第十七話 空を飛ぶ人
「あ、改めて自己紹介します。タカナシと申します」
オーラが消えた瞬間、おどおどした調子になってしまった。
もしかして二重人格?
それでもクロキさんの言ってた引きこもりニートには見えない。
「初めまして、俺の名前はリクといいます。さっきは危ないところを助けていただきありがとうございます」
タカナシさんは俺のへりくだった様子を見て目を丸くした。
「クロキとずっといたのに尊大じゃない……」
助けられて尊大になる奴なんているか?
てか、この人クロキさんのことどう思ってるんだ。
「クロキさんといるからといって尊大になるわけじゃないですよ?」
「いや、でも……」
ちょっと考え込むタカナシさん。
「まぁ、そこは人によって違うか……」
すぐに結論を下し、さっきから上空を指さして言う。
「あそこが俺の家。ドンパチやってたから音で気づいたよ」
「うわっ!」
俺は突然タカナシさんに抱きかかえられた。
「君は空飛べないでしょ。俺が連れってあげるよ」
そう言って軽く笑う。
地面を蹴って大きく跳ぶとある程度の高度まで行った。
これでも驚きなのだが、更にタカナシさんは空中で跳んだ。
これを繰り返して一分ほどで空島の上に行ってしまった。
俺を降ろして言う。
「ここが俺の家だよ」
「あ、あの今の何ですか?」
空中で跳ぶってなんだよ。跳ぶって。
「え、見たことない?クロキお気に入りのスキルなんだだけど……」
そういえば、クロキさんは空中でよく方向転換してたけど原理これなんだ……。
初めて知った。
「まぁ、使えるようになれるといいね」
「はい!」
「それじゃあ、試練の内容を説明するよ」
家の庭にある白いガーデンチェアーに座って言った。
「けど、その前に君も座りなよ」
俺はこの島に上陸してから初めてまともな存在を見た気がした。
リンネ「ヤバいわ。想像以上にヤバいわ」
クロキ「どうした?いつも以上にうるさいぞ」
リンネ「し、締め切りが大変なのよ……」
クロキ「ふん、何があるか言ってみろ」
リンネ「魔法協会に提出する論文と商会に提出する同人誌と王族に売りつけた苦い薬よ!」
クロキ「相変わらずなようだな」
リンネ「お願い。手伝って!って行かないでよ~!」
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