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62話目【討伐依頼とウルダ祭の終わり】

城壁に集まった冒険者達はギルド長達が向かった草原に大きな光と煙を見た。

正体不明の光と煙に冒険者の間に不安が広がる。

遅れて聞こえて来た爆音で先程の光が爆発だと理解したが、

その巨大な爆発がいったい何によるものか見当が付かず、さらに不安が増す。

巨大モギと共に草原へ消えたカルニギルド長達の安否が心配された。


「心配するな! カルニギルド長達はご無事だ! 我々は任せられた町の警戒に努めるのだ!」

「そうよ! カルニ姉さんはきっと無事よ! 皆落ち着いて!」

「警戒を怠らないでー! 町を守るのよー!」


不安がる冒険者達を鎮めるアクラスとカルニ軍団のシグネとオリー。


「シグネ、オリー! ちょっと来てー!」

「アクラスも急いで!」


城壁の見張り台からエリスとステラが手を振っている。


「どうしたのかしら?」

「とりあえず行きましょ、オリー、アクラス」

「そうだな、急ごう」


城壁を上がる3人、エリスとステラが望遠鏡を覗き込んでいる。

キャッキャする2人にシグネが声を掛けた。


「どうしたの? いきなり大声出したら皆不安になるでしょ」

「ごめんごめん、シグネちょっとこれ見て!」

「オリーもこっち」


エリスとステラから望遠鏡を受け取りシグネとオリーが煙の上がる草原を覗く。


「えっ!?」

「うそでしょ!?」

「左に皆いるでしょ? きっとそうよ~」

「やっぱりカルニ姉さんは素敵ねぇ~」


望遠鏡を覗き驚くシグネとオリーの横でエリスとステラがクネクネしている。


「いったいどうしたというのだ? 私にも見せて貰えないか?」

「はい、アクラス、煙の下の方よ。大きいからすぐ分かるわ」


シグネから望遠鏡を受け取りアクラスが草原を覗く。


「なんと!? では先程の爆発は…」

「遠くてよく分からなかったけど、多分ルドルフさんの魔法だと思うわ」

「本当に巨大モギを討伐したのよ~」

「キャ~カルニ姉さんスゴ~イ!」

「ルドルフさんスゴ~イ!」


説明するエリスの後ろでステラとシグネとオリーがクネクネしている。


「確認に向かおう、人手が必要かもしれない」

「「「「 さんせ~い! 」」」」

「いや…クネクネしないでもらえないか…重要な役目なのだよ?」


クネクネするカルニ軍団とアクラスが馬車に乗り込む。


「恐らくだが、ギルド長達がモギを討伐されたようだ」

「本当ですか!?」

「あのモギをですか!?」

「信じられない…」


アクラスの言葉に耳を疑う冒険者達。

驚きと喜びの声が聞こえる。


「今から我々は確認へ向かう。念の為、デフラ町長に連絡を。 

 討伐成功なら魔法を上空に3つ、失敗なら1つ上げる、誰が見張り台から確認して欲しい」

「分かりました」

「討伐成功ならモギの処理が必要になる、人手を送って欲しい」

「任せて下さい!」

「よろしく頼む」

「「「「 いってきま~す! 」」」」


アクラスが冒険者に事後処理を説明し、クネクネするカルニ軍団と共に草原に向かった。




火が燻る草原と巨大モギ、肉の焼ける香ばしい匂いが漂っている。

松本達の元にポニ爺が戻って来た。


「お、ポニ爺無事だったか!」

「そのポニコーンにも感謝しないとな」


バトーとミーシャの会話を耳に手を当て聞こうとする松本。


「マツモトなにやってんの?」


後ろからルドルフが声を掛けるが松本は反応しない。


「ちょっと聞いてるのマツモト!」

「え? ルドルフさん呼びました?」


ルドルフが大きな声で呼ぶと松本が振り向いた。

一緒に他の3人も振り向いた。


「どうしたのよルドルフ? 大きな声出して…」

「気にしないでカルニ、マツモトが変なのよ」

「マツモトは基本的に変だろ」

「そうだぞルドルフ、マツモトだぞ」

「あんた達ねぇ…」


賛同するバトーとミーシャ。

松本が耳に手を当て4人の会話を聞き取ろうとしている。


「ん? もしかしてマツモト君聞こえてないんじゃない?」

「そうなのマツモト? マーツーモート!」

「? どうしましたルドルフさん?」


ルドルフを見る松本。


「もしかしてよ、鼓膜敗れてるんじゃねぇか?」

「ずっとモギの口の中にいたからな、あの鳴き声でやられたのかもしれないな」

「どれどれ?」

「いたた、ルドルフさん耳引っ張らないでください」

「じっとしてなさい! ん~? 耳に血が付いてるわね」


左の耳を引っ張るルドルフ、右の耳をカルニが引っ張っている。


「こっちも付いてる、これ両方共鼓膜破れたみたい」

「なるほどね」


ルドルフの杖が光ると松本に音が戻った。


「ん!? 聞こえる! お~聞こえる~」

「両方の鼓膜が破れてたのよ、気付きなさいよまったく…」

「ルドルフさん、ありがとうござます。

 いや~初めて鼓膜破れたもので、さっきの爆発の影響で一時的に聞こえないのかと思ってました」



転生前でも鼓膜破れたことなかったからな

一度に両方破れたら、経験が無いと気が付かないって…

鼓膜は破れても自然に治るらしいけど、治癒魔法なら一瞬か…

魔法ってやっぱり便利だな。



「マツモト君、どうやってモギから出て来たの?」


全裸の松本にカルニが問う。


「飲み込まれないように喉の手前で踏ん張ってたら左の奥歯に移動しまして…

 その後、この辺に引っかかりまして…」


自分の口を開け奥歯の横を指さす松本


「歯茎を炎魔法で炙ってたら飛び出しました」

「それでモギがあんなに苦しんでたのね。ところでなんで裸なの? パンツ履いてたでしょ?」

「パンツは歯に引っかかって破れました。

 その際、俺のウィンナーが噛まれましたけど、カルニさんの強化魔法で助かりました。

 本当に、本当に、ありがとうございました」

「そ…そう…どういたしまして…」


深々と土下座する松本。


「だーっはっはっは…」

「なーっはっはっは…」


バトーとミーシャが地面を叩きながら笑い転げている。


「2人も、笑い事じゃないでしょ…」」

「いやだってよルドルフ…だーっはっはっは…」」

「俺達が必死な時にウィンナーだぞ? なーっはっはっは…」


笑うバトーとミーシャに杖を向けるルドルフ。


「あんた達のウィンナーも焼いてあげましょうか?」

「「 すみませんでした 」」


2人はシュンとした。





暫くしてアクラスとカルニ軍団が乗る馬車がやって来た。


「「「「 カルニ姉さ~ん! 」」」」

「ちょっと!? あなた達離れなさい…」


カルニがカルニ軍団に揉みくちゃにされているため

バトーがアクラスに対応している。


「みなさん、ご無事ですか?」

「皆無事だ、モギも討伐出来たぞ」


横たわるモギを確認しアクラスが空に魔法を3つ放ち、上空で爆発した。


「どうしたんだアクラス?」

「討伐が成功した合図を送りました、じきに他の者達が来ます。モギの処理に人手が必要でしょう」

「仕事が早いな、カルニが言う通り優秀だ」

「はは、先ほど未熟さを痛感したばかりです…しかし、よく討伐できましたね」

「ルドルフの魔法で一撃だ」

「なんと、では先程の魔法はルドルフさんの…」

「火の上位魔法だ、危うく俺達も死ぬところだったけどな」

「このモギの左指も魔法で?」

「いや指は俺が切った、あっちに落ちてるのはミーシャが切った尻尾だな。あと腹の傷も俺とミーシャだ」

「この鱗を断ったのか…私はまだ、Sランク冒険者には力不足のようだ…」



その後、他の冒険者達が合流し、モギが少しだけ解体された。

日が落ちて来たのでモギ肉を積んでウルダへ帰還した。




南側の城門では知らせを受けたデフラ町長とロックフォール伯爵が待っていた。

周りには冒険者と町民の姿もある。



「皆さん、本当にありがとうございました」


松本達が馬車から降りるとデフラ町長が頭を下げた。


「ミーシャさん、ルドルフさん、バトーさん、カルニさん、そしてマツモト君。

 見事にモギ討伐の依頼を達成してくれましたね、素晴らしい活躍でした」


ロックフォール伯爵の付き人が5人に革袋を手渡す。


「それでは約束の報酬です、お受け取り下さい」」

「「「「「 ありがとうござます 」」」」」


冒険者と町民から拍手と歓声が送られる。


「礼を言うのはこちらの方です、今後とも宜しくお願いしますよ」


ミーシャとルドルフが苦笑いした。




デフラ町長がバトーとミーシャに問う。


「ところで、『ミノタウロス杯』の表彰式がまだでしたが…

 バトーさん、ミーシャさん、どちらが優勝者となるのでしょうか?」

「そういや決着ついてなかったなミーシャ」

「そうだな、もう1回やるかバトー」

『 え!? 』


その場にいる全員が青ざめた。

武器を構える2人をルドルフが杖で叩く。


「やめなさいよ2人共! 町を破壊する気なの?」

「そうですよ! 勘弁して下さいよ!」

「お願いだからジャンケンで決めて!」

「叩くなよルドルフ…」

「痛いじゃねぇか…」


ルドルフ、カルニ、マツモトに止められ、ジャンケンで決着を付けることとなった。

ウルダ祭初の場外戦である。


「カルニ、審判して頂戴」

「はいはい。いくわよー、じゃーんけーん…」

「「 ぽん! 」」


ジャンケンを制したのはミーシャだった。


「俺の勝ちだー! 悔しがれバトー!」

「くっそー…パー出しときゃよかったー…」

「仲いいですね2人共…」


チョキを出した右手を掴み、大げさに悔しがるバトー。


「決着ー! 『ミノタウロス杯』の優勝者はSランク冒険者、ミーシャー!」


再び拍手と歓声が送られた。


「『ミノタウロス杯』優勝者のミーシャさんには賞金30ゴールドと剣、

 準優勝者のバトーさんには賞金15ゴールドと盾が贈られます」


デフラ町長からミーシャとバトーに賞金と剣と盾が手渡される。

並んで立つ装飾の施された剣と盾が夕日で輝いた。


「略式ですが表彰式とさせて頂きます、これにてウルダ祭を終了致します!」


拍手と歓声に惜しまれながら、デフラ町長が閉会を宣言した。

夕日に染まる城門にて、3日間に渡る力の祭典『ウルダ祭』が終了した。





町民は帰路に着き、冒険者は酒場に集まった。

酒場の中心でカルニがお酒を掲げている。


「皆、お疲れ様! ウルダ祭が無事に終了して、助っ人達のお陰で巨大モギも討伐出来たわ!

 今日は宴よ、好きなだけ飲みなさい!」


『 カンパーイ! 』 


テーブルに並ぶ大量のモギ肉と酒、そして1杯のソーダ。

宴の夜が更けていく。


 


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