第三十三話 最近の魔王は美少女率が高い
長く書けて嬉しい。
クロキとノア、ついでにアイリーンの前にあるのは仰々しい大きな扉だった。
「ねぇ、クロ!じゃんけんでどっちが開けるか決めよ!」
元気に言うノア。
魔王が奥にいるのに普通そんなことはしない…………
「よかろう。貴様に敗北を教えてやる」
だが、相手はクロキだった。
「言ってられるのも今の内だよ!お覚悟ぉ!」
(この人たち何なの!?魔王様たぶん聞こえてますよ!?)
アイリーンは内心逃げたくて堪らなかった。
「くっ、負けたぁ~!」
「ふはは!当然の帰結だ!」
普段、ギルドの中では見せない子供っぽい姿だった。
「むき~!次は勝つからね!」
「ふっ、好きに言ってろ」
「ふんっ!」
ノアは身長の何倍もある扉の前に立つと周りの空気が突如黒く染まる。
「た~~の~も~!」
少し助走をつけて扉を蹴飛ばした。
蝶番が壊れ、扉がそのまま直線的に飛んで行った。
「ぐはっ!」
そしてなにかが潰れた音がした。
「あれ~?魔王は~?」
「あそこだ。よく見ろ」
クロキが赤く染まった玉座を指さした。
扉が刺さっているようだ。
「魔王様!?」
アイリーンが叫ぶ。
「ぷはっ!死ぬかと思ったぞ!」
扉が上に大きく飛ばされ、紫の髪の愛らしい少女が現れる。
かっこよく決めたつもりなのだろうが、頭からたくさんの血が出ていた。
「魔王様、大丈夫ですか!?」
アイリーンが大急ぎで駆け寄る。
「うむ、大丈夫である!」
フラフラしながら言った。
「連れが失礼した。【ウルトラオーバーヒール】【浄化】」
光が魔王を包むと一瞬で傷が癒え、服の汚れもなくなってしまった。
「す、凄い…………」
(てっきり接近戦が得意なタイプかと思いましたが超級魔法と上位魔法を同時に詠唱なしで扱うなんて!末恐ろしい!)
「ま、全くじゃ!」
魔王も少しビビっていた。
上級魔法はともかく超級魔法は普通、詠唱破棄はできないのだ。
それにさっきの扉の飛んでくる速度が速すぎて避け損ねている。
防御魔法が遅れていれば致命傷を負っていた自覚があった。
「………アイリーン、あちらの者たちは?」
少し小声で尋ねる魔王。
「『色持ち』の灰と黒です」
「『色持ち』ッ!」
魔王は侵入者をそれこそ穴のあくほど見つめた。
一方は黒スーツに身を包んだ眼の灰色のイケメン。
もう一方は黒くて可愛らしい服に頭には王冠が載っている幼げな少女。
そして少女は黒い何かを纏っていた。
事前に確認した情報とほとんど一致する。
「ノア、早く謝りなさい」
「え~。嫌だよぉ!あんなの避けれない方が悪いと思うよ!」
(避けれるわけないじゃろ!めっちゃ速かったぞ!)
(私だったら即死だったかも………)
魔王と四天王は逃げたくなった。
クロキはごねるノアの頭を掴んで謝らせ、ここに来た経緯を説明した。
「な、なるほど……世界の脅威に私たちがなるかどうか見に来たのですね」
アイリーンが形は納得する。
「う、うむ。そ、それでどうじゃったのじゃ?」
((まじ、ここで脅威認定されたら消される!))
「まぁ、ボクとしてはそこまで脅威じゃないかなぁ」
つまらなそうにノアは言った。
「そうか……」
「ほっ…………」
(そう言われると地味にイラつくが助かった―――)
そう思うのも束の間。
「しかし、私は十分に脅威に値すると評価する」
クロキは静かに告げた。
「なっ!」
「じゃあ、ボクもそうする!」
((終わった……))
二人は本当に泣き出したかった。
リク「あれ?クロキさんはどこに行ったんですか?」
リル「ノアさんとデートに行きました…………」
リク(通りでなんか殺気立ってると思った……)
リンネ「ノアね…………次会ったら殺そうかしら?」
リル「あっ」(言うなって言われたんだった…………)
リク(怖っ!てか部屋の温度上がった?)
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