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54話目【ウルダ祭 27 エリス対モント】

『ミノタウロス杯』は順調に進み、残す1回戦は3試合。

ステージ上では杖を持った見覚えのある女性と、剣と盾を持った男性が向かい合っている。

両者共、防具は軽装である。

見覚えのある女性の後ろに、これまた見覚えのある女性達の姿がある。


「しっかりやんなさいよエリス! カルニ姉さんの前で見っともない試合するんじゃないわよー!」

「任せときなさいって! しっかり勝ってカルニ姉さんに良いとこ見せるわよー!」

「エリス、負けたら夕飯奢んなさいよー!」

「何でよー!? 急にそんなこと言い出さないでよシグネ!」

「こっち向くんじゃないわよーそろそろ始まるわよー」


ステージ上に立つのは『エリス』。

声援を送っている3人は『シグネ』『オリー』『ステラ』。

カルニ姉さんを慕う4人の女性冒険者、全員魔法使い。

『ヒヨコ杯』で審判を務めていたカルニ弟子である。

基本的にカルニの追っかけをしている為、冒険者内では『カルニ軍団』と呼ばれている。


「ちょっとギルド長~、カルニ軍団に肩入れしないでくださいよ~」

 

対戦相手の冒険者がカルニに耳打ちする。


「するわけないでしょ、あの子達結構強いから油断すると負けるわよ、モント」

「俺、前衛職ですよ? 後衛職に負けたら引退しますよ」

「なにいってるの、シグネとオリーは1回戦勝ってたでしょ、見てなかったの?」

「あれは新人ですよギルド長。俺一応Cランクですから」

「なら勝ちなさい、後衛職に近接戦の厳しさを教えてあげて頂戴」

「はい~」


モントは気の抜けた返事をしながらカルニから離れる。


「それでは、試合開始ー!」


「よしこーい」


気の抜けた声を出し、剣と盾を構えるモント。

ヒュンヒュンと杖を回すエリス。


「さぁこーい」


モントが盾を剣で叩き、気の抜けた声で挑発する。

回していた杖をバシッと音を立て止めるエリス。


「せぇぇい!」


エリスが掛け声を共に両手で持った杖を振り下ろす。

左手の盾で防ぐモント。


「からの、どりゃぁぁ!」


防がれた瞬間、エリスが体を回転させ後ろ回し蹴りを放つ。


「うそぉぉぉ!? ちょっ、ぐふぅっ…」


突然の肉弾戦に驚くモント、エリスの足が右腹にめり込む。

腹を抑え前屈になり苦しんでいる。


「「「 いよぉぉぉしっ! 」」」


後方からカルニ軍団の歓声が聞こえる。

各々ガッツポーズを取っている。


「ちょ…ちょと…杖は?」

「決まったと思ったけど甘かったようね…おりゃぁぁ!」


杖を横薙ぎし、前屈みのモントの右膝を狙いにいくエリス。


「うわ!? 危ない、なぁ!」

「うぐっ!」


モントは迫る杖を剣で弾き、右から剣を振りエリスの右胴を打った。

よろめくエリスに距離を詰める。


「からの、せいぃぃ!」

「あぶなっ!?」


盾を上げエリスの視界を塞ぎ、体を回転させ左から胴を狙う。

モントの2撃目は杖に防がれた。

確実に決まると思った攻撃が防がれ、驚くモント。


「君、本当に後衛職?」

「正真正銘、魔法使いよ。レディのお腹を打つなんて紳士じゃないわね」

「俺、冒険者だからね~紳士じゃないのよ。 そりゃ!」


会話が終わる前に攻撃を再開するモント。

攻撃を杖で防ぐエリスをどんどんステージ際に押していく。


「後がないよー」

「分かってるわ、よ! だぁ!」


モントの攻撃を杖で弾き、そのまま杖を振るエリス。

軽く盾で防ぐモント。


「甘いよー」


防がれたエリスは後ろ回し蹴りを放つ。 


「おりゃぁぁ!」

「甘い! それはさっき見たよー」


エリスの放った後ろ回し蹴りはモントの右腕で防がれ、

そのまま右手と胴の間に挟まれ、抱き込まれる。

右足を固定されたエリスは背中をモントに見せ、左足のみで立つ不安定な状態である。


「まだよ!」

「お?」


右手に持った杖を外から振り、モントの顔を狙う。

モントは杖を防ぐために、顔の右横で盾を構える。


「おぶっ!?」


杖は盾に当たらず、モントは自分の盾で顔を強打した。


エリスは振る杖の軌道を変え、体を右に捻り背中側の地面に杖を突き立てた。

杖を支えにして、地面を蹴り、左足でモントの構える盾を蹴ったのだ。

モントは自分の盾で視界が塞がり、迫る足を認識することが出来きなかった。

片足の不安定な体勢からの杖の攻撃は大した威力は無いと考え、あまり力を入れていなかった。


「チャンスよエリスー!」

「ここしかないわよー!」

「いけー! エリスー!」


右耳を抑え塞ぎ込むモントを見て、追撃を支持するカルニ軍団。


「どりゃぁぁ!」


飛び掛かるエリス、モントの左手を掴み飛び関節を仕掛ける。

ステージに仰向けに倒れる2人。

モントの左腕を両足の間から引っぱり、手首を固定し肘関節を逆に伸ばして極めている。

完全に腕挫十字固が決まっている。



「おらぁぁぁ!」

「いだだだだ! ギブギブ!」


モントがステージを3回叩き、ギブアップを宣言した。


「ギブアップです! 決着ー!」

「「「 いよぉぉぉしっ! 」」」


後方からガッツポーズをとるカルニ軍団の歓声が聞こえる。

観客からも賛辞と拍手が送られた。



「いだだ…強いね~負けちゃったよ~」

「後衛職だってやる時はやるのよ!」


左腕を抑えながら立ち上がったモントは相変わらず気が抜けている。

杖をヒュンヒュンと振り回し勝ち誇るエリス。


「カルニ様見て下さいましたー? 私の勇姿!」

「凄かったわ、また強くなったわねエリス」

「キャー! ありがとうごさいますぅ!」


大喜びのエリスはステージから走り去り、カルニ軍団に自慢している。


「いや~強いですね~」

「だから言ったじゃないモント、油断し過ぎよ。冒険者辞めるんだったっけ?」

「面目ない、前言は聞かなかったことにして下さい」

「もう少し本気でやりなさいよ。あんたCランク以上の実力あるでしょ?」

「いいんですよ~ランクなんて。俺は楽しく冒険者できれば満足ですから」

「あっそ、ほらステージ降りてモント」

「はい~」 


気の抜けた返事をしモントもステージを降りた。

ステージ横では三つ編みモヒカンの髭、不屈のミーシャが控えている。



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