】!」
「【中トロ】ぉ!」
俺の白い斬撃と男の黒い斬撃が交錯する。
「ぐはっ!」
俺はブルーフィンとの激しい鍔切りあいを制し、深い一撃を当てる。
案の定、タカナシさん直伝の捌き方はうまく入ったようだ。
大男は一瞬よろめいた。
そして出来た隙に俺は何度も何度も切刻んでいく。
「いてぇなぁ!おい!」
だが身体に見合わぬスピードで後方に下がり男は構えなおした。
「お遊びはここまでだ!俺の真の姿を見るがいい!」
男を眩い光が包む。
「俺はマグロを愛し、マグロになる!」
現れたのは大きなマグロに屈強な腕と足の生えた怪物だった。
黒光りする魚独特のフォルム。
目はギョロリとし、手足は太く、相変わらず黒い魚を握っていた。
俺の脳裏に浮かぶのは『キモキモアイランド』で過ごした日々。
クロキさん、こういう時のための試練だったですね。
「寿司の前にひれ伏せ!」
「だから嫌だって言ってんだろ!」
再び接近し戦闘が始まる。
俺はさっきの間に【加速】を発動したにも関わらず、さっきと同じ結果になっていた。
速くなって更に力もアップしている?
「くっ!」
このままだとジリ貧だ。
というか体力はたぶん向こうの方が多い。
「リクさん!受け取ってください!【ラブコール】」
入口の近くに俺たちがいるせいで出られないサツキから謎の大きなハートが飛び出し俺に当たる。
すると俺の周りに多量のハートマークが現れ、俺に力が溢れる。
これならいける!
「なんだそれは!忌々しい!」
突然更に早くなった俺にマグロの怪物は問う。
「これが、〝愛″の力だ!」
俺は全力で剣を振り下ろした。
リル「なんだかマグロが食べたいです」
リラ「何で急に~?」
リル「なんとなくです。他意はありません」
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