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90話目【来たれ! 光筋教団員!】

「「ありがとう御座いました」」

「おうよ! 痛んだら持ってきな、完璧に直してやるからよ!」

「また来なよ、坊や達なら歓迎するからね!」


鍛冶屋『ユミルの左手』の前で松本とバトーを見送るドナと禿げ。


「バー坊は月隈の爪を持つ坊やと一緒に旅するのかい?」

「今は分りませんが、いずれそうなるかもしれません」

「それは楽しみだね、出来れば王都に鍛冶屋に顔を出してくれないかい?」

「それって師匠の師匠がいるっていう鍛冶屋ですかい? 確か『ユミルの右手』でしたっけ?」

「そうさ、月隈の爪はアタイの師匠が作った傑作の1つでね。

 作ったはいいが使えるヤツがいなくて保管されてたのさ」

「「「 へぇ~ 」」」

「その月隈の爪は巨大モギの鱗に弾かれたんだろう? 

 その鱗で作ったアタイの傑作は、月隈の爪より優れていることになるね。

 ジジイの悔しがる顔が浮かぶよ! はーっはっはっは!」


腰に手を当て高笑いするドナ。


「師匠、名前はどうするんですかい?」

「そうだねぇ、でかいトカゲだったからね、 

 盾を『地竜の鱗』、剣を『地竜の爪』とでもするかね」

「竜ですか? 少し仰々しくないてすかい?」

「あの大きさになったら災害だからね、竜といっても問題ないさ!」


バトーの新しい剣と盾の名前が決まった。

一応、松本のナイフに『トカゲの爪』と命名された。


「また来いよー」

「ジジイによろしくー」


手を振るドナと禿げに背を向け、光筋教団を目指す松本とバトー。



「バトーさんって昔ウルダで冒険者してたんですよね? 光筋教団ってどんなかんじなんですか?」

「俺もあまり知らなくてな、名前に聞き覚えはあるんだか…」

「教団って言うくらいだからお揃いのローブとか着て、協会でお祈りしてるんじゃないんですか?」

「う~ん…そんな感じだったか? 思い出せないな、とにかく行ってみるか」

「そうですね」


カルニのメモを頼りにウルダ中央広場まで戻って来た2人。


「メモによれば各区に施設があるらしい、北区にウルダ支部の本拠地があるようだ」

「そんなに施設があるんですか? それなら教団員は多そうですね」

「光筋教団の新規会員募集中でーす! 只今入会金無料セール中ですよー!」

「「 ん? 」」


松本とバトーが声の方向を振り向くと、広場の端に設営されたテントで数人が声掛けを行っている。


「お兄さん達もよかったらチラシどうぞ、くじ引きもありますから是非立ち寄って下さい」


爽やかな青年から受け取ったチラシを見る松本とバトー。

チラシの端がくじ引き参加券になっている。





【光筋教団、新規会員募集中!】


「いつの時代も 諦めず抗う者こそ 成果を得る」


健全な精神と健康な肉体にこそ光魔法は宿ります!

私達と一緒に光魔法を追い求めましょう!


通常入会金30シルバーのところ、只今無料キャンペーン中!


・時間指定コース、月額50シルバー、利用時間6~18時。

 (お昼に時間がある方にお勧め、少し割安です)


・24時間コース、月額80シルバー、利用時間24時間いつでも可。

 (夜しか時間が取れない、仕事終わりに利用したい、人が少ない時間に利用したい。

  そんな方にお勧めです。24時間いつでも好きな時間に利用可能です)






こ、これは…なんか既視感があるな…



「あぁ~、そうだ、思い出した!」

「なにがですか?」

「昔利用したことあるな、ミーシャと一緒に入会してな、

 月額が高くて2ヶ月で辞めたんだよ。子供にとって80シルバーは大金だったからなぁ」



利用してたんかい! 元光筋教団員だったのか…



「なんか変な粉も売ってて水に溶かして飲むんだが、これが不味くてなぁ

 始めて飲んだ時に2人共噴き出してな! いやぁ懐かしいな」



その粉ってもしかして…



「ちょっと行ってみましょう、くじ引きもありますし」

「そうだな、光魔法とレム様の話もあるしな」


テントにはムキムキマッチョのお兄さんと腹筋の割れたお姉さんが笑顔で座っている。

肌寒い季節なのにタンクトップと短パン姿で、何故か全身が薄く光っている。


「すみませーん、くじ引きやりたいんですけどー」

「お? これはカワイイ坊やだね~、チラシはあるかな?」

「あります」


松本からチラシを受け取り端を千切るマッチョマン。

隣のお姉さんが松本とバトーの体に目を光らせている。


「はい、このハンドルを回すと玉が出てくるからねー、赤色が出たら大当たりだ」

「何が貰えるんですか?」

「赤なら光筋教団特製の魔法の粉、2キロだよ」

「魔法の粉?」

「ちょっとまってね」


マッチョマンが後ろから袋と蓋の付いたカップを取り出しテーブルに置く。


「トレーニングの後に水に溶かして飲むのさ」

「基本的にはトレーニング後30分以内に飲むの、詳しくは裏に書いてあるわよ坊や」


袋の裏を見る松本。





『魔法の粉 チョコレート味』

牛乳由来の筋肉の元になる魔法の粉です。

トレーニングの効果を最大に発揮する為には筋肉の元となる栄養が必要です。

魔法の粉は吸収速度が速く、トレーニング後30分以内に接種することで

効率良く体を鍛える事が出来ます。

(ハードなトレーニングを行っている方は3時間毎の摂取をお勧めします)


『飲み方』

付属のスプーンで摺り切り2杯をカップに入れ、水、または牛乳で溶かして飲んで下さい。






これはたぶん…ホエイプロテインだな…



「チョコレート味の他にもバナナ味、ココア味、ヨーグルト味、肉味があるわよ」


テーブルに各味のイラストが描かれた袋を並べるお姉さん。



なんだよ肉味って、絶対不味いだろ…



「俺とミーシャが飲んだのは肉味だったな。

 肉だから絶対美味しいと思ったんだがな、凄く不味かったな」



ほらやっぱり、だってそれ肉汁なんだもの…

嫌だろそんなの…



「通常は1袋50シルバーだけど、赤い玉が出たら無料だよ、好きなの味を選んでいいよ」

「マツモト、肉味飲んでみろ、凄く不味いぞ」

「不味いなら勧めないでくださいよ…いきますよー」


ガラポンを回す松本、青い玉が出た。


「惜しいねー青はお試しの魔法の粉だ、1杯分の量だよ、好きな味を選んでねー」

「えぇーじゃぁ………肉味で」

「怖いもん知らずだねー坊や」


肉味の魔法の粉を受け取る松本。


「せっかくだから今飲んでみますか…」

「カップ持ってないだろ松本、どうするんだ?」

「大丈夫ですよ、これはですね…」


小袋を開け、上を向き、開けた口に粉を流し込む松本。

続いて水魔法で出した水を含み、口の中で混ぜて飲み込む。


『 ほう… 』


テント周辺の光筋教団員が目を光らせている。


「なんか薄い肉の味が…食感が液体だから気持悪いですね…」

「ははっ、そうだろ凄く不味いんだよ、変わってないな」


口をリセットさせようと水魔法を啜る松本。

バトーが横で懐かしがっている。




「すみません、俺達は光魔法のことで…」


本題に入ったバトーの言葉を片手を上げて遮るマッチョマン。


「そんな回りくどいことを言う必要はないよ、君達の目的は分かっている」

「「 え? 」」


不思議そうな顔をするバトーと松本。

両肘をテーブルに着き、顔の前で指を組んだお姉さんが続ける。


「お兄さんのその尋常じゃなく鍛えられた肉体、

 坊やの普通の少年にしては発達し過ぎた筋肉、そして何よりさっきの飲み方…

 仲の良い親子、いや兄弟かしら?

 そのように振る舞っても私達の目は誤魔化せませんよ」


松本とバトーを囲み目を光らせる光筋教団員。


「バトーさん、これは!?」

「何したんだマツモト?」

「別に何もしてませんよ!」


テーブルのマッチョマンが口を開く。


「ずばり、君達の目的は我が光筋教団の無料体験だ。そうだろ?」

「「 え? 」」

「お2人様ご案内よー!」

「「 はーい! 」」

「「 え!? 」」


チラシを配っていたお兄さんとお姉さんが駆け寄って来る。


「いや、俺達は…」

「そんな隠しきれない筋肉で何言ってるんですか!

 お兄さんミノタウロス杯で暴れてた人ですよね? その上腕三頭筋、間違いありませんよ!」


お兄さんがバトーの腕を引いていく。


「え? ちょと、バトーさーん!」

「さぁ! 坊やも行くわよー!」

「いや、俺達光魔法の…」

「光魔法は健全な魂と健康な肉体に宿るのよ!

 それにその明らかに鍛えられた広背筋と大腿四頭筋、そしてさっきの飲み方。

 坊やもトレーニーでしょ! もうバレてるわよー!」


お姉さんに引かれて行く松本。

テーブルのマッチョマンとお姉さんが笑顔で手を振っている。



光筋教団員に目を付けられたのは、松本のプロテインの飲み方である。

カップ(シャイカー)を使用せず、直接プロテインと水を口に含み飲む方法は

現世では『ビルダー飲み』と呼ばれている。

粉を噴き出したり、むせたりするので緊急時以外に特にやる必要はない。

※調子に乗ってジムでやると怒られる可能性があります。シェイカーを使った方が楽です。


皆もプロテインを飲むときは光筋教団員の目に注意しよう。


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