第三十一話 デートスポット『魔王城前』
星が欲しいって駄洒落みたいですね。
と言ったら静かになりました。
楽しかったです。
クロキは音速を超えた飛行でノアに指定された魔王城へ向かう。
【天駆】を幾重にも重ね、恐ろしい速度を出していた。
更に魔力で障壁を張り、空気抵抗を減らす。
クロキは飛行工学を独学で理解していた。
景色が荒廃していく。
魔大陸に着いたのだ。
「あそこか…………」
デートの待ち合わせ場所に着地する。
デートスポット『魔王城前』である。
…………なんか誰も来なさそうだ。
「ふむ、先に着いたようだな」
クロキは呟いた。
大陸を超えた移動なので、どんなに早くても一か月かかる距離であったのに小一時間で到着したクロキが異常なだけだ。
「クロ、待った?」
だが、もう一人も異常者である。
闇から黒髪の少女が飛び出した。
「ふん、今来たところだ」
正直五分ぐらいの差しかない。
「なんだかデートみたいだね♪」
「実質デートだろう?」
「ねぇ、それだったら、まず言うことがあるんじゃないかなぁ?」
期待したように上目遣いで言う。
「分かった」
クロキは答えると微笑む。
そしてどす黒い灰色のオーラが少し溢れた。
「次手紙に魔法を仕組んだら殺す」
「ひぃっ!」
ノアから冷や汗がドバドバ流れる。
「ふん、冗談だ。今日も可愛いな、ノア」
オーラを引っ込めた。
「ビ、ビックリしたぁ…………ふふ、それにしても『今日も』って言うとこがポイント高いよ!」
ノアは黒く可愛らしい服を着ており、頭には黒い小さな王冠が載っている。
普通に可愛い。
クロキは事実はちゃんと言うのだ。
「では、魔王城を攻略しようか」
「お~!」
厄災が魔王の城の目の前に迫っていた。
門の前まで歩いていくと鎧を着こんだ者が槍を持ってクロスさせる。
「貴殿ら、ここは魔王のおわす場所である!去れ!」
門番が当然の仕事をする。
「あ゛?」
ノアから黒いオーラが放たれる。
「ぴぃぃっ!え、えっと。わ、私は門番なので許可が無ければ入れることはできませんっ!」
恐怖で敬語になった。
逃げ出さなかったことを褒めてあげたい。
「私たちに去れって言ってるの?正気ぃ?」
門番は正気だと思う。
「許可は取っていないが魔王と謁見を行いたい。伝えてくれるか、門番殿?」
しかし、クロキも異常であることは理解していた。
「い、いやしかし、私には仕事が…………」
「私たちが下手に出てるのに断るの?」
ノアの真っ黒な瞳が門番を睨みつける。
「―――ッ!」
「ちょっと黙れ、ノア」
「は~い」
大人しく引き下がるノア。
「では、『灰の処刑人』と『黒の咎人』が来たと伝えろ」
「い、『色持ち』様でしたかッ!」
門番は飛び上がると奥に引っ込んで行った。
「いいか、ノア。交渉は情報を小出しにするとうまくいくことがある。覚えておけ」
「うん、分かったよ!」
悠然と二人は門をくぐった。
シャクセン「今なんか上通ったか?」
部下「そうすか?」
シャクセン「いや、気のせいならいいねん……」
部下「クロキさんだったりして!」
シャクセン「んな、アホな!」
部下「ハハハハハ!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字等あれば報告ください。
コメントがあると嬉しくなります。