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67話目【光の3勇者の話】

「昔々、地上で人間と獣人の世界が繁栄していた時代。

 その当時の人々は、それはそれは楽しく生活しておった。

 時より争い事はあったが、まぁよくある話、概ね平和といって問題ないじゃろ。


 生物の誕生以来、この世から争いが無くなったことなどないからの、

 今この瞬間ですら世界の何処かで必ず争いは起きておる。

 同族間か他種族か、大小様々、理由も様々、

 意思を持った生き物が皆同じ考えを持つ事など不可能、

 考えが違えば争いは起こる、生きていく上では仕方がないことじゃて。


 そんな考えの異なる者達が過去に1度だけ、たった1度だけ皆が同じ意思を抱いたことがある。

 およそ数百年前、平和な世界に漆黒の闇が現れた。

 今より優れた技術もあったが、それも今となっては過去の遺物。

 闇は世界を覆いつくし、気候は乱れ、草木は枯れ、文明は崩壊し、生物は絶滅の危機に瀕した。

 いつしか闇は魔王、魔王の配下は魔族と呼ばれるようになった。

 まさに暗黒の時代、絶滅を免れるため生き残った者達は

 魔王と倒すという共通の目的で1つに纏まったのじゃ。


 生き残った種族が集まり魔王を倒すべく力を合わせた。

 有史以来、最初で最後の全種族共闘戦じゃな、

 中でも人間と獣人は光魔法を使用して大きく魔族を退けた。


 今は使える者が居らんからの~知っとるか光魔法?

 身体が光ってな、その光で闇を消し去るんじゃ。

 当時の者達は、文字通り絶望に一筋の光が差したと歓喜しての、

 光の精霊の信者が急増したんじゃ。


 光魔法によって魔族に対し抵抗できるようになったが、肝心の魔王を討つことが出来なかった。

 魔族を退けても魔王が暴れれば成す術がなく、生き残った者も次第に減っていった。

 当然、前線で戦う者から死んでゆく、そのうち戦える大人が減り戦力が足りなくなった。

 終いには成人になる年齢を下げ、子供も戦場に立つようになった。

 子供が戦場に出ても大して戦力にはならん。

 むしろ若くして死ねば子孫も残せず数は減る一方じゃ。

 当人達も分かっておった筈じゃが、苦肉の策だったのじゃろうて…

 どの種族も生き残るために必死だったのじゃ。



 そんな時、空から3本の光が降りて来た。

 光の中から現れたのは人間じゃった。

 

 先の魔王の件もあり、いきなり現れた3人を怪しんで討とうとしたが

 とても強くてのぉ…並みの者では太刀打ち出来なかった。

 争うよりは味方となって戦って貰った方がよい。

 3人に害が無いと判断し、魔王を討つために共闘することになったのじゃ。


 当人達は異世界から来たと言っておったようじゃが、皆、真に受けんかったの。

 3人共「神によって送り込まれた」と言っておったが…今となっては確かめようもなかろうて。

 

 乏しい戦力に3人の強靭な助っ人が加わった。

 しかし、残念なことにその3人は魔法が使えなかった。

 困った当時の者達は魔法の付与された武器を与えたることにしたのじゃ。

 当時の技術では魔法を武器に付与できたが今でも出来るのかの?

 

 光魔法が付与された武器を振るい、3人は奮迅の活躍を見せた。

 その時、魔王が傷を負わされた場所がこの青龍湖じゃて。


 その後、他の種族と共闘し、死闘の末に遂には魔王を討ったのじゃ。

 3人の偉業を讃え、魔王を討伐した『光の3勇者』として現在まで語り継がれておる。

 どうじゃ? これがワシの記憶しとる勇者の話じゃ」



「「「「 おぉ~ 」」」」


シーラさんに拍手を送る松本、バトー、ルドルフ、ミーシャ。


シーラさんとは太古の昔から生きている大きな魚である。

長い年月で進化し陸上でも生活できる。

現在は青龍湖に住み、湖の畔にあるキャンプ場の管理人を務めている。




青龍子の畔、松本達はシーラさんと一緒に焚火を囲んでいた。

パンを千切りながらミーシャが口を開く。


「いやぁ~驚いた、勇者って実在したんだな…けどよ、

 俺が子供の頃に聞いてた内容とは少し違ったな、

 おとぎ話の勇者は剣じゃなくて魔法で戦ってたからよ

 王都で剣を持つ3勇者の像を見て、不思議に思ってたんだよ」

「正しい情報が語り継がれるとは限らんからの、大抵は都合の良いように着色されるものじゃて」


ミーシャからパンの半分を受け取るルドルフ。


「そうなるとシーラさんの話も正しいとは限らなくなるわね」

「まぁ、記憶違いはあるかもしれんがのぉ、少なくとも勇者と魔王の戦いは直接見たから確かじゃよ」

「「 え!? 」」


パンを齧るミーシャとルドルフが驚いている。

松本とバトーが頷いている。


「なんじゃ、バー坊から聞いとらんのか? 青龍湖と名付けたのはワシじゃよ」

「2人共、勇者の1撃で地形が変わった場所に水が溜まったのが青龍湖らしいぞ。

 シーラさんはその時の戦いを直接見ていたそうだ」


シーラさんとバトーの言葉に開いた口が塞がらないミーシャとルドルフ。


「はぁ~、今日は驚くことばかりだな」

「この湖が攻撃の跡なの? まるで魔法ね」

「確かに、ルドルフさんの魔法なら地形変わりますもんね」


ルドルフの魔法は巨大モギ討伐の際に草原を陥没させた。


「ま、ワシの鱗を貫くにはそれ位の威力が無いと無理ってことじゃて」

「さっきの勇者の一撃ってそういうことだったんだな…そりゃ傷もつかない筈だぜ」


始めて青龍湖訪れたミーシャとルドルフはシーラさんを知らなかった。

水を汲みに行ったミーシャは始めて見るシーラさんを魔物と勘違いし、

斧を思いっきり叩きつけたが傷一付かず衝撃を受けていた。


「マツ坊、ワシにもパン貰えんかの?」

「俺も貰っていいか?」

「いいですよー、どうぞシーラさん、バトーさん」


手からポンとフランスパンを出し、1本をシーラさん、

もう1本を半分にしてバトーに渡す。残りの半分は松本の分だ。


「この前より美味しくなっとる気がするの」

「やっぱりですか? 俺もそう思うんですよね」

「言われるとそんな気がしますね、なんでですかね?」


パンを齧るバトーとマツモト、シーラさんは2口で食べ終わった。

首を傾げる松本にルドルフが答える。


「上達したんじゃない? 魔法って使用すればある程度上達していくのよ。

 上級魔法は才能が必要になるけど、中級くらいまでは殆どの人がなれるわ」

「なるほど、確かにパンを1日に出せる数も増えたし、頑張ればもっと美味しくなるかもしれませんね」

「冒険者じゃなくてパン屋になった方がいいんじゃない?」

「マツモトって子供達から工場長て呼ばれてなかったか?」

「最近はパン工場の工場長って呼ばれますね、もしくは全裸マン」

「どういうことなの…」

「「 だーっはっはっは! 」」


バトーとミーシャが腹を抱えて笑っている。


「ワシはそろそろ行くかの、周りの迷惑にならん程度に寝るんじゃよ」

「「「「 ありがとうございました~ 」」」」


シーラさんは水の中に帰って行った。


「俺達もそろそろ寝ようぜ」

「そうだな、明日も早いしな」

「バトー、あとどれくらいでポッポ村に着くの? いい加減お尻が痛いわ」

「あと2日くらいだな」

「そう…遠いのね」

「お尻無くなるかもしれませんよ…」


お尻を擦り諦めの境地に達するルドルフ。

松本が同じ顔でお尻を擦っている。


「片付け終わったら焚火消しますよー」

「いいぞ、消してくれ」

「よっしゃ、寝るか」

「お休み皆、明日起こして頂戴」

「了解、しっかり休めよ」

「お休みなさい、布団気持ちいい~」

「「「 マツモトずるいぞ(わよ) 」」」

「これは俺の布団、俺の国です。おやすみなさい!」

「「「 おやすみ~ 」」」


バトー、ミーシャ、ルドルはそれそれ貸しテントに入り

松本は馬車の荷台で布団に入った。


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