76話目【ポッポ村に向かう獣人達】
翌日、松本の家にやって来たバトー達とミーシャ。
ゴードンとルドルフはポッポ村で大人達を集め現状を説明している。
昨日バトーの家で話し合った結果、役割を分担することになったのだが、
ミーシャとルドルフのどちらが村に残るか聞かれ
「私が残った方がいいんじゃないかしら?
光魔法って筋力いるんでしょ? それならミーシャが習得した方がいいわよ!」
「なんで早口なんだルドルフ?」
前日の森と松本ハウスまでの往復2時間が堪えたらしい。
「おーい、マツモトー、いないのかー?」
バトーが呼ぶが返事が無い。
「寝てんじゃねぇのか?」
「マツモト入るぞー」
扉を開けて家の中を確認するバトーとミーシャ。
「…寝てるな」
「なんか増えてねぇか?」
ベットの上には獣人達と松本が団子になってスヤスヤ寝ていた。
バトーとミーシャによって起こされた4人。
獣人は少し緊張気味である。
松本は外で歯を磨き顔を洗う、
水魔法を習得してから精霊の池で顔を洗う必要がなくなった。
バトーが食パンを切り分けフライパンで焼き、
ミーシャがお茶を沸かしていた。
6枚の皿に食パンが2枚ずつ乗せられ、6人は切り株に座った。
枚数が多いため、松本が直接火魔法で焼いた食パンは少しだけ焦げていた。
「マツモト、蜂蜜取ってくれよ」
「どうぞミーシャさん。一応、塩と砂糖はありますけど、誰か使いますか?」
松本の問いかけに揃って首を横に振る一同。
ミーシャの塗る蜂蜜を順番待ちしている。
俺、塩食パン結構好きなんだけどなぁ…
焼いた食パンに塩を掛けるだけの塩食パン。
生前好んで食べていた松本は内心ショックを受けた。
「先に食べるぜー、頂きまーす!」
「頂きまーす!」
蜂蜜を塗り終えた者から食パンに齧り付いている。
「カテリア姉ちゃん早く回してよ!」
「今塗ってるでしょ、ちょと待ってよマルメロ、あと少しだけ…」
「欲張って沢山塗り過ぎだよ! 太るよ!」
「そんなこというなら蜂蜜あげないわよ~、はいニャリモヤどうぞ~」
「行儀が悪いのである2人共、人間達に我らの品が疑われるのである」
マルメロの頭上で蜂蜜を受け取るニャリモヤ。
「そう思うならニャリモヤも受け取らないでよ、まったく…」
「それはそれ、これはこれである。ほら、マルメロの番である」
ニャリモヤの後にマルメロも蜂蜜を塗り、3人揃って食パンに齧り付いた。
「「「 あま~い! 」」」
満面の笑みで頬を膨らませる獣人達、気に入ったようだ。
松本は1人塩食パンを齧っていた。
「ところでマツモト、そろそろ紹介してくれないか?」
「なんでお前の家に獣人がいるんだ?」
蜂蜜パンを齧るバトーと追加の食パンを焼くミーシャが当然の疑問を投げかけた。
起床後、自然な流れで食事に参加している獣人達だが、全く説明されていなかった。
「この方達は手前からニャリモヤさん、マルメロさん、カテリアさんです」
松本の紹介で順番に頭を下げる獣人達、口がモゴモゴしている。
「オババ様の占いの結果、近いうちに里が魔族に襲われるそうです」
「そして占いに従い、この森に来て僕を見つけたみたいだよ」
池の方からレムが飛んできた。
「おはようございますレム様」
「おはようマツモト君、僕にも食パン貰えないかな?」
「今焼けたんで、これどうぞ」
ミーシャが焼きたての食パンをレムに渡し、次を焼いている。
「皿と席がないですけど…」
「気にしなくていいよ、僕は浮いてるからね」
フワフワと浮きながら空中で蜂蜜を塗るレム。
「昨日話してた次の襲撃場所の目星は獣人の里というわけか、俺の分も焼いてくれミーシャ」
「はいよー、そのオババ様の占いはどれくらい信憑性あるんだ?」
追加の食パンを焼くミーシャの質問にはニャリモヤが答えた。
「時期や場所を正確に示されないから難しいが、結果的には殆ど当たっているのである。
近いうちに闇によって里が滅びる、里を救うには古の光を持ちて闇夜を照らせ。
というのが今回の占いの内容である」
「殆ど当たるか…古の光はレム様の光魔法だろ? 結構信憑性ありそうじゃねぇかバトー」
「そうだな、何も手掛かりがないなら信じてみるのもありか…」
「行くならあっちの方に20日くらいらしいですよ」
「結構時間かかるな、こりゃ今後の動きを考えた方がいいな」
「行くなら1ヶ月以ポッポ村から離れることになるな…
皆ちょっと村に来てくれないか? 今後について話し合いたい。
レム様もお願い出来ないでしょうか?」
「僕は構わないよ」
「行くしかないのである」
「人間の村だって、よかったねカテリア姉ちゃん」
「なんで私に言うのよマルメロ、別にワクワクとかしてないわよ」
鼻息が荒いカテリア、ワクワクしているようだ。
「1回ナーン貝取って来ていいですか? マダム達に要望されてまして…」
松本がウルダに行ってる間、ポッポ村では深刻なナーン貝不足に陥っていた。
こうして約2時間後、獣人達はポッポ村に行くことになった。
森を歩く一同、カテリアとマルメロの手にはナーン貝が持たされている。
ニャリモヤは背中に乗せてある。
「カテリア姉ちゃん、僕達掴まったりしないかな…」
「この人達は親切にしてくれたじゃない、きっと大丈夫よマルメロ」
「でも長老はあまり人間を信用するなって言ってたよ?」
「それはそうだけど…」
「長老殿は昔旅をしていたから、きっとなにかあったのである。
この人間達は信頼に値すると我は思うのである」
「ポッポ村は皆いい人達ばかりだ、安心していいぞ!」
最後尾を歩くマルメロにバトーが笑いかける。
「ミーシャさん、人間と獣人て仲悪いんですか?」
「場所によるな、基本的には関わり合いがないから中立だろ。
ロックフォール伯爵の収めるダナブルには普通に住んでるぞ。
王都バルジャーノにも少しは住んでる」
「へぇ~」
「その話、本当ですか!?」
最後尾からナーン貝を持ったカテリアが走って来た。
「おう、本当だぞ、ロックフォール伯爵ってのは変り者でな。
本人が変わってるもんだから偏見がねぇのよ、
亜人種だろうがオカマだろうが害が無ければ普通に生活してる。
それが変り者が集う場所、自由都市ダナブルだ。
獣人族はあまり森から出てこねぇけど、カテリアちゃん人間の町に興味あるのか?」
「えぇ、ちょっと人間の生活が気になりまして…」
「嘘はよくないのであるカテリアー!」
「カテリア姉ちゃんが興味があるのは人間の食べ物でしょー!」
後方からニャリモヤとマルメロの声が聞こえる。
これだけ離れていても話し声が聞き取れるようだ。
「あはははは…こらー余計な事言わないでー!」
「賑やかだねぇ」
「いいことですよ」
後方に文句を言うカテリア、間にいるバトーとレムが笑っている。
「それだったら、至高都市カースマルツゥには近寄らない方がいいぜ。
あそこは亜人種を毛嫌いする奴らが集まってるからよ、碌なことにならねぇ」
「なんで嫌ってるんですか?」
「領主のフラミルト伯爵ってのが人間こそ至高の種族だって考えでな、人間以外を見下してんだ。
その考えに賛同す者や、何らかの理由で亜人種を嫌う者が集まってるんだよ。
まぁ、亜人種に実害を受けたヤツもいるから一概に良いとか悪いとか言えねぇんだけど」
「至高都市カースマルツゥですね、気をつけます!」
まぁ、人によって好き嫌いはあるからな…
人間の作った町に嫌われると知りつつ無理やり住む亜人種はいないだろ。
自分達で作った町で主張するなら問題なかろう、他の町にまで強要しだしたら駄目だが。
捕まえて拷問とかしてないだろうな…たまに間違った正義感で暴走するヤツとかいるからな。
「至高都市と名乗ってはいるが、普通の町のカースマルツゥ。
亜人種が沢山いて、最新技術が集まる自由都市ダナブル。
この2つの町の領主は仲が悪いことで有名でな、最近ではダナブルで開発された魔道補助具が
国を脅かす危ない技術だって難癖付けて騒ぎ立ててんだよ」
「魔道補助具が広まらない理由は値段以外にもありそうですね」
「あの~何の話ですか?」
カテリアが話についていけず首を傾げている。
「あぁー、すまん関係ない話だったぜ。まぁカースマルツゥもそうだけど、
なんらかの理由で嫌ってるヤツもいるからよ、簡単に信用しちゃいけねぇってことだ」
「ミーシャさんもですか?」
「俺は信頼出来る男よ!」
親指を立て歯を光らせるミーシャ。
「自分で言うと胡散臭いぞミーシャー!」
後方からバトーの声がした。
「見えたぞ、あれが俺達のポッポ村だ」
森を抜け平原に出た獣人達に指し示すバトー。
「人間が沢山いるのである」
「畑があるよ」
「魚は捕れなさそうね」
「魚は捕れませんが、ポッポ村は芋が取れますよ」
「へぇ~僕も食べたいかな」
「俺も。バトー後で芋貰えねぇか?」
「いいぞ、オヤツは芋だな!」
芋に期待を抱きながらポッポ村へ歩く一同、
村の入り口ではマリーさん、レベッカ、ウィンディが出迎えた。
「お帰りバトー、なんか大勢ね。あら、レム様まで」
「バトーこちらの獣人の方達は?」
「是非この小さい子を紹介して貰えないかしら?」
「いろいろ事情があってな、さっき知り合いになったんだ。
今後の方針を決める為に村に来て貰ってな、こちらがカテリアさん、
隣が弟のマルメロ君、大きいのがニャリモヤさんだ」
「「「 よろしくお願いします! 」」」
紹介された3人は頭を下げてマリー達にナーン貝を手渡した。
「「「 ご親切にどうも有難う御座います 」」」
受け取った3人も頭を下げた。
ポッポ村での獣人3人の評判が上がったそうな。
全ては松本の入れ知恵、元社会人、松本実ここに在り。




