第十九話 知らない方がいいこともある
サクサクする!
翌朝、俺はタカナシさんの厨房に赴いていた。
ちなみに昨夜の夕飯は今まで食べた中で一番美味しかったです。
流石『神選料理人』。
「ふぁ~あ。おはようリク君」
タカナシさんは手を洗っている。
「おっ、エプロン着てくれたんだ。ちなみにそれ、クロキが送ってきたやつだから感謝しなよ」
「え?」
初めて知った。
めっちゃぴったりだったんだけど……。
クロキさん、俺の身体のサイズとか興味なさそうなのに……。
紫色のエプロンを着たタカナシさんはデカいロールパンを奥から取ってきた。
「これ、何か分かるよね」
これは昨日戦ったキモキモロール!
「昨日の奴はちょっとやり過ぎたけど、うまくやるとこうなる」
パン切り包丁でサクサク切っていく。
あの緑の血が出るんじゃ……。
だが、断面を見てもパン特有の気泡が空いているだけで惨事にはならなかった。
「すべての生物には適切な調理方法が存在する。それを探るのも俺たち料理人の仕事さ」
唖然とする俺を横目で見て、二人前に切ってトースターにセットした。
そして、火元に近づくとカラフルな卵を取り出した。
「これはメキモの卵。昨日の夕飯にも使ったよ」
メキモって、卵産むんだ。
「あれ?もしかして昨日の夕飯って、全部この島の生物だったんですか?」
「うん、よく気付いたね。昨日の夕飯はすべて『キモキモアイランド』産の素材を使ってるよ。美味しかったでしょ?」
いつか食べることになるのは分かってたけど、覚悟をする時間は欲しかった。
なんか気分が悪くなってきた。
「君にはこれからいろいろ教えていくつもりだけど、それはサバイバルや生きていく上でも役立つはずだからね」
これがしばらく続くのか……。
シャクセンさんの一日でギブったの意味が分かった気がした。
ちなみに朝ご飯は美味しかったです。
???『僕はこの島から出られないのかぁ?』
『不可能ではないはず……』
『抜け道を探せ!』
『革新的な方法は……』
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