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94話目【光筋教団ウルダ支部長イエーツ】

時刻は夕方

日が傾き気温が下がり始め、町の人々は肩を竦め背中を丸めている。

そんな中、道の中央をキメ顔で歩く少年が1人。

クルミパパの魔道義足見物を終え、光筋教団へと向かう松本である。


胸を張り、自信に満ちた足取りで中央広場の真中心へ歩いて行く。

誰もいない空間に手を上げアピールする松本を、周りの人達が不思議そうに見ている。



ふふ、俺はもう寒さに背を丸めたりしない。

見よ俺を、見よこの姿を! 今の俺は氷の精霊シヴァですら屈服させることは出来ない!



一体何が彼をそこまで自身満々にさせているのか?

モデル歩きの松本に注目して見よう。


数時間前に暖かい服を購入し、半袖短パン姿から長袖長ズボンになった。

確かに肌の露出が減ったのだが、今まで通りの質素な服、多少生地が厚くなった程度である。

とすれば、考えられるのは一緒に購入した靴か上着なのだが、

靴は素材が変わり丈が少し長くなった、風を通しにくくなり暖かそうだが他の服と同じ変化である。

残るは上着、今まで所持していなかった松本の新アイテムだ。


中央で立ち止まる松本。

髪をかき上げ、左手で上着の内側を見せる。

質素な上着の内側に短い毛が見える。


そう、『裏起毛』である。


例え、全身質素な服だろうとも。

例え、貝殻の財布が隙間風に吹かれようとも。

松本の自信は揺らがない、何故なら『裏起毛』があるから。



質素な裏起毛の上着、1ゴールド。

暖かい服2着分と暖かい靴を合わせた金額とほぼ同じだったが、買って正解だった!



「おーいマツモトー、そっちじゃないぞー!」

「すみませーん、すぐ行きまーす!」


バトーに呼ばれ自信に満ちた松本は走って行った。




北区にある、光筋教団トレーニングセンターを訪れた松本とバトー。

ポッポ村の子供達のために売店で魔法のプロテインを購入している。


「バトーさん、味はどうするんですか?」

「あるのはチョコ味、バナナ味、ココア味、肉味か…」

「肉味は駄目ですよ、拷問なんで」


魔法の粉(肉味)は光筋教団員も認める不味さなのだ。


「ははっ、言われなくても分かってるさ。

 モギ肉の後にこんなの飲んだら皆ガッカリするからな」

「暴動が起きますよ」

「甘いヤツがいいからチョコ味かココア味だな」

「2つ共買ったらどうですか? カップ付いてきますし」

「そうだな、すみません、魔法の粉のチョコ味とココア味をください」

「ありがとう御座います、合わせて1ゴールドになります」

「これで」


店員さんに1ゴールド渡すバトー。


「マツモトは何も買わないのか? 重力の魔石あるぞ」

「そうですねぇ」


貝殻を開けるとゴールド硬貨が2枚、ブロンズ硬貨が5枚。


「お金足りないですね…」

「そうか、減ったな…」


1時期15ゴールドを誇った松本の資産は、約2ゴールドまで減っていた。

 


なんでこんなに減ってるの!?

ポッポ村だと殆どお金使わないんですけどねぇぇぇ

これが都会で知った贅沢ってヤツぅぅぅ?



松本が今まで購入したのは、贅沢というより殆ど生活必需品だった。


「あ、バトーさんマツモト君、丁度良かった探しに行くところでしたよ!」

「「 ん? 」」


声の方向を見ると白いタンクトップに短パンのナナヤマが

左腕を胸の前で曲げ「ッハ!」っと、白い歯を見せて笑った。


「ナナヤマさん、どうされたんですか?」

「お2人の話をしたところ支部長が直接話を聞きたいらしくてですね」

「いいですよ、実際見て貰った方が早いですからね」

「ありがとう御座います! それではこちらに着替えて頂いて…」


無料体験の貸し出し用の服と靴を手渡すナナヤマ。


「あの、これは?」

「すみませんバトーさん、支部長は今トレーニング中でして、

 トレーニング室に入るには着替えて頂く必要がありまして…」



別にそのままでもいいのではなかろうか…

真面目だなナナヤマ



「分かりました、取りあえず着替えてきます」

「俺も借りていいですか? 一応」

「いいですとも! ではこちらを」

「ありがとう御座います」


ロッカー室で着替えた松本とバトー。


「「 着替えましたー 」」

「いいですね~似合ってますよ2人も、それでは行きましょう!」 

「「 はいー 」」


ナナヤマに連れられフリーウェイトコーナーにやって来た松本とバトー。

とんでもないマッチョがアームカール(ダンベルで腕を鍛えるトレーニング)している。

タンクトップ短パンで全身が薄く光っている。

他の利用者の姿は見当たらない。


「支部長、お2人をお連れしました!」

「ありがとうナナヤマ、後は私が話そう」

「ヤー!」


少し高い声で返事をしてナナヤマがさがって行った。


「初めまして、バトーさんとマツモト君でいいんだよね?」

「バトーです」

「松本です」

「私はイエーツだ、よろしく。ナナヤマから聞いたのだが…

 長らく行方知れずだった光の精霊レム様が現れ、そして君達2人は光魔法を習得しているそうだね」

「「 そうです 」」

「そしてバトーさんはブリッジ無しのベンチプレス

 (バーベルで胸を鍛えるトレーニング)で170キロを上げた…」

「「そうです」」

 


…その情報今いる?



「ナナヤマを疑う訳ではないのだが、にわかに信じられなくてね」

「「 分かります 」」

「そうだろう、なにせ80キロからスタートして170キロを上げたそうじゃないか、

 そうなると筋肉の疲労が無ければ180キロも上がる可能性が高い…」

「「…はぁ」」



そっちかよ! 光魔法は?



「そうなるとブリッジをマスターすれば200キロも可能だろう。 逸材だ!」

「あの光魔法の話を…」

「バトーさん、俺がやります…」


キラキラした目で語るイエーツ、シャツを脱ぐ松本。


「あ、マツモト君トレーニング室での脱衣は禁止事項なんだ、直ぐに服を…」


ポーズを取る松本、顔を背けるバトー。


「おらぁぁぁ! その目に焼き付けろ! これが光魔法だぁぁぁ!」

「ぐあぁぁぁ!?」


松本の最大出力によりトレーニング室から光とイエーツの悲鳴が溢れた。

 



「な、なるほど、これが光魔法か、強烈だな」


片手で目を抑えフラフラとベンチプレス台に座るイエーツ。

いつの間には戻って来たナナヤマが重りを取り付けている。


「これは一大事だ、光魔法は光筋教団の悲願だからね。

 私も光魔法を習得したいのだがレム様にお会いすることはできないだろうか?」

「レム様ならポッポ村で光魔法習得希望者を待ってますよ」


バトーの返答を聞きながらベンチプレス台に寝るイエーツ。


「バトーさんは神官クラスなので習得だけならバトーさんでも可能ですよ」

「本、当、か、是非、頼、み、たい!」


ベンチプレスを行いながら喋るイエーツ。


「取りあえず、ベンチプレスやめて貰っていいですか?」

「いいですよー最後まで絞り切って! 後3回行きましょう!」

「おいやめろ!」


追い込みをかけるナナヤマ、回数をこなしてからイエーツはバーベルを置いた。




「大丈夫です! いけます!」


ナナヤマが施設入口に臨時休業の看板が掛け戻って来た。

光魔法習得のためとはいえ、光筋教団員がトレーニング室で脱衣する訳にはいかず

臨時の処置として休業することになった。

バトーが光魔法を教えるとイエーツとナナヤマは直ぐに取得した。


「パワー!」

「フン!」

「「 おぉ~ 」」


光るナナヤマとイエーツ。

2人もバトーと同じ上級用のボーズで光魔法を発動させている。


「最初から上級か、流石は光筋教団だな」

「まぁ本家本元の信者ですからね、鍛え方が俺達と違いますよ」

「パワー!」

「フン!」



っていうか、完全にボディビルダーだろこれ…



極めて布面積が小さいパンツ姿でポーズを決めるイエーツとナナヤマ。

尋常じゃないマッチョのイエーツは完全にボディビルダーである。

一通りポージングして2人は満足した。


「ありがとうバトーさん! 私達の心は今、レム様への信仰心で満たされている!」

「ッハ!」

「満足そうでなりよりです」

「別の者が王都に向かったので恐らく本部への連絡は必要ないと思います」

「なるほど、有難い!」

「それでなんですか…」


魔王関連の事情を説明したバトーと松本。


「なるほど、取りあえずは光魔法の普及に努めよう!

 明日希望する団員を集めるてポッポ村に向かうとしよう!」

「わ、私、ちょっと混乱しちゃって…」


ナナヤマはオロオロしていた。


「ところでイエーツさん、その体が少し光ってるのは光魔法じゃないんですか?」

「ははっ、これはボディオイルだよマツモト君。最近空気が乾燥しているからね!」


光筋教団特製ボディオイルは、光筋教団施設の売店でお求め頂けます。

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