70話目【みんなで訪問する松本宅】
松本達がポッポ村に帰還した翌日。
朝食を済ませた村人達が畑や木材加工所で仕事に勤しんでいる。
「はああああああああああ! でやあああああああああ!」
村の柵の外側では松本が鍬を振っていた。
「はぁはぁ…バトーさん…お、俺、午前中は村の手伝いしないといけないんですけど…」
「村の復興が完了したからな、もう手伝わなくて大丈夫だぞ、村長の許可も出ている!」
「いや、そういい訳には…」
「マツモト、手を動かせ!あと400回だぞ!」
「ぬああああああああああ! んぎゃああああああああ!」
「鍬素振り1000回って本当にやらせてたんだな…」
「やらせる方も馬鹿だけど、やる方も馬鹿よ…」
村を調べているミーシャとルドルフが冷ややかな目で見ていた。
はぁはぁ…キ、キツイィィィィィ!
チクショウ! 最近慣れて来たと思ってたんだがなぁ…
ウルダに行ってた間やってなかったから身体が鈍ってやがる…
懸垂とかの筋トレはやってたんだが自重とは負荷が違うぅぅぅぅ!
ウルダの宿屋でバトーとマツモトが筋トレに勤しんだ結果
「フンッ!フンッ!」と変な息遣いが聞こえると苦情が入り店員が乗り込んでいた。
ただ肉いっぱい食べたから筋肉は少し増えたように感じるな…
やっぱりタンパク質よ! 肉最高や!
「ぜあぁぁぁ! はぁはぁ…1000回…終了しました…」
「少し成長したなマツモト」
「そ、そうですか? 俺は鈍ったように感じますけど…」
「気絶しなくなったからな、成長してるよ」
「た、確かに…体力面は向上したような…いや、精神面か?」
「やってるな2人も、俺達今からポージング練習するけどお前達もどうだ?」
息を切らせ鍬にもたれ掛かる松本の後ろからゴードンが声を掛けた。
ゴ、ゴードンンンンンン!? 今素振り終わったところだよぉぉぉ!?
ななななんちゅうタイミングでお前これ…
「丁度今終わったところだ、行くぞマツモト!」
「のおおおおおお!?」
松本はバトーに引きずれらていった。
「フロントポーズ! サイドポーズ バックポーズ!」
村の端で村人達がポージング練習している。
元々肉体労働に合わせて筋トレも開始した為、全体的にレベルが上がって来ているようだ。
「爺さんも最近筋肉質になって来たな!」
「そうかの? ふんっ!」
最近ではお年寄りも筋力を取り戻しポージングに参加している。
松本以外の子供達も光魔法は使えないがポージングの真似をしていた。
ポッポ村がマッチョ村と呼ばれる日も遠くはなさそうだ。
「ルドルフあれなんだ? 村人が集まってなんかポーズとってるぞ?」
「さぁ? お年寄りや子供もいるし村の体操かなんかじゃない?」
村を調べているミーシャとルドルフが首を傾げていた。
「ふぅ、何とか耐えきったな…こっちはこっちでキツイ…
ポージングって動かないけど全身の筋肉使うんだよなぁ」
「よし! ポージング練習も終わったし、もうすぐ昼だな」
「そうですね、昼飯はレム様の所で食べる予定ですし…」
「そうだな、昼飯前に剣術の練習をしておこう」
「ん!?」
「マツモト、剣と盾取りに行くぞ!」
「ほげっ!?」
松本はバトーに運ばれていった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「腕が下がってるぞ! 気合を入れろマツモト!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
村の外で白目を剥きながら死に物狂いでを振る松本。
実際死にそうである。
「おいルドルフ…あれ…」
「えぇ…」
村を調べているミーシャとルドルフが絶句していた。
「マツモト、そろそろ終わりにしよう」
「オロロロロロロロ…」
「マ、マツモトォォォ!」
松本、久しぶりの体力の限界である。
ルドルフにより回復され復帰した。
「マツモト…あんたウルダでマナ切れで干からびたばっかりでしょ…」
「バトーよぉ…あんまり子供に無理させんなよ、お前とは違うんだぞ…」
「「 すみません… 」」
「何やってんだお前達…」
呆れるルドルフとミーシャ、バトーの家で正座する松本とバトー。
準備を整えたゴードンが迎えに来た。
各々準備を整えて精霊様の池に出発することとなった。
松本の背中には夢と希望の詰まった布団が縛り付けられている。
両手には買い込んだ日用品、足取りが重い。
「マツモトよ~、その日用品持ってやろうか? 俺、茶菓子しか持ってないからよ」
「助かりますミーシャさん」
ミーシャにフランスパンや鍋を手渡す。
「そっちの袋は俺が持つわ、森は歩きにくいからな」
「お願いしますゴードンさん」
鞄を背負ったゴードンに洋服やタオルの入った袋を手渡す、松本の両手が空いた。
ルドルフはお茶類を、バトーはモギ肉を持っている。
「それじゃ行きましょうか」
「「「「 はいー 」」」」
荷物を持った5人は森へと入った。
午後から開店する松本の店には3本のフランスパンが積まれ、横にナーン貝の貝殻が置いてある。
看板には『食べた分のお金を横の貝殻に入れて下さい』と書かれている。
店主が不在の為、無人販売になった。
「全裸マンいないね」
「どういうこと? ここにお金おけばいいのかな?」
子供達が首を傾げていた。
「ちょっとマツモト~、まだ着かないの~」
「今半分くらいですから、あと30分くらいですかね~」
「まだ半分なの…あんたいつもここ往復してるの? 足腰強いわけね」
「村の人達も普通に往復してますよ、ルドルフさん足腰弱いんじゃないですか?」
「ポッポ村恐ろしいわね…」
回復魔法を使うルドルフを見てゴードンが笑う。
「はっはっは! まぁ俺達は自給自足だからよ、普段の生活で多少は鍛えられてるのよ」
「ゴードンの言う通りだ、ポッポ村の村人は基礎体力があるからな、結構強いぞ!」
「ゴードンさんオッサンなのに俺よりムキムキだもんな…」
ゴードンはミーシャよりムキムキマッチョだった。
暫くすると5人の前に池が現れた。
ワニ美ちゃんはいるがレムの姿が無い。
「レム様いないですね」
「ここが光の精霊様の池なの?」
「あの黄色いワニは違うのか?」
「あれはレム様の従者のワニ美ちゃんです」
「「 ワニ美ちゃんね… 」」
ミーシャとルドルフが黄色いワニに目を細めている。
「う~ん、取りあえず家に荷物置きに行きましょうか」
「マツモトの家は何処にあるんだ?」
「あれですよ、少しだけ見えてる木材の壁がそうです」
松本の指さす方向、木々の間に木材の壁が見える。
「あれか~、まぁ先に休憩にするか、お茶菓子あるからよ」
「そうね、ちょっと疲れちゃったわ」
「俺じゃ俺の家に招待しましょう! 狭いですけどね」
池から少しだけ離れた松本の家に向かう一同。
せり出した岩の壁に木材の壁が取り付けられている。
「へぇ~屋根は岩なんだな、洒落てんな」
「いい家でしょ? ポッポ村の人達にこの前作って頂いたんです」
「子供1人でここに住んでんの? 隠居した爺みたいな生活してんのねマツモト」
「これだから都会人は…屋根と壁があるだけで有難いんですから」
松本の家に各々感想を述べるミーシャとルドルフ。
「そうだぞルドルフ、かなりマシになったんだ、この前までそこで寝てたんぞ」
バトーが少し凹んだ地面を指さしている。
「えぇ…本当に地面じゃないの…」
「誇張された話だと思ってたぜ…俺って恵まれてたんだな」
何もない地面に引く2人。
「全裸で寝てたぞ、村でも1ヶ月以上全裸で生活してたぞ」
「えぇ…」
「「 だーっはっはっは!」」
ゴードンの説明にドン引きするルドルフ、笑い転げるバトーとミーシャ。
「同じ立場なら皆そうなりますって」
「「「 まぁ、そうだな 」」」
「いや、ならないわよ。 全裸で村に行かないわよ」
男共は同意し、ルドルフは反対した。
「あれ空かない? あれー? ちょっと歪んだかな?」
「どしたんだマツモト?」
「いや、ちょっとドアが開かなくて…」
「マツモト君かい? ちょっと待ってくれるかな?」
扉をガチャガチャすると家の中からレムの声が聞こえて来た。
「レム様? 池にいないと思ったら俺ん家にいたんですか」
「いや~ごめんね、マツモト君がいない間少し使わせてもらおうと思って」
扉が開き、家の中からレムが顔を出した。
「どうしたんですか? 数百年眠ってる間に人の家に興味が湧いたんですか?」
「そんなところかな」
「まぁ使ってなかった別にいいですけどね」
「ところで見知らぬ人の子がいるみたいだね」
「そうなんですよ、こちらがミーシャさん、こちらがルドルフさん。
レム様に会いたがってまして」
ルドルフとミーシャが頭を下げるとレムが微笑んだ。
「なるほどね、どうぞ中に入って、狭いけどいい家だよ」
「俺の家ですよレム様」
「「「「 お邪魔します 」」」」
ベット付き台所無しの6畳の部屋。
マッチョ3人、女性1人、子供1人、精霊1人。
「マツモト、もうちょっと詰めれるか?」
「俺ベットに行きましょうか?」
「ちょっとバトー、あんまりくっつかないでよ暑苦しい」
「流石に密集し過ぎじゃないか?」
「何か息苦しいな」
「威圧感があるね人の子達」
流石にちょっと狭かった。




