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77話目【今後の方針と少し遅めの昼食】

獣人の3人がポッポ村を訪れてすぐ話し合いが行われた。

議題は今後の方針について。


光の精霊レムと、調査に訪れたルドルフとミーシャ、獣人の3人によって

もたらされた情報から推測される内容は次の3つ。


・魔族が活動を始め、半年に1度のベースで村を襲いだしていること。

・次の襲撃は恐らく獣人の里であり、時期は3ヶ月前後と予測されること。

・魔族が村を襲い負の感情が溜まり続けると、いずれ魔王が復活する可能性があること。


魔王の復活だけは何としても阻止する必要がある。


この世界での魔法を習得する方法は3つ。

・該当する精霊に教えて貰う。

・上級魔法まで扱える神官クラスに教えて貰う。

・神官クラスが作成した魔石によって習得する。。


現状、光魔法の精霊はいるが、神官クラスが存在していない。

神官クラスに一番近いのはバトー、次いでゴードン。

筋力が多いミーシャも他の者より上達が早いと予測される。



それを踏まえたうえで次の内容が決定した。


・ミーシャとルドルフは本来の依頼である襲撃された村の調査を完了させる。

 これにより、王都と、王に調査を依頼した光筋教団に現状を知らせることができ、

 各村、町への情報共有、光魔法の布教が見込まれる。

 光魔法が布教すれば各自防衛が可能となり、魔王復活を抑制できる可能性がある。

 光魔法が布教出来ない場合は、防衛が厚い村や町へ身を寄せ襲撃に備える。


・光の精霊レムは現地に滞在し、訪れる光魔法習得者希望者へ布教にあたる。

 精霊の池に向かう希望者が増えるとポッポ村が通り道となり余計な混乱を招く為、

 付近に布教用の小屋が設けられることとなった。 

 レムは池から通う予定らしい。


・獣人の里へ赴くのは松本、バトー、ゴードンの光魔法習得者3人。

 ゴードンはポッポ村以外には行ったことが無いのだが、レムが行けない以上

 光魔法と戦闘の実力者として白羽の矢が立った。

 松本は戦力外だが、本人の希望と唯一光魔法を実戦で使用した人間として抜擢された。

 本人はニャリモヤが目的である。


ポッポ村が再度襲撃される可能性もあるが、光魔法を習得した村人とレムでバトーの穴を埋めた。

現在、世界で唯一光魔法が布教された村であり、魔族が相手なら問題ない。


あくまでも少ない情報と憶測の元に立てられた計画であり、

ルドルフとミーシャが王都に報告した後に新たな動きが予測される。


松本、バトー、ミーシャ、ルドルフは6日後にウルダへと出発し、

その後、ルドルフとミーシャは王都へ出発。

松本とバトーは依頼していた装備の受け取りと、ウルダにある光筋教団への連絡を行う。

獣人の里への出発は1ヶ月後の予定である。

その間、獣人の3人は松本の家に寝泊りする。

勿論松本の要望であるが、宿とパンが確保され獣人達として嬉しい提案だった。




「話は以上だ、そういうことで皆よろしく」

『 はい~ 』


今後の方針が決定し、バトーが話し合いを締めた。

話し合いに参加していたマリーさんがパンッと手を叩き、皆が注目する。


「それじゃ、少し遅くなったけどお昼にしましょう!」

「もうすぐナーン貝が焼けるわよ~広場に来てね~」


外からマダム達の声と共に焼きナーン貝の香りが漂ってきた。


「そういや昼飯まだだったな、どおりで腹が鳴るわけだ。行くぞバトー」

「そうだな、獣人の皆も付いてきてくれ」


ゴードンとバトーが外に出る。


「行こうカテリア、マルメロ」

「ご飯だって、カテリア姉ちゃん」

「この匂いは昨日の貝ね、楽しみ~」

「私達も行きましょう、ミーシャ、松本」

「「 はい~ 」」


一同も広場に向かった。


広場ではナーン貝と鍋がクツクツと音を立てていた。

鍋を覗き込む松本がマリーに質問している。


「マリーさん、これは野菜スープですか?」

「ポッポ村で収穫した野菜のスープよ、折角お客さんが来てるんだもの、村の食材を食べて貰おうと思って」

「へぇ~美味しそうですね」

「味付けは塩だけなんだけどね、野菜と肉の味が染み出て美味しいのよ~。

 今回はモギ肉を使ってるから一段と美味しいわよ~」

「それは楽しみです、注ぎますよ、俺はお客じゃないんで」

「それじゃ、お願いしようかしら」


マリーさんからオタマを受け取り、木の器に注ぐ松本。

器の底には焼き印が見え隠れしている、勿論ウルダ特産の木工品である。


「はいどうぞ」

「ありがとうマツモト君」


ジョナにスープの入った器を手渡す。

話し合いに参加していた者達の食事なのだが、数人の村人がこっそり混じっている。


「次の人は~、あれ? もう全員に渡したかな?」



なんか忘れているような…



「駄目だってカテリア姉ちゃん!」

「止めないでマルメロ、あそこに、まだ食べたことのない人間の食べ物があるのよ!」

「早まるなカテリア、よく嗅ぐのである!」


広場の端で空の器を持ったカテリアが、マルメロとニャリモヤに止められていた。

止められてなお前進しようとするカテリア、足元が少し抉れている。


「止めないでぇぇぇ!」

「止まってぇぇぇ!」

「止まるのだぁぁぁ!」



なにやってんだ獣人達…



「どうしたのマルメロ君、このウィンディお姉さんが相談に乗るわよ!」

「あ、ウィンディさん」

「うふふ、ウィンディお・ね・え・さ・ん。よ、マルメロ君」


マルメロにウインクするウィンディ。



ウィンディ姉さん? いや、あれは…



満面の笑顔の奥で怪しく輝く瞳。

隙あらばマルメロを狙うウィンディ姉さん…

いや、男の子大好きウィンナー姉さんである。


「これしきの事でぇぇ!」

「よく匂いを嗅ぐのであるカテリア、あれを食べると腹を下すのである!」


両足を抑えるニャリモヤ、なおも前進しようとするカテリア。


「それでぉぉ!」

「微かだけど匂いがするよ、お腹壊すよカテリア姉ちゃん」


背後から羽交い絞めするマルメロ、止まらないカテリア。


「だとしてもぉぉ!」

「ウィンディさん、カテリア姉ちゃんの尻尾の根元を握って下さい!」

「え? こう?」

「あひゃ~」


ウィンディが尻尾の根元を握るとカテリアがヘニャヘニャになった。


「なんとか止まったのである」

「まったく、食べ物のことになるとたまに暴走するんだから、カテリア姉ちゃん」

「だって悔しいのよ~、食べたいのよ~」


呆れるニャリモヤとマルメロ、涙を流し悔しがるカテリア。


「獣人って尻尾握ると力抜けるのね…それとマルメロ君、ウィンディお姉さんよ、お姉さん!

 さぁ! 呼んで頂戴! ウィンディお姉さんと!」


どうしてもウィンディお姉さんと呼ばせたいウィンナー姉さん。

両手を広げ胸を張っている。


「ありがとうございました、ウィンディ…お姉さん」

「もう1回、詰まらないようにお願い!」

「ウィンディお姉さん」

「あぁぁぁ! っぁっぁあ! っぁぁぁあぁ‼」


身をよじり、ビクンビクンと地面でのたうち回るウィンナー姉さん。


「どうしたの? ウィンディお姉さん」

「あぁぁあぁ! もうこれっ…! ぁあぁぁ」

「ウ、ウィンディお姉さん!?」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! も、もうお腹いっぱい…」

「まだ何も食べてないよ!?」


マルメロに追い打ちを掛けられたウィンナー姉さんは悶死した。



ウィンナー姉さん…あんたって人は…



「ウィンディは、まぁ…いいとして…

 獣人の人達はどうしたんだろう? マツモト君何か知ってる?」

「ジョナさん、このスープって何が入ってるんですか?」

「えーっと今回は、大根、人参、玉ネギ、芋、モギ肉だね」



はは~ん、これはたぶん…



「食材ってどこにありますか?」

「あそこの食糧庫にあるけど…」

「ちょっと行ってきます」


食糧庫から帰って来た松本が獣人達に近寄り手を差し出す。


「「「 うぐっ!? 」」」


顔をしかめ鼻を抑える獣人達。


「やっぱり」

「なにしたんだいマツモト君?」

「これですよ」


ジョナに手の平を差し出す、何も握られていない。


「これ? 手がどしたんだい?」

「手じゃなくて匂いですよ、さっき玉ネギ握って来たんです」

「確かに玉ネギの匂いするね」

「玉ネギが嫌いなんだと思います」


松本の言葉を鼻を抑えた3人が補足する。


「嫌いというか、食べると腹を下すのである…」

「獣人の僕達はネギ類が体に合わないです…」

「匂いもキツイ…」

『 なるほど~ 』


広場にいる住民がポンと納得した。


※猫と犬には玉ネギを食べさせてはいけません。



「そうだったのねカテリアちゃん、今日は残念だけど我慢して頂戴。

 明日また玉ネギ抜きのスープを作ってあげるわ」

「本当ですか! ありがとうございますマリーさん!」

「よかったねカテリア姉ちゃん」

「マリー殿、かたじけないのである」


カテリアが悲しみの淵から生還した。


「そんなにスープが食べたかったのね~」

「子供の小さい頃を思い出すわ~」

「泣いて悔しがるなんて可愛いわね~」

『ウフフフフフ…』


マダム達が会議中である。



各自にロールパンが手渡された。

松本の横に座りロールパンを見せるミーシャ。


「これマツモトのパンか?」

「いえ、ポッポ村で作ってるパンですよ、バターが香る美味しいパンです」

「そりゃ楽しみだな!」

『 いただきまーす! 』


焼きナーン貝、野菜スープ、ロールパン。

ポッポ村の食材を使った少し遅めの昼食は好評だった。

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