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58話目【祭りの後は】

全壊したステージの横で正座するバトー、ミーシャ、松本。

シュンとする3人にルドルフが怒っている。

カルニはロックフォール伯爵とデフラ町長の元で話をしている。

あとでこっちに合流するそうだ、気が重い。


「ステージこんなにしちゃって! 少しは周りの迷惑考えなさいよ!」

「いや、ステージ全壊させてのはルドルフの魔法だろ…」

「なんか言ったかしらバトー? そもそもの原因はステージで暴れ回る馬鹿どもでしょ!」

「「「 おっしゃるとおりでございます… 」」」


ミーシャの巨体が小さくなっている。


「あのーバトーさんとミーシャさんは分りますけど、なんで俺まで正座させられているんですか?」

「あら忘れたのマツモト、さっき私のお尻を叩いてくれたわよねぇ?」


木剣で松本の肩をトントンするルドルフ。


「申し訳ありませんでしたー!」


土下座する松本、実に美しいフォームである。


「カンッ! カンッ! カンッ!…」


地方都市ウルダに警鐘が鳴り響く。


「ったく、あんた達のせいで凄い大事になってるじゃないの」

「すまん…」

「そこまで大事にしなくてもいいだろ…」

「反省してくださいよ2人共…」

「2人のせいじゃないわよ」


正座する3人が振り向くとカルニ、デフラ町長、ロックフォール伯爵が立っていた。


「どういうことよカルニ?」

「どうやら厄介なヤツが町に向かってるらしいのよ」

「「「「 厄介なヤツ? 」」」」


首を傾げる4人にデフラ町長が説明する。


「実は先日、我が町はモギの襲撃を受けたのですが…」

「それってクルミちゃんのお父さんが足を失った件ですか?」

「おや、マツモト君もいたのだね。クルミちゃんとは?」

「魔道義足の男性のことですよ、デフラ町長」


ロックフォール伯爵の補足が入る。


「ええ、その件です。 あの時は西側の城壁を破壊され、町民の住居がいくつか被害を受けました。

 その男性は瓦礫に足を挟まれ、救出のためには切断するしかありませんでした」

「そのモギって討伐したんだろ?」


ミーシャの質問にデフラ町長に代わりカルニが答える。


「いいえ、ウルダの冒険者総出で何とか追い払ったの。モギは尻尾だけ置いてったわ」



あぁ~なるほど。

ポッポ村で食べたモギ肉ウィンナーは尻尾の肉だったのか。

クルミパパの足は食べられてなかったみたいだな…



デフラ町長とカルニの説明を受けたバトー、ミーシャ、ルドルフが違和感を覚える。


「モギが城壁を崩し家を破壊したのか?」

「モギって大体5~6メートル位だろ? 出来なくはないけどよ?」

「冒険者総出で逃がしたのも変じゃない? アクラス1人でも倒せたでしょ?」 


モギを知らない松本は話についていけなくなった。

松本の知るモギは肉汁滴るモギ肉ウィンナーのみである。


「とんでもなくデカいのよ、30メートル近くあると思うわ。

 被害を最小限に留めるだけで精一杯だったの」

「そんなモギいるのか?」

「通常のモギの5倍か…かなりでけぇな」

「同じヤツなの?」

「間違いないわね、尻尾が無いし、何よりあんなデカいヤツは他にはいないわよ」


カルニの説明に頷くデフラ町長。

正座する3人とルドルフは顔を見合わせ半信半疑でパチパチと瞬きしている。


「申し訳ないのですが、町の防衛を手伝っては頂けませんか?」

「防衛か… 俺達あんまり防衛向きじゃないですよ?」

「どうするよルドルフ?」

「受けるしかないでしょ、そのためのロックフォール伯爵でしょうから」


見上げるミーシャにため息を含んだ返事を返すルドルフ。


「おや、察しがいいですね。

 Sランク冒険者のルドルフさん、ミーシャさん、そしてそれに匹敵するバトーさん。

 3人に町の防衛を正式に依頼します。報酬は…」

「10ゴールドだろ? 以前も依頼受けたからな、知ってるよ」


話を遮るミーシャ、ニコリと笑うロックフォール伯爵。


「今回は1人ずつに10ゴールド差し上げますよ、合計30ゴールドです」

「ロックフォール伯爵、50ゴールドに増やしてもらえませんか?」

「といいますと?」

「カルニ、松本、参加しろ」

「私はいいけど、マツモト君も? 危ないわよ」

「マツモト冒険者になりたいんだろ? 報酬は10ゴールドだ。やるか?」



危ないのは間違いないだろう、無理はいけない。

だが、バトーに誘って貰っている、あの化け物みたいに強いバトーにだ。

嬉しいではないか。

すまんゴンタ、命を大切にしろなどと偉そうなことを言っておきながら

俺はこの胸の高鳴りに抗う術を知らない。

中身はいい歳したオッサンなんだがな…いつまで経っても子供らしい。



「もちろん、モギ肉食べたいですからね!」


バトーの誘いに親指を立て笑い返す松本。

松本を見て親指を立て笑うバトー。

「なはは」と笑うミーシャ。

ルドルフとカルニは呆れている。


「いいでしょう。報酬は1人10ゴールド、合計50ゴールドです」

「皆さん、よろしくお願いします」


微笑むロックフォール伯爵、頭を下げるデフラ町長。


「ところでよ、どうしても防衛じゃないと駄目か?」

「?」

「俺達防衛向きじゃないので、倒してもいいんでしょうか?」

「倒す!? モギをですか? 普通の大きさとは違うのですよ…」

「町付近で防衛するよりは楽だと思いますよ、私達攻撃寄りですから」

「デフラ町長、この3人なら大丈夫ですよ…私が保証します」

「よく分からないですけど、モギが可哀相な気がします…」


呆れ気味のカルニと松本。



正座から解放されたバトー、ミーシャ、松本。

ルドルフが痺れた足を杖でツンツンしている。


「これからモギ討伐に行くのよ、しっかりしなさいよ3人共」

「今はやめてくれルドルフ…」

「おいやめろって、まだ痺れてんだよ…」

「あばばばば…やめばばば…」


ヨタヨタする3人を見て少し不安になるデフラ町長。


「カルニギルド長…本当に大丈夫かね…」

「大丈夫ですよ多分…実力は確かなので…」


カルニが状況を説明し、作戦を立てる。

町と畑に被害を出さないように、ウルダから南西の草原で討伐することになった。



南側城壁の外で町の防衛に就くウルダの冒険者。

巨大モギの討伐に向かう4人と1頭。


松本、バトー、ミーシャ、ルドルフ、カルニ、そしてポニ爺が向かう先には

木を薙ぎ倒し、砂塵を上げる規格外のトカゲが待っている。


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