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36話目【ウルダ祭 9 路地の裏側】

カイとミリーと別れ、ゴンタの元に向かう2人。


「ゴンタはいつもこの辺にいる筈だよ」

「あ、いたいた、ちょっとラッテオは下がっててね」



南地区の路地裏でゴンタを取り巻きが慰めている。


「ゴンタ様が負けるなんでおかしいですよ!」

「そうですよゴンタ様、あんなのまぐれですよ!」

「1回負けただけじゃないですか、元気出して下さいよ!」

「くそっ、でも約束だからよ、仕方ねぇ…アイツさえいなければ俺様が勝ってたんだ、ふざけやがって!」


「なんだ、思ったより元気そうだなゴンタ」

「あ? なんだお前、1回勝ったくらいで調子に乗るなよ!」

「強い者が偉いんだろ? 勝った俺に従うんじゃないのかなぁ~?」  


下種な笑みを浮かべる松本に顔を近づけ、ゴンタが睨みつける。


「ふざけるなよ、3体1で負けたんだ、あんなの無効だろ。それとも今ここで俺様と戦ってみるか?」

「やれやれ、お前は何も学んでないな…あぁ!?」

「ヒェッ!?」


松本の狂気を近距離で受けたゴンタはその場に崩れ落ちた。

そう、松本の常軌を逸した狂気は、森の絶対王者ムーンべーアーすらも裸足で逃げ出すのだ!

因みにニャーン貝も捕獲されるのだ。





パンツ姿で正座させられ震えるゴンタに戸惑うラッテオと取り巻き達。

松本が説教している。


「いいかいゴンタ君よ、人にはやられて楽しくないこと、不快に思うことがあるのだよ」

「はい…」

「君は今楽しいかね?」

「楽しくないです…辛いです…」

「そうだろうとも。普通の人は君と同じ状況は楽しくない筈だ」

「はい…」

「周りを力で従えて君はとても気持ちよかっただろうが、逆はどうかな? 毎日俺にパン買ってきたいかな?」

「気持ちよくないと思います…パン買いたくないです…食べたいです…」

「そうだろうとも! パンは食べたいものだ! 君はいい感性をしているよー」

「ありがとうございます…」

「しかし、人によって感じ方は異なる。同じことでも楽しい人と、そうでない人がいるわけだ、わかるかな?」

「わかります…」

「そう、それを判断することは難しい。そこでまずは『自分がやられてどう思うか』から初めればよい。

 その後に相手の事を知っていけばよいのだ。」

「少し難しいです…」

「まぁとりあえず、自分が嫌なことは相手にやってはいけないってこと」

「はい…」

「自分が相手に取った行動は自分に帰ってくるよ。『他人は自分を映す鏡』なんだよ。完全ではないけどね」

「はい…すみませんでした…」


ションボリしたゴンタに衝撃を受けるラッテオ。

取巻き達はゴンタに対して調子に乗り出した。


「パンツ姿で怒られてやんの、カッコ悪~」

「もうお前には従わねぇよ! 俺に逆らうなよ!」

「パン買って来いよゴンタ! ハハハハ…ん?」


ゴンタを囲みポカポカ蹴る元取巻きの肩に、右手を置く松本、左手を前に出し広げている。


「おい、いま何聞いてたんだよ…ゴンタに説明しただろ?」

「ゴンタにだろ? なんだよこの手?」

「脱げよ…」

「「「 え!? 」」」

「今すぐ服を寄越せよ…あぁ!?」


ゴンタの横に3人のパンツが並ぶ。松本の説教で全員ションボリした。





「全員立て、次に行くぞ…」

「え!? マツモト君、次って…」

「すべてのチームを説教する必要があるからね。ラッテオは先に帰って大丈夫だよ」

「そ…そう? 頑張ってねマツモト君…(えぇ…ほんとに8歳なのかな…)」


松本の人生観溢れる説教に戸惑いながらラッテオは去っていく。


「おら行くぞ!」

「あ…あの…パンツでですか? 流石に恥ずかしいんですけど…」

「さっき自分が嫌な事は人にやるなって…」

「そうだな…」


服を脱いで畳み、通路の脇に置く、安堵するゴンタと取り巻きの前に立ちはだかるパンツ松本。


「…あ、あの…」

「行くぞ!」

「いや、そうじゃなくて!」

「服着たいんですよ!」

「自分が大丈夫だからといって…他人が大丈夫いうわけでは無い…わかるな?」

「「「わかります!」」」

「本当に…?」

「「「本当です! 理解しました!」」」


松本の狂行にビビりまくる子供達。


「もし、理解できないなら…」


自分のパンツに手を掛ける松本、少しずつ下がっていく。


「本当にわかりました!」

「すみませんでした!」

「これから頑張りますから!」

「よろしい! 言っておくが…俺は村で1ヶ月以上、腰布だけで過ごし、ウィンナーを揺らし続けた実績がある。

 ウルダ祭の会場を全裸で横断するこも厭わぬ男だ‼ 気を付けろるんだな…」


自身満々に語られる松本の狂気、次元の違う変態である。



「全員服を着ろ、行くぞ!」

「「「はぃぃ!」」」





「なんだぁこのガキは? この俺を西区トップと知っての…」

「脱げよ…」



「丸腰で東区に乗り込んでくるとはいい度胸…」

「脱げよ…」



「北区を統べる知将とは私の…」

「脱げよ…」



その後、各区の路地裏では正座させられたパンツの目撃が相次いだ。

この日を境に、殺伐とした力による序列制度は崩壊し、無邪気な子供の世界が返ってきた。

小競り合いやケンカはあるが、自由にお菓子買い友達と遊べる、そんな世界。

新たな秩序をもたらした善王は、爪のアクセサリーを身に着けていたという。


それと並行し、子供達の間では恐ろしい噂が囁かれていた。

人に酷いことをすると、恐ろしい狂王によって服をはぎ取られ、全裸で広場を歩かされると。

だが、その姿を見たものはいない…後に当時各区のトップだった者達は口を揃えて存在を否定したという。


その狂王の名はマツモト…『狂王パンツマツモト』 

誰も見たことない都市伝説である。



「おい、お前達…俺は今離れた村に住んでいて毎日目を光らすことが出来ない。

 町の治安はお前達4人が維持しろ、もし次に来た時にふざけたヤツがいたら解ってるな?」

「「「はぃぃぃぃ!」」」

「よろしい! 素直な子にはパンをあげよう!」


地方都市ウルダの路地裏で子供達はパンを齧る。



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