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天の城の魔女ティアナ、東京で助産師になる。~「嫁になれ」お迎えにきたのは悪役聖女の騎士でした~  作者: 高瀬さくら
3章.――アレスティア暦2006年 アレスティア帰還

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56.魔法の違い

「もう一つ、魔法を控えて欲しいのは魔法の構成にあるの」


 そう言ってリュクスは指を鳴らした。


 とたんに、視界一面に金色が満ちる。扉を塞ぐように背を置いていたウィルが思わずそこから離れ、背筋を正し周りを見渡す。

 

 男二人が目を見張り、視線を巡らせる。

 カーシュも驚いている。彼はアレスティアの魔法には精通していない、全く違う魔法を使っているのだと、予想通りに思った。


「な、に……」

「これが、この国の魔法の根源。魔法士が魔法を紡ぐ際に使う女神の光脈」


 この世界は女神イリヤの大樹の中にある。


 その張り巡らせられた葉脈に流れる光脈。その中にある魔力の一本一本を掬いとりそれを経糸たていととして、そして自分の魔力を緯糸よこいととして、魔職のデザインを具現化したものが魔法だ。


 それを伝えても、ウィルは不思議そうに首を傾げている。


「今見せたのは、アレスティア墜落前。女神が健在だったころのイメージよ」


 そしてリュクスは指をもう一回鳴らした。とたんに世界が暗くなる。光脈は一切ない、ただ枯れ枝のようなものが所々見え隠れしている。


「冬の森、つーか呪いの森だな」

「光脈がないの。でもわずかな力があるからそれで魔法を織り上げようとしてもできる。でも、いつか女神が復活した時に大樹を傷つけておきたくないから、他の魔法士たちには一切女神の力を使わないように通告してあるの。一応、つかさだから」


 冬の間に、地面の上の木々を剪定してエネルギーを遣わせないようにするのと同じ。根は生きている、そして春になってまた芽吹いてくるように。


 アレスティア魔法の長として、主を通して呼び掛けてある。ただそれを皆が理解してくれているとは限らない。そうであってくれればいいと思う。


 ウィルが眉をしかめる。


「それじゃ、全然魔法は使えない?」

「自分の魔力だけで魔法を使える者もいるわ。系統が違う魔法もあるし。アレスティア魔法は最強だったけど、フェッダ国の言霊魔法は違う系統だし。私がこの間、雨を降らせたのは、精霊に頼んだ精霊魔法。ただし、精霊にはお願いしているだけで制御下にはないし、彼女たちは戦闘にむいていない」


 風のシルフィ、水のウンディーネ、土のノーム、火のサラマンダー、それぞれに“お願い”をして現象を起こしてもらっている。


 そしてウィルを見上げる。


「ウィルの魔法は、どういうもの?」

「水、木、火、土、金、風の六属性と自らの魔力で構成しつつ、誓願詞を唱えて捧げる」

「恐らく、精霊魔法が進化したのね。私たちの世界では、まだ魔法と呼ばれるほど彼らは制御下にない、あなたが今まで通りの魔法を使おうとしても聞いてくれないと思う」


 ウィルが考え込んで、なるほど、と頷いた。


「呼びかけにすごく弱いのはそういうわけか」


 そう言ってウィルは黙ったままで無表情のカーシュを見上げる。カーシュの方が若干背が高い、しかも彼は姿勢がいいから余計に上背があるように見える。ピンと張った背筋は、武道をやっていたかのよう。


「アンタは?」

「俺の魔法は、全く系統が違う。何の影響も受けない」

「はいはい。そうだと思ったよ」


 リュクスも、カーシュの魔法を見たけれど、いったいどこから何の力を得てどういう構成をしているのか“見え”なかった。何か強大なものを内側に秘めている、そんな感じ。それは清らかさよりも強大で恐ろしい存在のようなもの。


(むしろ邪悪なものを感じるのだけど)


 それを内側に飼っているなら、それを表に出さずに平然としている彼は何者なのだろう。


「ウィルも魔力が高いわね。何かが背後にいる感じだけど、今は見えない」


 フッとウィルはリュクスをのぞき込む。


「興味ある?」

「……ある。魔法に関しては。あなた個人に関してはない」


 ウィルが微妙そうに口をゆがめる。


「これだからクールビューティは。まあ、そこが、らしいっちゃらしいけど」

「で?」

「教えない」


 ウィルは企んだように笑って腰に手を当ててリュクスをのぞき込む。


「せいぜい気にしてろよ」


 リュクスは冷めた目でその反応を眺めたあと、まあいいかとそれを流す。


「え、気にしてくんないの?」

「あなたの魔法の根底にあるものだもの、聞かないわ。それより、その六属性が使えないと困るわよね」

「ま、魔法なしで実力行使でもなんとかなるけど。使っていいの?」


 年下のリュクスを侮るわけでもなく、好奇心旺盛に貪欲に求めてくる。その目には油断なく知識を求める色が宿っていた。


 こういう目の人間は、どんどん強くなる。そうやって吸収していって研鑽する。だから彼は強いのだろう。



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