第四十話 お金はかければかけるほど愛の証明になる?
キャウーンとアイドルの間に『!』を入れるかいつも迷います。
「はい♥猫耳キャウーンアイドルです♡」
メイド喫茶にアイドルって、意味が分からない。
「それではご注文はお決まりでしょうか?ご主人様♡」
てかご主人様、ご主人様ってこそばゆい。
「じゃ、じゃあ。みぃとソースで」
「拙者はクマたんばーぐとチェキチェキ50枚でお願いしますぞ!」
チェキチェキってたしか天才錬金術師、ワタ=シテンサイが発明したキャメラの劣化版だった気がする。
回数制限があるがキャメラより安価みたいな。
てか50枚ってそんなにいるか?
「かしこまりました♥みぃとソース、クマたんバーグ、チェキチェキ50枚ですね♡少々お待ちください♥」
サツキはそのまま奥に行ってしまった。
「おい、眼鏡野郎。なんかこの店高くないか?」
小声で俺は可愛い少女の絵柄の描かれたシャツを着た男に俺は聞く。
さっきメニュー見たら相場の二、三倍の値段なんだが?
更によく見たらチェキチェキ50枚って金貨三枚ぐらいの値段なんだが?
節約すれば十日分ぐらいの食費だぞ、それ。
「そ、そんなことはないですぞ!リク殿!むしろ愛情がこもっていると考えるともっと出してよいでござるよ!そもそも、拙者らに萌えを提供してくれるサツキ様は神!神ですぞ!」
唾飛んでるんだけど…………。
「あっそ」
もういいや。
次来ないだろうし。
どうせならこういうものとして楽しむか。
数分後、サツキが料理をもってこっちに来る。
「お料理出来ました♥ご主人様♡」
あざと可愛いポーズを決めて置いていく。
だいぶ計算されてるな。
「それでは愛情を注入しますね」
「は?」
愛情って後で注入するものなの?
タカナシさんが料理は作っているときに相手のことを考えるといいよ、とは言ってたけどさ?
「ラブラブ~ギュッ♥」
手でハートを作り、ダンスのように動かしながら‶愛情″を注入した。
動きが恐ろしいほど洗練されている。
胡散臭くても可愛らしく見えるために努力をしてきたのが分かる動きだ。
〝愛情″か…………。
「凄いな…………」
「え?」
驚いたようにこちらを見るサツキ。
「いや、努力してきたのが見えて感動しただけだよ。頑張ったんだなってさ」
俺には出来なかった、いや足りなかったものだ。
「であろう!拙者はこの店の会員番号No.3。頑張ってのはずっと見てきたのでござるよ!」
眼鏡野郎は胸を張って笑う。
ちょっとキモイ。
「あ、ありがとうございます」
下を向いて顔を隠す。
だが頬が赤くなり、猫耳がピクピクしていた。
俺はそれを横目にいい匂いのする、みぃとソースを口に含む。
「あれっ?美味しい…………」
なんだろう?
タカナシさんの超絶技巧の料理とは違うベクトルの美味しさだ。
これも〝愛情″の成せる業なのかもしれない。
「なぁ、何でこの店は人がいないんだ?」
値段が高くちょっと人を選ぶが、ここは料理が美味しく可愛らしいメイドがいるいい店だ。
ここまで人がいないのはおかしい。
サツキはしょぼんとして耳を垂れ、困ったように言う。
「最近、皆さんはシースー教の審問を恐れているんです…………」
「シースー教?」
なんか聞いたことがある気がする。
「はい。彼等は寿司を愛し、世界のすべてを寿司に変えようと企む恐ろしい集団ですなんです」
「拙者は何とか逃げることができたでござるが、他の同志は反抗して寿司にされたでござるよ……」
怖っ!
人を寿司に変えるって何だよ!
「そして今、彼等は―――
サツキが言葉を紡ごうとしたちょうどその時。
「てめぇら、まだ寿司以外を売ってやがったのか!今度こそ審問にかけてやる!」
荒っぽい男の怒声が店内に響いた。
リクの周りには本職のメイドがいたので本気で違和感を感じてます。
リクの中でメイドは家事、荷物運び、掃除などをする人なのであんなに猫撫で声のメイドは見たことがありません。
ずっと頭の中が『?』です。
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