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38話目【ウルダ祭 11 カルニとルドルフ】

「ウルダ祭、1日目『ケロべロス杯』、これにて終了です! 足元にお気をつけてお帰り下さい!

 なお、明日の『ヒヨコ祭』は正午より開催されます! 参加者の皆様は10時に広場にお集まりください!」


カルニの挨拶により、『ケロべロス杯』は幕を閉じ、観客は帰路に着く。


「いかがでしたか? ロックフォール伯爵」

「力の差を人望で埋めることで一般の者も対等に戦える。実に面白く、そして斬新でした」

「明日は子供達がトーナメント方式で戦う『ヒヨコ杯』です。

 激しくはないですが、かわいい試合をお楽しみ頂けます」

「それは楽しみです。それはさておき、魔道義足の件でご相談したいことが…」

「申し訳ありません、その件は食事の際にお伺いさせて頂けませんか? 

 先程の爆発を調査せねばなりませんので…」

「構いませんよ。気が休まりませんね、デフラ町長」

「それでは、失礼致します」


貴族に挨拶し、秘書と共に去る町長。


「情報は?」

「人的被害は今のところありません。人参農家の柵が壊れたそうですが」

「カルニギルド長も呼んできてくれ。ウルダ祭を狙った襲撃かもしれないからな」


爆発のあった城壁外へと向かうデフラ町長、顔には緊張が見て取れる。




「馬小屋は無事だ、マツモトが瀕死だがな…」

「少しは考えて行動しろよルドルフ…畑の柵だけで済んだからよかったけどよ」

「手加減したでしょ? 悪かったわよ、皆無事だったんだからいいじゃない」

「マツモトは無事じゃないぞ…ミーシャ手を貸してくれ」


馬小屋から干からびた松本を下すバトー達の元に衛兵達が集まって来た。


「お前達! そこを動くな! 事情を聞かせて貰う!」

「ほらな、やっぱり面倒ごとを起こすのはルドルフだろ?」

「昔からそうだったからな、余計なことをするなよルドルフ」

「わかってるわよ、人を何だと思ってるのよまったく…」


バトーが衛兵に説明する。


「すみません、子供の訓練でして…」

「子供って、その脇に抱えてる子か? 大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ、この子は頑丈ですから」


松本、生命の危機である。


「いや大丈夫じゃねぇよ…昨日も干からびてたじゃねぇか…」

「無駄よミーシャ、バトーは昔からそうでしょ…」


ポッポ村には、冒険者が裸足で逃げ出すバトーのしごきに耐えた猛者達がいるのだ。

因みに、バトーの次に強いのはゴードンである。



「ちょっと、マツモト寝かしなさいよ。回復するから」


ヒールとリバイブで一命を取り留める松本。


「なんで膨らむのよ、マツモト…」

「さぁ? 成長期なんじゃないですか? とりあえず助かりました、ありがとうございます」

「マツモトだぞ? 気にしない方がいいぞ、ルドルフ」

「お前の中のマツモトはどうなってんだよ…」


膨らんだ松本に衛兵が声を掛ける


「ちょっといいか少年、訓練というのは本当か?」

「本当です。お騒がせして申し訳ありませんでした。『ヒヨコ杯』のために訓練してもらっていたんです」

「そうか、うーむ…お、少し待て」


衛兵達の元にデフラ町長と秘書、カルニを含めた数人の冒険者が現れた。

冒険者はデフラ町長を囲み襲撃を警戒している。

衛兵の一人が秘書に経緯を説明すると、カルニが呆れた様子で口を開いた。


「デフラ町長、大丈夫です。町を狙った襲撃犯じゃありません。身元も保証します」

「知り合いかね? カルニギルド長。Sランク冒険者の2名は私でも知っているが…」

「えぇまぁ… そこの2人はミーシャとルドルフというSランク冒険者です。

 こっちはバトー、ポッポに住んでいます。こっちの子は『ケロべロス杯』でチャンピオンを…いえ人違いです」

「あってますよ…一時的に膨らんでるだけです…」

「まぁ、カルニギルド長が身元を保証するなら問題ないだろう。

 今後は気を付けてくれたまえ、町民が怯えてしまうからね」

「「「「 すみませんでした 」」」」


松本達4人はデフラ町長に頭を下げた。


「君はマツモトというのか。さっきの試合は見事だった、個人的に賛辞を贈るよ」

「いやぁ~ありがとうございます」

「なに、礼を言うのは私の方さ。君達のお陰で助かったよ」

「?」


デフラ町長の言葉の意味は松本には理解できなかった。




 

「それにしてもSランク冒険者とは恐れいる。確かミーシャさんは『ミノタウロス杯』に出場予定だったね」

「「「 えぇ!? 」」」


冒険者達に混ざりカルニが驚いている。


「噓でしょ!? 本当なのミーシャ?」

「おう、出るぞ。 ちゃんと新人には手加減するから安心しろ」

「ま、まぁ、ミーシャだけなら…」

「俺も出るぞ。カルニ、よろしくな」

「んな!? ちょ、ちょっとやめてちょうだい!」


爽やかに笑うバトーを見て焦り出すカルニ。


「どうしたのかねカルニギルド長? 何か不都合でも?」

「この2人はマズいんですよ! 普通じゃないんですから!」

「ギルド長、Sランクのミーシャ様は解りますが、そちは一般の方では?」


カルニの焦り方を見て不思議がる冒険者達。


「あなた達は知らないだろうけど、この男はバトーなのよ!? 金獅子なんて字名があるの!」

「またまた御冗談を、それほどの方なら冒険者として名を馳せてますよ」

「冒険者じゃなくても凄い人はいくらでもいるの! とにかくこの2人は普通じゃないんだから…」


焦り散らすカルニを見て、ルドルフが悪い顔をしてニヤリと笑う。



「あら~? 天下の強化魔法使い『防御のカルニ』様が何を焦っているのやら…

 それとも、あなたの強化魔法はこんな一般人の攻撃も防げないのかしらぁ~?」

「ちょっとルドルフ!? あんたも知ってるでしょ!? 止めなさいよ!」

「何言ってるのよカルニ。バトーはBランクの冒険者よ」

「確かにBランクだけど、当てになるわけないでしょ!? あんたワザと言ってるでしょ!」



わっるぅぅぅぅ…何あの悪い顔…、

バトーが強いって知ってて、絶対ワザと言ってるよ…

あの焦りようだと相当ヤバいんだな…



「はっはっは、強化魔法もあるんだ、心配には及ばないだろう、カルニギルド長。

 それではこれで失礼するよ」

「なんだ、Bランクなら俺と同じだな」

「ギルド長って意外と冗談言うんだな」

「ギルド長、私達先に帰りますので」


デフラ町長達は帰って行き、カルニだけが残った。

 

「ルドルフ…やってくれたわね…」

「何いってんの、いつも私にサポートの重要性を熱弁してたのはカルニでしょ?」

「それは一般人の話よ! こんなパワー系2人当てはまるわけないでしょ!」

「ま、頑張りなさい。カルニ・チ・ン」

「あんた…その名前で呼ぶなって言ったでしょ!」

「自分の本名に誇りが持てないなんて情けない…いい歳して恥ずかしがってるんじゃないわよ!」

「ほっといてよ! 結婚願望の無いアンタには解らないわよ! このガサツ女!」

「私の何処がガサツなのよ! 名前にチンが付いてても男は気にしないわよ! なに乙女気取ってんのよ!」

「あんたに毎回チンチンチンチンいわれる気持ちなんて解らないでしょ!」


ヒートアップする2人の間でマナが乱れ始め、時よりバチバチと光が散っている。


「おいヤバいぞ、止めろバトー!」

「無茶言うな、あんな間に入ったら死ぬぞ! マツモト、何とかしてくれ!」

「2人が無理なのに俺がどうにか出来るわけないでしょう!」

「と、とにかくやるしかねぇ! バトー、マツモト行くぞ!」

「俺がカルニ、ミーシャがルドルフだ!」

「え? 俺は?」

「とにかく行くぞ!」

「おう!」

「え? ちょっと?」

「「「でやぁぁぁぁぁ!」」」


カルニとルドルフへ駆け寄る3人。

バトーがカルニ、ミーシャがルドルフに飛び掛かる。

迷った松本は間に飛び込んだ。


「きゃっ!?」

「ちょっと!?」


カルニとルドルフは引き離され倒れる。

2人の間で均衡を保っていたマナは弾け、光と共に衝撃が走った。


「ぐふぅぅぅぅぅぅ!?」



中央広場からはキノコ雲と宙を舞う松本が見えたという。

騒ぎを聞きつけ、再度集まった衛兵達とデフラ町長にカルニとルドルフはがっつり怒られた。

その後、ポニ爺の背中で瀕死の松本が発見されたが、蘇生された為、

一連の騒ぎの被害は人参多数、柵20本、フランスパン1個、馬小屋の屋根1枚、人的被害無しと報告された。


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