63話目【巨大モギの分配について】
巨大モギ討伐後の酒場は冒険者で賑わっていた。
「どうやってモギ倒したんですか?」
「1人で尻尾と指切ったて本当なんですか?」
「この少年はなんで裸だったんですか?」
酒場の端でモギ肉を囲む松本達のテーブルに目を輝かせた冒険者達が詰めかけていた。
「仕留めたのはルドルフの魔法よ~、『爆炎のルドルフ』さんに聞きなさ~い」
「ちょっと、カルニ!?」
「おーい、皆ー! 仕留めたのはルドルフさんらしいぞー!」
「凄ーい! 流石Sランク冒険者!」
「なんで『爆炎』なんで字名なんですか? っは!? もしかしてあの爆発って…」
「是非、あっちで話聞かせて下さい!」
「席開けろー! Sランク冒険者『爆炎のルドルフ』さんのお通りだぞー!」
「覚えてなさいよカルニー!」
巨大モギを仕留めた英雄『爆炎のルドルフ』は別なテーブルに引きずられていった。
「皆興味深々なのよー、しっかり説明してあげてねールドルフ」
モギ肉を頬張りながらカルニが手を振っている。
松本達の前にはこんがり焼けたモギ肉の塊が置かれている。
「さて、バトー、ミーシャ、マツモト君、こっちテーブルはモギの分配について決めましょう。
当然、討伐に参加した者に所有権があるけど…どうする?」
「そうだな、あの大きさだからな…俺はポッポ村に持って帰るモギ肉が欲しい。
それより馬車が壊れたから買いなおさないとな」
「俺は別に何もいらねぇかな、依頼達成の報酬貰ったし、モギ肉も食べたしな。
バトーはモギの素材で剣と盾を新調した方がいいんじゃねぇか?
俺は【熊の手】があるけどよ、お前の市販の既製品だろ?」
ミーシャの愛用のバトルアックスは正式名称【月熊の爪】通称【熊の手】である。
「そうだなぁ、加工代掛かるしな…馬車も買わないといけないし…」」
ミーシャの提案に悩むバトー。
バトーの力量を考えれば既製品には荷が重い。
「マツモト君は?」
「俺もモギ肉が欲しいですね、友達に分けてあげたいので。それと…未成年って武器禁止でしたよね?」
「剣とか槍とか刃物は駄目だけど、それ以外なら大丈夫よ。日用品ならナイフとかも大丈夫なんだけどね」
盾とか棍棒とかならいいってことか…
う~ん…良い物持ってても使いこなせないし…まだ必要無いか
それよりはナイフが欲しいかな、今のナイフはあまり丈夫そうじゃないし。
「日用品のナイフが欲しいんですけど加工代って高いんですか?」
「ナイフ位ならそんなに高くないわ、バトーはどうするの?」
「う~ん…」
悩むバトーにミーシャが助け舟を出す。
「カルニ、余ったモギやるからよ。バトーとマツモトの加工代出してくれよ。
どっちにしろあんな巨大なモギ処理しきれないし、ルドルフの取り分除いても余るだろ」
「いいわよ、モギ肉と素材でギルドの収入になるし。馬車の件もデフラ町長にお願いしてみるわ」
「決まりだな、バトーとマツモトもそれでいいか?」
「問題ない、よろしく頼むよカルニ」
「俺もそれでお願いします」
「じゃ、決定。ギルドの収入が増えて私も助かるわ。
明日は朝からモギの処理よ、体力使うから今のうちにしっかり食べておいて」
「「「 もう食べてまーす 」」」
モギ肉を囲み頬が膨らむ4人。
「バトーさん! あの硬いモギの指切ったって本当ですか?」
「ミーシャさん! 牙を砕いたら馬車が四散したってどういうことですか?」
『ちょとあっちで話聞かせて貰ってもいいですかー?』
バトーとミーシャが別なテーブルに引きずられていった。
松本とカルニの2人だけになったテーブルに忍び寄る影が2つ。
「カルニ姉さん! この子は裸で何してたんですか?」
「それはマツモトに聞きなさいよ、オリー」
「へへ、そういわずに私達とあっちでいいことしましょうよカルニ姉さん…」
カルニを背後から羽交い絞めにするシグネ。
「ちょっとシグネ、酔っぱらってるわね? オリー何とかして…」
「フフフ…」
オリーの目が怪しく光っている。
「オリー!? あなたもなの?」
『ウフフフフフ…』
「ちょっとー!? 誰か助けてー!」
カルニ姉さんがシグネとオリーに運ばれていった。
酒場の入り口では、目を輝かせたエリスとステラが手招きしていた。
頑張れカルニ、残ったモギ肉は俺に任せろ。
モギ肉最高~!
ソーダを片手に敬礼する松本、転生し若返った体でモギ肉を堪能していた。
翌日、巨大モギ解体にへ向かう冒険者達は馬車の荷台で二日酔いに苦しんだそうな。
何故かカルニ軍団は艶々していた。
巨大モギは昼過ぎには解体された。
モギ肉、硬い鱗、爪、牙、骨、使用出来そうな素材は回収され、内臓類は魔法で焼却された。
討伐後の処理が大切なのだ。
バトーにはポッポ村用のモギ肉、松本には友達用に10キロのモギ肉が6個渡された。
ルドルフは特に必要な物はなかったらしく、40メートルに及ぶ巨大モギは
ほぼ全てカルニに委ねられ、ウルダのギルドの活動資金となった。
新人の教育や、依頼を出したいが報酬を用意できない町民の援助などに当てられるという。
モギ肉を受け取った松本は馬小屋でゴンタを待っていた。
「あ、きたきた。おーいゴンター」
「おうマツモト! 無事にモギ倒したらしいな」
「俺は何もしてないんだけどね、殆どモギの口の中にいたよ」
「いやそれ…食われてんじゃねぇか…」
「それより、これを渡そうと思って待ってたんだよ」
モギ肉をゴンタに渡すマツモト。
大きな葉っぱに包まれ、紐で縛られている。
「貰っていいのか?」
「昨日約束したからね。こっちがモギ肉、こっちは油身だから料理するときに使ってよ」
「油身って何に使うんだ?」
「鍋の表面に油の代わりに塗ると香りが付くんだよ、お母さんに渡せば分かるさ」
「ありがとよ、母ちゃん喜ぶぜ」
大きなモギ肉を両手で抱えてゴンタが笑う。
「ゴンタの元取巻きの子達にも渡して欲しいんだけど、お願いできるかな?」
「昨日いた奴らだろ? いいぜ、丁度この後ここに来るからよ」」
「よろしく頼むよ、これがその達の分ね」
追加のモギ肉をゴンタに預ける。
「カイ達にも渡したいんだけど、家知らないかな? 確か南区の筈なんだけど」
「それなら…」
地面に簡単な地図を書き説明してくれるゴンタ。
「なんとなく分かったよ、ありがとうゴンタ、行ってみるよ」
「おう、ありがとうなマツモト」
ゴンタに10キロ、元取り巻きの3に人に合わせて30キロ。
残りの20キロはラッテオとカイとミリの兄弟分である。
20キロのモギ肉を抱え、松本は南区を目指す。




