第十八話 引きこもりの言い分
わくわくする。
「君も気づいたと思うけど、この島はおかしい。どれくらいおかしいかというと、クロキの存在ぐらいおかしい」
この人さっきからクロキさんを何だと思ってるんだろ?
「あの、小声で話した方がいいと思いますよ。クロキさんがこの島のことは手に取るように分かる、って言ってましたし」
「え、まじ?」
「マジです」
もじゃもじゃしているくせ毛をわしゃわしゃして言う。
「まぁ、あの人なんだかんだ言っても寛容的だし大丈夫かな」
クロキさんが寛容的って意味が分からない。
小国から侮辱の手紙が送られてきたのを確認して二日で滅ぼしに行った人だぞ?
俺には手紙の内容は教えてくれなかったけど。
「そんなことはともかく、俺は『キモキモアイランド』はおかしいってことを言いたいの」
「は、はぁ……」
分かり切ったことを言われた俺は困惑する。
「季節気候関係なくすべての野菜とフルーツが取れて、君は信じられないだろうけど、この島のモンスターは目茶苦茶美味しい!」
あのキモいのが?
顔面犬ムキムキ男とかメキモとか食べるの想像するのも嫌なんだけど。
「普通の肉や素材では出すことの出来ないコクと味……!さらに言えば多くの魔力を含んでいるから特殊効果も素晴らしいんだ!」
料理食べて特殊効果出る、ってそれ料理じゃ無くね。
また別の何かでは?
「肉体の構造の強化や魔力回路の拡張、さらには再生力も高めることもできるんだよ!実に素晴らしい環境だ!」
恍惚とした表情で話し続けるタカナシさん。
なんかデジャブを感じる……。
「まぁ、それでも今のところ、クロキの持病を治す料理は作れてないけどね」
タカナシさんはそう言うと、ちょっと残念そうな顔をした。
「クロキさんの持病ですか!?」
クロキさんって実は病弱だったりするのだろうか?
まぁね、とタカナシさんは続ける。
「分かると思うけど、クロキはすっごい無表情で高圧的でしょ。過去にいろいろあったからだからだけど……。うん、もうあれね。持病でいいと思う」
この人、クロキさんをどう思ってるんだよ!(三回目)
「俺がギルド入ったときはそこまでだったんだよ?というかむしろ、よく笑ってたなぁ。俺の料理が美味しいってさ」
懐かしいものを思い出すように笑う。
「俺はもともと、何とかしてクロキにまた自然に笑ってほしくてこの島で研究を始めたんだ」
時間の無駄だったけどね。
そう聞こえた気がした。
タカナシさんはパン、と手を叩いた。
「そうそう、君の試練の内容だったね。君の試練はこの『キモキモアイランド』で俺に師事して料理の訓練をしてもらう」
少し焦げた彫りの深い顔がさらに彫りを深くした。
???『あ゛あ゛あ゛。暇だなぁ』
『誰か来ないかなぁ』
『遊びたいよぉ』
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