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75話目【獣人達と食べる夕食】

時刻は夜。

焚火の近くには人間が1人、精霊が1体、ワニが1体、獣人が3人。

松本、光の精霊レム、レムの従者のワニ美ちゃん、

デッカイ三毛猫ニャリモヤ、犬っぽい顔のカテリア、同じく犬っぽい顔のマルメロである。


松本のズボンには大きな穴が空いていおり、尻が丸出しになっていた。

ニャリモヤの背中に張り付いて離れない松本をカテリアとマルメロが

引き離そうとしたが上手くいかず、


「火で炙ってみたらどうかな?」


というレムの助言により尻を炙られ、地面にポロっと落ちたのだった。



「ふむ、知らない人?が2人と大きな猫が1匹。

 レム様、俺の家にいたのはこの人達ですよね?」

「正気に戻ったみたいだねマツモト君、話は食べながらにしよう」

「そうしましょうか、食器取って来ますので皆さんも座って下さい。

 せっかくなので一緒に食べましょう」


松本が家から皿とフォークとコップを持って来てカテリアとマルメロに手渡す。


「ありがとうございます」

「どうも」

「すまない、我にも頂けないだろうか?」


松本が振り返るが誰が喋ったか分からずキョロキョロしてレムを見る。


「僕じゃないよ」

「喋っているの我である、人間の子よ」



え!? この三毛猫が喋ってるの? …マジ? 



ニャリモヤの口の中を確かめる松本。


「すまぬが…一体何をしているのであるか?」


口を開けたままフガフガと喋り難そうにニャリモヤが尋ねる。


「喋ってるぅぅぅ! デッカイ猫サイコォォォォ! フォウ‼」


膝立ちでガッツポーズする松本。

 

「いや、家から出て来た時もニャリモヤ喋ってたでしょ…」

「カテリア姉ちゃん、人間って変だね」

「他の人の子はそんなことないと思うよ」


ヒュン…っと光の速さで家から追加の食器を持って来て渡す松本。


「どうぞ」

「か、かたじけなのである」

「後で耳触らせて下さい」

「べ、別に良いのである…」

「イヤフゥゥゥ! さぁ! ご飯食べましょ!」


クルクルと回り、とても幸せそうな猫ジャンキー松本の言葉により夕食が始まった。


クツクツと音を立てるナーン貝を各々皿に取る。

松本とレムとワニ美ちゃんは少し冷ましてから食べたが

獣人の3人は念入りに息を吹きかけ冷ましていた。


「この貝美味しい~」

「甘じょっぱいのである~」

「弾力があって食べ応えある~」


ナーン貝は3人の口に合ったようだ。


「パンもありますよ、よかったら食べて下さい」


手からフランスパンを出す松本。

3人が驚いている。


「また出た…」

「昼間も見たけど、人間は手からパンを出すんですか?」

「あ、いや…多分俺だけなので…普通は出ません」


少し気まずい顔でフランスパンをカテリアに手渡す。


「ありがとうござます」

「硬い方のパンだ」

「ありがたく頂くのである」


フランスパンは獣人間で3等分された。


「レム様とワニ美ちゃんもどうぞ」

「うれしいねぇ、ありがとうマツモト君」


もう1本フランスパンを出し、ちぎって渡す。

ナーン貝だけでも量的には十分だが、パンがあると食事が豊かになる。

始めて焼いてみたナーン貝の水管を食べる松本。



筒状で弾力があって、なんだろう…こう…

…焼きイカだな。



普通に美味しかった、白米があったら詰めても良し。


「ところで、あなた達はいったい?」


水管を齧る松本の質問にパンを齧るカテリアが答えた。


「まずは自己紹介から、私はカテリア、こっちは弟のマルメロ、そして大きいのがニャリモヤ」


紹介され頭を下げる2人。


「俺は松本です、よろしくお願いします」


パンとナーン貝を食べながら頭を下げる3人。

ワニ美ちゃんは既に食べ終えていた。


「カテリアさん達は人ではなさそうですけど?」



っていうか完全に猫だけどね!

他の2人は顔は犬っぽいけど体は人間に近い、違う種族なのかな?



「私と弟はウルフ族、ニャリモヤはニャリ族です」

「???」



ニャリ…



混乱する松本の為にレムが説明する。


「まぁ、いわゆる獣人だね。 獣人の中のウルフ族とニャリ族の民ってことさ。

 マツモト君分かるかい?」

「なんとか…レム様もう少し詳しく教えて頂けませんか?」

「この世界には大きく分けると人間、亜人種、魔物が存在している。

 亜人種とは人間に近い人間以外の者達のこと。

 獣人、ドワーフ、ゴブリンなど人間と同じように言葉を用い高い知性と文明を持つ」

「はい」

「魔物は獣のこと。ムーンベアーやこのナーン貝も魔物に含まれる。

 魔族も魔物の一種だね」

「レム様は亜人種なんですか?」

「違うよ、僕達精霊はマナの結晶だからね。自然現象みたいなものかな」

「なるほど」



つまり、このカテリアさんは亜人種の獣人のウルフ族ということか。

人間の日本人みたいなものだな。



「ニャリモヤさんは獣に近い気もしますが…」

「我らニャリ族は獣寄りの獣人、ウルフ族はに人間よりの獣人である」



正確な区分が分からん…



獣に近いニャリ族のニャリモヤが人間と同じように

皿とフォークでナーン貝を食べているため松本を混乱させた。



「早速だが本題に入るのである、我らがこの森を訪れたのは里を守るためである」

「オババ様が占った結果、僕達の里に危険が迫ってるっているみたいなんです」

「それで占いに従ってこの森に来たら精霊様にお会いしたんです」



オババ様とは…いまいち話が的を得ないな…



「オババ様はなんて言ってたんですか?」

「近いうちに闇によって里が滅びる、里を救うには古の光を持ちて闇夜を照らせ。と」



里を襲う闇ね…昼間の話だと魔王の配下の魔族のことか。

そして古の光はレム様の光魔法…占い通りにこの森に来てレム様と出会ったと。

なるほど話が繋がる、オババ様の占い凄いな。



「レム様、昼間言ってた魔族が次に襲撃する場所と準備ってこれのことですか?」

「そう、いや~話が早いねマツモト君」


爽やかに微笑むレム。


「なるほど、大体理解しました。明日バトーさん達に相談してみましょう」

「かたじけないのである」

「いい人間でよかったね、カテリア姉ちゃん」

「!? 失礼でしょマルメロ! あははは…」


気まずそうに笑うカテリア。


「人間と獣人て仲悪いんですか? 俺あまり詳しくなくて…」

「仲が悪いというより我らの里と人間は殆ど関わりが無い、

 我らは森に、人間は平地に住んでいるからである」

「たまに僕らの森に人間が入って来て、勝手に食べ物に取ったり、

 神聖な場所に入ったりする人間は嫌われています、

 里の場所が見つかると嫌だから皆関わらないようにしていますけど」

「外を旅した大人によると獣人と人間が一緒に住んでる場所もあるらしいですけど」

「そんな場所に人間の俺達が入って大丈夫なんですか?」

「それを見定める為に昼間確認させて貰っていたのである、

 我がマツモト殿に接触したのもその一環であである」

「それで家の中にいたんですか」

「失礼とは思ったが里の為仕方なかったのである、許して欲しいのである」

「いえ、気にしないで下さい」



むしろ、ありがとうございまーす!



「昼間の人間達は邪な者ではなさそうである、是非、里を守るため協力して欲しいのである」

「いい人間だったら里の人達も歓迎してくれます」

「その、マツモトさんも里に来るなら…パン貰えませんか?」

「い、いいですよ…」


食い気味のカテリア、パンを気に入ったようだ。

 


「ところで、その里ってどの辺なんですか?」

「あっちの方です、ずっと向こう」


マルメロが精霊の池の先を指さしている。

ポッポ村とは反対側のようだ。


「遠いんですか?」

「恐らく20日程である」

「結構遠いですね、えーとちょっと待ってて下さい」


松本が家の中からウルダで購入した地図を持ってきた。

切り株に広げ皆が覗き込む。

地図の左上寄りに『バルジャーノ』、中心から下行くと『ウルダ』、

バルジャーノから下、ウルダから左に位置する場所に『ダナブル』と書かれている。



えーと、ここがウルダだから…



「レム様…ここってどの辺ですか?」

「僕も分からないよ、最近目覚めたばかりだからね」


誰も現在地を知らなかった。



食事と片付け終えた一同。

レムとワニ美ちゃんは池に帰って行った。


「皆さんはどこで寝るんですか?」

「その辺で寝ます」

「旅の間はずっと野宿である」

「ニャリモヤがいるから暖かいんです」


流石は獣人、野宿に抵抗が無い。

松本も獣人なのではなかろうか。


「よかったら俺の家で寝ませんか?」

「いいんですか?」

「是非、どうぞ」

「折角だからそうしましょう、そろそろ寒くなるし風避けはあった方がいいわ」

「うむ、寝させて貰うのである」

「では…早速」


シュバッ!


「は、早い…」

「よっぽど気に入ったみたいね…」

「我がこうも簡単に背後を取られるとは…」


松本がニャリモヤの背中に張り付いていた。


「まぁお気になさらず、さぁ寝ましょ!」

「そうね、寝ましょうか」

「今日はなんか疲れたね」

「マツモト殿、何故裏返すのであるか?」

「つい癖で…お気になさらず」


ニャリモヤの耳を裏返す松本、捏ね繰り回している。


『 おやすみ~ 』


4人は松本のベットで団子になって寝た。

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