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天の城の魔女ティアナ、東京で助産師になる。~「嫁になれ」お迎えにきたのは悪役聖女の騎士でした~  作者: 高瀬さくら
3章.――アレスティア暦2006年 アレスティア帰還

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87.ザイファン

 口笛を吹く。このカーシュをてこずらせた、そんな奴がいるのかと驚く。


 それから、ザイファンとは。


「墜落時、アレスティアを手にしようと攻めた現在フェッダの王」

「てことは、こいつも関係してくるってか?」

「だろう」

「はやくいえよ!」


 昔の上下関係なら言えなかった。今も指揮下に入れと言われているが、納得していない、そしてそうなったとしても、口調を改めるつもりはない。


 師団では、実力があれば礼節など求められない。もちろん任務を臨機応変にこなせる能力、独りよがりではなく作戦の成功率をあげる協力姿勢もその実力に入るが。


「まだ情報がない。が、そのうち入る」

「潜伏させてんのか」


 頷くカーシュに、ウィルは拳を握る。まただ、知らされていない。


「とりあえず、そいつ(ザイファン)からも狙われる、ということだな。けれどアンタはアレスティアの破壊。俺が受けたのはティアをグレイスランドに連れ帰ることだけ。異なるのは何でだ。もしくは俺に協力させる理由は?」


 各自に異なる命を出すこともある。要は最終目的が同じところに行き着けばいい、それぞれ別動隊の動きは知らせない。ただコイツがアレスティアに待機していて、途中で自分を参加させた理由がわからない。


 考えられるのは、カーシュが自分一人ではできないと判断したからか。


 それならばわかる。ただもしかしたら最初から東京からの転移が失敗して、アレスティアに来てしまうのがわかっていたのかもしれない。ムカつくけど、それも作戦なら仕方がない。


 自分はアレスティアの奴らを欺くための、囮だったのかと。


 だがそこに、ティアナを巻き込むとは思えなかった。それならば無事にティアナを戻し、自分だけをこっちに来させればよかった。癪に障るけど。


「俺も……また違う未来の一粒から来たといった」

「ああ」

「――俺は」


 影の中で何かを堪え、やり切れないという表情の奴が佇んでいた。言うまいとしているのか、言いたいのかわからない。


「何回かここを繰り返している。それでも――助けられない。未来は変わらない」

「ティアがアレスティアに奪われるってのか?」


 いや、違う。助けられないとカーシュは言った。『逝かせたくない』との言葉。アレスティアにとられるならそうは言わない。


 まさか、アレスティアと共に沈んでしまうのか。


 それなら、アレスティアを蘇らせずティアナを連れ戻すのが一番の方法だ。けれど、この国は諦めない。ならこその破壊か。



「……あんたの絶望はわかった」


 これは既にもう闇落ちの寸前。人生を何度もやり直したことはないけれど、繰り返しそれでも失敗するのならば、そうなるのも仕方ない。でも、それはカーシュだけのこと。


 カーシュのメンタルはどうでもいい。こっちに言わせりゃ、諦めたらティアナが死ぬってことだ。


 最初は、ティアよりリディアへの思い入れが強かった。当たり前だ。好きで好きでどうしようもなくて……。彼女は、自分の全てで、どうしても諦められなかった。


 でも手に入れられないとわかってたんだ。

 

 正直、目の前で結婚して幸せな家庭を築いている姿が見せつけられるのはしんどかった。

 だから国外の派遣を望んだ。ずっと飛び回っていた。


 だけど戻ってきたら、襲われて、死んだかもしれない、どこにも亡骸もない。この世界にいないなんて、受け入れられなかった。


(心の整理なんて、できるわけないだろ!)


 リディアを探す、その目的があれば辛さから忘れられた。手に入れられなかった苦しさも忘れて、彼女のことを真正面から考えられる理由になった。


 ティアナは、小さな女の子で、あっちで見かけたのは一回だけ。


 こっちで探すのはオマケ、リディアを探す手がかり程度だった。


 でも今は違う。ティアナを知ってしまった。関わり、大事な子になってしまった。


 あの子は、頼る大人がいなくてずっと一人で生きてきて、諦めて大人になって、人助けをすることで自分をたぶん慰めて独り立ちをした子。


 でもまだ間に合う。

 甘えさせてあげて、人に頼ることを覚えさせてあげられるギリギリの年齢だ。

 そうさせてから大人にしてやりたい、自分がリディアに助けられたのもあるけれど、あの子はそうしてやりたいと思わせる何かがある。


 ――女としてとかじゃなくて、惹かれている。


 だから何度も自分はトライする。正直、アレスティアもこの世界もどうでもいいんだ。


 リディアとティアが見つからない、あの時の焦燥に比べたら、何度もやり直すことなんて辛くない。むしろありがたい。


「アンタ、忘れてんじゃないの? 今回は俺がいるってこと」


 まあ、”俺達”だけど。実質俺しか動けねーし。

 カーシュは黙り、値踏みするような目を向けた。信用してねえな。でも、微かに口を引き結んだ。


「普通は任務、一回きり。失敗したら即、死。なのにやり直しできるなんて、ありがたいじゃん」


 そんなんじゃないだろう、カーシュほどの奴がやっても叶えられないなんて、想像できない。

 でも、だからこそ明るく言う。自分たちは師団だ、作戦遂行率ほぼ百パーの。


「俺は、お前の実力を認めている」

「教官かよ」

「そうじゃない。まだ力は眠っているだけ。目覚めさせろ」


 やっぱり教官かよ、って思うけど。その謎めいた言葉に真顔になってしまう。まだ自分に隠された力がある? まだ伸びしろがあるってか?


 それを見つけるのは自分だけだ。カーシュに聞いても仕方がない。


「なあ、さっきの。ザイファンは、アレスティアじゃなくてティアナを手に入れたかったのか?」


 何か引っかかったのはそこだ。奴の話し方だと、ティア単独を狙ったみたいだ。となると、アレスティアを堕としたというより、ティアが狙いか。


「ザイファンはそうだろう。だが、アレスティアを狙ったのはまた別の者。思惑が絡んだ結果だ」



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