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289話目【爆弾解除と鳥】

松本達がダナブルを出発して5日目。


「う~ん…どう見ても私のものだよなぁ…」


王都にある王城の一室でヨトラムが白色の甲冑を見で訝しんでいる。


「擦れていたベルトも新調されてるし、綺麗に磨かれてピカピカだ、

 おまけに家においてあった筈の剣と盾も揃ってる、う~ん…これは…

 カード王の演説に立ち会えと言われた時点でおかしいと思ったんだよなぁ、 

 しかしいったい誰が? 見つからないように倉庫の奥に隠しておいた筈なのに…」

「私が城中を探し回り回収しておいたのです」


ノックもせずに青年が扉を開けて入って来た。


「白帝の象徴たる美しくも芸術的な甲冑を藁と一緒に木箱に詰め込むなんて…

 そのような横暴が許されるとお思いですか父上! いえ、断じて許される筈がない!」


そう、この握り込んだ拳を付き上げプンスカしている青年はヨトラムの息子、

名をヨキアと言い、御年20歳の正当な王家の血筋である。


「8年です、8年、父上8年、8年ですよ」

「…何がだ?」

「この件に関して、私が父上に直接苦言を申し上げるため我慢し続けた年月ですよぉぉ…」

「(近いなぁ…)」


歯をギリギリ鳴らしながら血走った目でメンチを切っている、

相当不満が溜まっていたらしいが王族が見せて良い顔ではない。


「白帝と雷光を誰よりも尊敬し、最も近くで応援し続けたこの私がぁぁ…、

 無造作に詰め込まれ藁まみれになった鎧を見つけた時に、

 どれ程落胆したかお分かりになりますかねぇぇ…?

 失くしたなどという父上の薄っぺらい嘘にどれ程失望し…ぐほぁ!?」

「邪魔ですわお兄様! 民から愛され慕われていた白帝と雷光を

 最も尊敬し応援していたのはこの私! ですから苦言を呈する役目もこの私ですわ!」


兄を付き飛ばして現れたのはヨトラムの娘、

名をコルレナと言い、御年17歳の正当な王家の血筋である。


「お父様! 8年前に白帝が退くと聞いてどれだけの民が悲しんだかお分かりになりますか?

 いいえ、お分かりになる筈がありません! だってお父様は人の声に耳を傾けませんものねぇぇ…」

「(近いなぁ…)」


下唇を噛みながら血走った目でメンチを切っている、

相当不満が溜まっていたらしいが王族が見せて良い顔ではない。


「別にそんなことは…」

「無いとは言わせませんわ! だって8年前に私が泣いて引き留めても

 まったく、少したりとも、本当の本当に全然聞いて下さらなかったではありませんか!

 幼かった私はあの日大人になったのです、この世界にはどれだけ望んでも叶わない願いあると、

 例え王族の娘であろうとも他の子供と何1つ変わらない、

 特別なことなど無く只生まれた場所が違うだけなのだと知りましたので、

 正しい認識と世界の厳しさを教えて下さったのは他でもないお父様ですわ! 

 とても感謝しておりますぅぅ…どうもありがとう御座いましたぁぁ…」

「ははは、そうやって素直に感謝されると照れるな」

「今のは嫌味ですわよ! きぃぃこれだからお父様は…ほぎゃぁ!?」


じだんだを踏んでいると突き飛ばされた。


「もう気が済んだだろ妹よ、次は私の番だ、良いですか父上! 今一度正しくご理解頂きたい!

 白帝とは只のSランク冒険者ではないのです、極めて異質で特別な存在、

 言うなれば希望、皆を分け隔てなく照らし勇気を与える白き太陽!

 一言声を掛ければ弱き者達の心に火を灯し、手を差し伸べれば膝を付き俯いた者達が奮い立つ」

「うん、転んだ者に手を差し伸べるのは人として当然のことだな」

「心のぉ! 感情の話です! 転んだ方を手助けることなど私にだって出来ますよ!

 そうではなく白帝には人の心を動かす魅力があったと…うごぉ!?」

「違いますわお兄様! 白帝の魅力はその立ち振る舞い、背中で語る生き様にこそあるのですわ!

 王族でありながら最も危険な場所に立ち、その身を挺し迫りくる脅威から仲間を護る、

 鋭い状況判断と的確な指示でチーム動かし、どのような苦境に陥ろうとも最後は必ず覆えす、

 そう、白帝とは王族のあるべき姿そのもの! 民を護り導く偉大な指導者の理想形!

 加えて、王族でありSランク冒険者という一見近寄りがたい立場でありつつも、

 砕けた態度と誰にでも等しく笑顔で接する親しみ易さ…んご!?」

「途中で話を遮るな妹よ! 私の言いたいことはまだ…」

「お兄様こそ邪魔をしないで下さい! 伯爵の何たるかも正しく理解されていないくせに…」

「「 ぐぬぬぬ… 」」

「はいはい、そこまでよ2人共、時間がないから喧嘩は余所でやって、お願いします~」

『 っは! 失礼します! 』


部屋に入って来たモレナが手を叩くと屈強な近衛兵達が雪崩れ込んで来た。


「離して下さい、ちょっと…私はまだ父上に…」

「酷いですわお母様~!」


近衛兵達に担ぎ上げられて2人は強制的に退出させられた。


「やれやれ、未だに根に持ってるとは思わなかったな」

「ずっと私達の活躍を見て育ったんだもの、仕方がないんじゃない?」


ファンとアンチは表裏一体であり些細なことで立場を一変させるもの、

最もコアなファンだった息子と娘は現在白帝アンチサイドである、

因みに、母親である雷光に関してはずっとファンサイドである。


あくまでもSランク冒険者の白帝と雷光に対しての感情なので、

ヨトラムそのものを嫌っている訳はないという実に厄介で複雑怪奇なアレである。






「Sランク冒険者としての私の実力はそう高くはなかったんだがなぁ、モレナの方が強かったし」

「確かに攻撃面に関しては今も昔も私の方が上ね」

「そうだろう、現役達と当時の私を比べてみても一番下だ、

 皆攻撃面に優れているから守りが強みの私では決め手に掛ける、勿論良い勝負するだろうがね」

「いいえ、貴方が一番よ、白帝の強みは理解力と信頼感、

 私以上に私のことを見ていてくれたから実力以上の仕事が出来た、

 貴方が私を信じて全てを委ねてくれたから、私も貴方に全てを委ねることが出来たの、

 今も昔も共に戦う上で白帝以上に周りを活かせる人はいないわ」

「ははは、モレナから褒められると素直に嬉しいな、付き合いが長いぶん言葉の重みが違う」

「それだとちょっと…なんか老いたと言われているみたいで複雑かも…」

「勘ぐり過ぎだって、長年チームを組んでたって意味だよ」

「それは分かってるけど、なんか…ねぇ? もう50歳だし…最近シワも気になっちゃって…」


モレナが頬杖をついて溜息を付いている。


「モレナはいつだって綺麗さ、気にし過ぎ…」

「失礼、愛を語るのは後にして下さいヨトラム兄さん、主役が遅れるなど許されません」

「そうですよ、カード王がお待ちなんですから早く準備しなさい、

 お母様が怒鳴り込んで来ても知りませんからね」

「私達は先に向かいますので後のことはよろしくお願いしますね~モレナさん」


開けっ放しの扉から40代と思われる男女が次々と言葉を残して去って行った。


「ヨフラン達も参加するのか」

「全員参加よ、王族は姿を見せるだけでも影響力があるから」

「まぁ、確かにな」


先程の男女はヨトラムの姉弟で登場順に紹介すると、

ヨフラン(弟)47歳、アメルマ(姉)51歳、カタリエ(妹)46歳、

今まで触れてこなかったがヨトラムは4姉弟である、

カード王国としては非常に重要な人物達だが、

物語としてはそんなに重要ではないので忘れて問題ない。





「主役だとか言われても私はカード王の演説としか聞かされていないのだが…

 はて? これは一体どういうことだ? ん~分からないなぁ?」


ヨロラムが顎に手を当てながら鎧とモレナを交互に見て言葉を待っている。


「…、ヨトラム、本当に説明が必要?」

「いや、理解しているさ、でもこれを着ると後が大変なんだよなぁ…」

「Sランク冒険者の派遣には貴方も賛成したでしょう、責任は取って貰わないと」

「君も賛成した筈だけど?」

「そうよ、だからこれを貴方に着させるのが私の責任」

「なるほど、そう来たか」

「さぁ、手伝うから急ぎましょう」

「やれやれ仕方がないか」


夫婦が共同作業で鎧を装着しているころ、

先程顔を見せた移動中のヨトラムの姉弟達は。


「あんなものパパっと着ちゃえばいいのに何を拘ってるんだか…

 そう思いませんかアメルマ姉さん?」

「拘っている余裕がないのは確かね」

「(ん?)それだけですか?」

「まだ何かあるの?」

「だってアメルマ姉さんってヨトラム兄さんのこと嫌ってませんでした?

 立場をわきまえずに勝手なことばかりするって」

「そりゃ怒ってはいたけど嫌ってるとは別よ、結果論だけど実績は認めてるわ」

「そうですか? それなら別にいいですけど…」


妹のカタリエが一番後を歩きながら姉の顔色を伺っている。


「(意外とあっさりね、少し想定外だけどこの様子だと大丈夫そうだわ、

  問題はこっちよねぇ…普段から仲が良いとはいえ内容が内容だし…

  っは!? 危ない危ない、取り敢えず明るい感じで軽い話題から突いてみましょう)」


一瞬曇った表情を咄嗟に笑顔に変え前を歩く兄のヨフランに狙いを定めた。


「ねぇヨフラン兄さん、ヨトラム兄さんって白帝と呼ばれるのを嫌がるじゃないですか、

 あれって何故なのでしょう? 私としては誇らしい呼び名だと思うのですが」

「白帝の存在感は凄かったからね、未だに根強い人気があるんだから大したものだよ、

 だからといっていつまでも居座られて後に続く者達はやり難いだろう、

 役割を終えた者には引き際というものがある、ヨトラム兄さんとしては

 白帝なんてさっさと忘れて現役のSランク冒険者達にもっと目を向けて欲しいのさ」

「なるほど、そういうことでしたか(ここまではいつも通りって感じね)」


注意深く顔色を伺っている。


「ヨフラン兄さんはヨトラム兄さんと仲が良いですけど、

 実際のところどうなんですか? ほら、昔はいろいろありましたし」

「確かに、ヨトラム兄さんは昔から人の忠告を聞かずやりたい放題で、

 私はカード王の跡取り役としてヨトラム兄さんの分まで厳しく躾けられた、

 ははは、実に困ったものだよ、正直に言えば妬ましくて仕方がなかった時期もある、

 だが今はそのおかげで何とか民を繋ぎとめられそうなんだ、

 私も苦労した甲斐があったということさ、ははは、影の立役者ってところかな」

「(割と好意的な印象…時間も無いしここで本題に踏み込むしかないか…)

 それでいいんですか? 今回の件が上手くいったら時期王はヨトラム兄さんですよ、

 外で好き勝手やってた人にいきなり王位を奪われて悔しくないんですか?」

「ないね、全くない、元々第一継承者はヨトラム兄さんなわけだし」

「そうですか? それなら別にいいですけど…

 (あの顔は嘘ではなさそうね、ヨフラン兄さんが人格者で良かった~)」

「気を使わせたねカタリエ」

「え? 何がですか?」

「白々しい、小さい頃から分かり易いのよ貴方は、探りを入れるならもっと狡猾になさい」

「おほほほ…そんな探りだなんて、人聞きが悪いこと言わないで下さいアメルマ姉さん、

 (誰のせいでこっちがピリピリしてると思ってんの!

  いっつも間を取り持つのは一番下の私なんだっての、こんのっ…)」


カタリエがお○松さんのト○ティみたいな顔で姉の背中に思念をぶつけている、

王族以前に40代の淑女が見せてよい顔ではない。


「心配せずとも誰が次期王に相応しいかなんて直ぐに分かるわ、

 ヨトラムがアレを身に付けるか次第だけど」

「それこそ心配いらないでしょう、ヨトラム兄さんは誰よりも白帝の役割を理解しています」

「(ま、王位なんてのは魔王の問題が片付いてからでしょうし、今はいいか…)」 

 





魔王の復活が宣言されてからというもの、人々の不安は日を追うごとに増しており、

各地の代表者達は不安に駆られた住民達が暴動を起こさないように細心の注意を払っている。


各国の中で最も危機感を募らせていたのは魔王の復活場所となるカード王国、

更にその中で最も危険視されていたのは最初に襲撃を受けることなる地方都市ウルダである。


だが、魔王復活を目前にして最初に暴動の危機に直面したのは

なんとカード王のお膝元である王都バルジャーノであった。


管理を任されているレジャーノ伯爵の対応に落ち度があったわけではない、

むしろ自ら足を運び不穏分子となりうる者達の処遇を判断するなど、

他の伯爵達よりも主体的に尽力していたと言える。


では何故このような事態に陥ったのか? 原因はSランク冒険者である。


国家滅亡の危機に瀕した場合

本来であれば最高戦力のSランク冒険者達は国の存続のために

君主であるカード王の護衛と最重要都市である王都の防衛に付く。


となれば、そこに住む者達としては当然その恩恵に預かれると考える、

だが、蓋を開けてみればSランク冒険者が全てウルダへと派遣されてしまい、

一気に戦力ダウン、町中に蔓延していた根拠のない安心感は消し飛び、

無自覚な現実逃避で覆い隠していた恐怖と絶望がコンニチワ、

不安は瞬く間に膨れ上がり、爆発寸前の触れるな危険状態に発展してしまった。


他の都市からすれば同じ条件になっただけなので、

今更何を言っているのか? 考えが甘過ぎるのでは? 

といった感じなのだが、元々期待していた者達からすれば

フリーフォール並みの落差なので感情が制御出来なくなるのも無理はない、

むしろまだ暴動に発展していないので良く耐えている方である。


そのためレジャーノ伯爵からの要請を受けて

急遽カード王が演説行い住民の不安を軽減する運びとなった。


しかし、いくら慕われているカード王とはいえ、

魔王を前にして根拠のない言葉だけでは力不足は否めない、

ってなわけで、白羽の矢が立ったというか、

もはやそれ以外に爆発を回避する手段がないということで、

信頼に足る実績と実力を兼ね揃えた国民的大人気Sランク冒険者コンビ、

『白帝のヨトラム』と『雷光のモレナ』を復活させ、

なんとかこの場を収めたいという、そんなこんなな大変な状況なのである。


んでもって、もし今回の不安軽減爆弾解除作戦が成功した場合は、

元々防衛団長として防衛の指揮を取る予定だったヨトラムに

『王都の危機を救うために復帰した白帝』効果が追加され、

さらに現役Sランク冒険者抜きで王都の防衛を成し遂げた際は、

ヨトラムの評判は青天井ブチ抜き昇天ペガサスMAX盛り状態に突入する。


そうなれば最早誰にも手が付けられない無敵要塞ザイ○スもビックリの完全無敵な大英雄、

つまり、時期王の座はヨトラムに決定する。


とういうか、実績、実力、人気を兼ね揃えたヨトラム以外が選ばれれば

国民の反感を買うので絶対無理、ほぼ確実とういうか、

ヨトラムが死なない限りは確定路線となる。


ヨトラムの姉弟達は全員王位継承者なので先程の会話はこの辺りの事情が関係している。


一番下の妹のカタリエは第四継承者なので

元々王になる可能性が低く特に思うことはないのだが、

第二継承者のヨフランは自由奔放な兄の代わりに

時期王候補として英才教育を叩き込まれた過去を持つため、

心中を察しつつも揉め事にならないようにと探りを入れていたのだった。







そして演説開始の時間がやって来た、

王都と王城を仕切る城壁の上に王族達が並び、

その手前の道に不安そうな顔の住民達が詰め寄せている。


『 おぉ… 』


カード王と王妃が姿を現すと群衆が疼いたが、

脇に控えていたレジャーノ伯爵が手を上げてその声を鎮めた。


「初めてくれレジャーノ」

「っは、カード王ヨーフス様からのお言葉である! 皆心して傾聴せよ!」


レジャーノ伯爵の声が響き渡ると場の乱れた空気が引き締まった、

因みに、毎度お馴染みの風魔法による会話の拡張は

レジャーノ伯爵の執事であるカーネルが担当している。


「まずはこのような混乱の最中でも理性を保ち、敬意を示し続けてくれる皆に対し、

 1国の王として深く感謝を述べよう、Sランク冒険者という心の拠り所を失い

 不安を感じているのは理解している、だが魔王を討つためには必要な処置なのだ、

 時が経てば経つほどに犠牲は増え、食料は減り、我々は滅亡へと近づいてゆく、

 王都の守りを固めたとしても先は無い、であれば、いやだからこそ、

 私は王としてカード王国に住まう全ての者達を救う可能性に掛けた、

 ウルダへと向かったSランク冒険者達は持ちうる限りの力と勇気を振り絞り、

 魔王の討伐へと挑む、だがそれだけではない、タルタ国からはゲルツ将軍が、

 シルフハイド国からはシルフハイド王が直々に参戦される、

 両名共にSランク冒険者に並び立つ力の持ち主である、

 このことからも分かるように魔王の早期討伐は世界の総意なのだ、

 時間が許すのであれば各国から可能な限り戦力を募り戦いに備えるところだが、

 残念なことにそのような猶予は無かった、確かに数は少ない、

 だが個々が持つ力はいずれも強大であり、間違いなく世界最高の戦力である、

 今ウルダへと集まりつつある者達こそが、魔王を討伐し世界に光をもたらす

 唯一の希望であると私は信じている、ならば我々が為すべきことは只1つだ、

 心を強く持ち、共に手を取り合い、魔王が討伐されるその時まで自身を、

 そして皆の隣に立つ大切な家族と友を守り抜くことだけだ、…とは言ったものの、

 この場で共に頑張ろうなどと声を掛けたところで皆の不安は解消されまい、

 私にもシルフハイド王やタルタ王のような強さがあれば良かったのだがなぁ、

 あるのはこの老いぼれた体のみだ、なんとも嘆かわしいもので最近は膝に来ておる、

 ほほほほほ、うむ…ここは笑うことろなのだが…皆遠慮せずに笑ってくれて構わんのだぞ?」

「カード王、お戯れはそこまでにして頂きたい」


あまりにも苦しい空気を打破するためにレジャーの伯爵が割って入った、


「なに、少し場を和ませようとしただけだ、そこまで厳しい目をせずともよかろう」

「私はいつも通りですが」

「ほほほほほ、そうだな、レジャーノはいつも厳しい目をしておる、

 数日前にはその目で防衛団の者達を震え上がらせたと聞いておるぞ」

「…そのようなことはありません」

「どうやら余計なことを言ってしまったようだな、更に厳しくなりおった、

 皆も言葉には気を付けるのだぞ、特に妻と娘がおる者達、

 実は私もいろいろと苦労しておってな」


カード王が煽って見せると参列していた王妃と娘達が少し大袈裟に

「余計なことを言うな」といった仕草を返した。


『 ははは… 』

「(うむ、まずまずといったところか)」


群衆からこぼれた笑いにカード王と王族達は薄っすらと安堵の表情、

いつ爆発してもおかしくない状況なので内心ヒヤヒヤの綱渡り状態なのだ。


「うむ、場が多少和んだようだな、礼を言うぞレジャーノ」

「いえ」

「さて、皆もそろそろ疲れて来たであろうから手短に話そう、

 私を含めた王族は明日までにギルド総本部へと居場所を移す予定である、

 そうなれば城に配置されている近衛兵を町の防衛に回すことが出来る、 

 皆も思うことはあるだろうが力なき王がしてやれることはこの程度だ、

 ほほほ、どうしても納得できぬと申す者はギルド総本部へと来るが良い、

 緊急時故もてなすことは出来ぬが、せめて私のパンと紅茶を分けてやろう、

 とはいえ皆が口にする物と同じであるからして、妙な期待はせぬようにな、

 王だからといって特別扱いは許されんのだ」

『 ははははは 』

「そしてもう1つ、この度の王都防衛にておいて主力を担う者達を紹介したい、

 かつてSランク冒険者として名を轟かせた2人組でな、皆も良く知っておる人物だ、

 ふむ、察しの良い者達が騒ぎ始めておるようだが、まぁ待つのだ、静かに、静かにな」


群衆をなだめるカード王は沸き立つ期待感を肌で感じていた。


「それでは改めて紹介しよう、皆の危機を救うために

 今をもって現役へと復帰する『白帝のヨトラム』と『雷光のモレナ』だ」


割れんばかりの歓声と拍手を切り裂いてド派手な雷撃が空へと昇る、

ヨトラムとモレナが姿を現すと一段と大きな歓声が沸き起こりお祭り状態になった。


『(ぃよぉぉっし!)』


目の色を変えて大喜びする群衆を見て王族達は心の中で全身全霊のガッツポーズ。


「(ぐぅぅ…白帝…白帝っ! やはり白帝っ! 流石です父上ぇぇ…)」

「(お母様っ…いつも素敵ですが雷光としてのお母様は一段と輝いていますわ!)」


白帝アンチサイドだった子供達もファンサイドへ復帰、

一番端の方で震えながら静かに涙を流している。


「ほれヨトラム、皆の歓声に応えてやらねば」

「と言われましてもねカード王、元々防衛の指揮を取る予定でしたし、

 復帰したからといって特にやることは変わらないのですが…」

「白帝、折角盛り上がっているのに余計なことを言うものではありませんよ」

「よ~し皆~! 頑張って魔王の危機を乗り越えるぞ~!」

『 おぉ~! ははははは! 』


てきとうに話をして不安軽減爆弾解除作戦は無事に成功したのだった。







「お疲れのところ申し訳ありません、少しお時間を頂けないでしょうか?」


役目を終え城壁を降りたヨトラムの元にアルバがやって来た。


「勿論かまわないさ、随分と真面目な顔をしているがどうかしたのかい?」

「元防衛団員達を代表して参りました、私達老兵も防衛戦に参加させて頂きたく思います」

「ありたい申し出だけど無理はするものではないよ、元ってことは皆それなりの年齢なのだろう?」

「はい、55歳の私が一番若く、中には83歳の者もおります、

 全員揃いも揃って役に立たない老いぼればかりです」

「ん?」

「状況把握と統率力に優れた白帝ならば私達のようなものでも有効活用できるかと」

「若者のために道を譲るか」

「はい、どのような作戦でも指示を頂ければ確実に職務を全うさせて頂きます」

「アルバ君の献身さには本当に頭が下がるよ、手を上げてくれている人達も流石は元防衛団員だ、

 誰よりも町の人達を、いや、国そのものを護ろうと考えてくれている、

 後を継がせて貰った身として実に誇らしい! 

 そうだな、うん、君達の覚悟を前にすれば王族はまるで赤子同然だ!」

「発言の意図は良く分かりませんが、王族の方々をそのように表すのは不敬なのでは…」

「ほら、赤子というのは常に護られる立場で自分では何も出来ないだろう」

「ちょっ!? それ以上はお止め下さい、まだ王族の方々が近くにおられますので…」

「私は事実を述べているだけだ、気にする必要はないさ」

「いやそんな…私達は決して王族の方々を蔑む意図はありません、いたって純粋に…」

「大儀であったなヨトラム、ところで先程から何の話をしておるのだ?」

「(カ、カード王!?)」

「おや父上丁度良いところに、ぜひお聞き頂きたい」

「お止め下さい! 本当にお止めを、お願いですので!」

「私は感動しているのです、アルバ君の進言により王族の愚かさと無力さを…」

「人の話を聞けえぇぇ! お願いですからやめろぉぉ!」

「(う~む…ヨトラムの悪いところが出ておるな…)」


アルバのあまりの必死っぷりにカード王は気を利かせて去って行った。


「はぁ…はぁ…胸が痛い…」

「ははははは、大丈夫かい? だから無理はするなと言ったんだ」

「このっ、誰のせいだと…はぁ…あのですね白帝、私達は…」

「理解しているさ、君達の気高い覚悟はしっかりと私の胸に届いている」

「…」

「そのうえでだアルバ君、大変ありがたい申し出だが断らせて貰う」

「何故です? 蓄えがあるとはいえ食料には限りがあります、先の無い者達など早々に…」

「アルバ君! 防衛団とは迫りくる脅威から国と民を護る組織ではないのかい?」

「その通りです」

「ならば護ろう、アルバ君の言う通り時には切り捨てる判断も必要だ、

 だが今は私を信じて護られて欲しい、いや、私達だな、

 ははは、心配は要らないさ、君が護り抜いた防衛団は頼りになるからね」

「…分かりました、宜しく頼みます白帝、ですが必要になればいつでもお声掛け下さい」

「今は防衛団長です」

「ややこしいわ! 復帰したのですからもうどちらでも良いでしょう!」

「ははははは!」


なんだかんだでアルバも笑った。


「(相手の想いを尊重しつつさり気ない諭し、素晴らしいご判断ですわ!)」

「(流石は白帝! 白帝こそ至高!)」


一方、陰から覗いていた子供達はヒーローショーに参列した幼子のように

キラキラと目を輝かせていた。


「(相変わらずねぇ…ちょと育て方を間違えたかしら?)」


更にその様子を伺っていたモレナは少し不安になった。










一方その頃、移動中の松本とモジャヨは。


「「 (ひぇぇぇ…) 」」


2羽の巨大な鳥に睨まれ街道で立ち往生していた。


「(お、大き過ぎぃ…これって確かライトニングホークよね…)」

「(突風が吹いたと思ったらいきなり現れ…)」

「「 (ひぇ!?) 」」


大きな目がズイっと近づいて来て、

硬直している2人を舐めまわすように左から右へと通り過ぎて行った。


「(いやぁぁ!? 食べられちゃう!? こんなの絶対食べられちゃうぅぅ…)」

「(怖ぇぇ! 嘴が怖ぇぇ! え? 何!? 品定めですか!? 

  どっちから食べようかじっくりコトコト品定めしてるんですか!?)」

「「 (ひぇ…) 」」


今度はもう1羽の大きな目が現れて舐めまわすように左から右へと通り過ぎて行った。


「「 (ぅ…) 」」


意図が分からず硬直したまま目だけを動かして後を追う2人、

ポニコーンも座り込んでカタカタ震えている。


ドスドスと足音を立てながら再び1羽目が現れ、

通り過ぎては2羽目が現れ、通り過ぎては1羽目が現れ、

2羽のライトニングホークが馬車の周りをグルグルと練り歩いている。


「(ドスドスが怖ぇぇんだって! 見えないところのドスドスがマジで怖いの!

  そんで見えたら見えたで怖いの! 足がもう恐竜のそれなんですけどぉぉ!?)」

「(な、なんなのよもう!? 食べるんなら食べなさいよぉぉ! 

  怖過ぎて頭がおかしくなっちゃいそうなのよぉぉ!)」


微動だにしていない体に反して心臓はバックバク、

精神面に至っては発狂寸前である。

  

「(オ、オマツ…どうしたらいい?)」

「(どうもこうも…とにかく動かない方が…)」

「「 (ひぃ…)」」

「(いつまでもこうしてられないわよぉ…どうにか追い払えないかしら?)」

「(小さい魔物ならなんとかなりますけどこれは無理です…)」

「(でもでもオマツ経験あるんでしょ…ほら以前卵と一緒に…)」

「(あれはたまたま許されただけですって…

  あと追い払ったんじゃなくて追い出された側なんで…)」

「(その時と同じ…)」

「「 (ひゃっ…) 」」

「(その時と同じライトニングホークならまた許してくれるかも…)」

「(偶然は2度も続きませんよ…違うライトニングホークだったらどうするんですか…)」

「(ほら良く見て…同じかどうか判断して…私おしっこチビっちゃいそうなの…)」

「(いやそんなこと言われても…)」

「(とにかく見て…ほら来るわ…)」

「「 (ひぇ…) 」」

「(どうだったオマツ?)」

「(怖かったです…)」

「(あぁん私もぉぉ…ってそうじゃなくて同じかどうか…)」

「(分かりませんって…前回だってちょっとしか見てないんですから…)」

「(はぁん!?)」

「(!?)」」


ビクッとしたモジャヨに反応して松本もビクッとした。


「(…ぇ? ど、どうしたんですかモジャヨさん? まさか漏らしました?)」

「「 (ひゃっ…) 」」

「(違うわよぉ…あれ…オマツあれ…また別の魔物…)」

「((えぇ…こんな時に…)」

「(あそこよ…ほら見てあそこ…)」

「(ん~?)」


モジャヨが目線で合図する先をよく見ると、

草原の中にこちらの様子を伺っている鳥を見つけた。


「(なんか鶉みたいな鳥だなぁ…デカいけど…確かにあれは別の魔物っぽい…)」


馬車の荷台位の大きさががありライトニングホークとは違いズングリした体形、

色は近いような遠いような微妙なところ、

松本と目が合うとソロソロと草原から出て近づいて来た。


「(こっち来た…オマツこっち来た…)」

「(静かにして下さい…ライトニングホークがいるんですから)」

「「 … 」」


少し離れた位置で鶉みたいな鳥が立ち止まると念入りに松本の顔を確認し嘴を開いた。


「ピーヨォ~」

「(ん?)」

「ピーヨォ~」

「(んん!?)」

「(!?)」


ビクッとした松本に反応してモジャヨもビクッとした。


「(急に動かないでよオマツ…チビっちゃうところだったじゃない…)」

「…もしかしてピ~ヨか?」

「(ちょとオマツ…静かに…)」

「いやでも俺が以前会ったライトニングホークかもしれないんです、

 お前ピ~ヨなのか? 見た目も鳴き声も違うけど…」

「ピーヨォ~」

「え? 本当にピ~ヨ?」

「ピーヨォ~!」

「ピ~ヨ! お前ピ~ヨなんだな!」

「ピーヨォ~! ピーヨォ~!」

「ピ~ヨォォ!」


駆け寄って来た姿を見てピ~ヨだと確信し、

松本も御者席から飛び下りて走り出した。


「ピ~ヨ! 元気にしてたかピ~ヨ!」

「ピーヨォ~、ピーヨォ~」

「そうかぁそうかぁ、随分と立派になっちゃって…ぅぅ…覚えててくれたんだなぁ…ぐぇぐぇ…」

「ピーヨォ~、ピーヨォ~」


およそ2ヶ月ぶりの再会に沸く1人と1羽、

松本に至っては感極まって抱き締めながら涙と鼻水ズルズルになっている。


「(あばばば…)」


一方、松本のとばっちりを受ける形になるモジャヨは

肝を冷やし過ぎて失禁ギリギリエッジランナー状態である。


「危ないわオマツ…早く戻って…」

「大丈夫ですよ、ピ~ヨは凄く優しっ!?」

「オ、オマツゥゥゥゥ!?」


言ってる傍から親鳥に食べられた。


「ピーヨォ! ピーヨォォ!」

「ぐぇ!?」


ピ~ヨの訴えにより吐き出された。


「いきなり抱き着いてスミマセンでしたぁ! 

 大切なお子さんなのに本当に節度のない行動でスミマセンでしたぁぁ!」

「えぇ…」


そして謝罪の土下座、情報量とスピード感に振り回されてモジャヨが困惑している。


「ん? どうしたピ~ヨ? ん? え?」

「ピーヨォ~、ピーヨピーヨォ~」


ピ~ヨが松本の腕を咥えて親鳥の元に連れて行き、

南の方を示して何かを訴えている。


「南…ピ~ヨ、あっちじゃなくて?」

「ピーヨォ~」


巣のある北の山脈を指すと首を振って否定された。


「違うんだ、ピ~ヨ達は南に行くってこと?」

「ピーヨォ~、ピーヨォ~」


頷くと松本の腕を咥えて親鳥に体を摺り寄せた。


「もしかして…俺を迎えに来てくれたってこと?」

「ピーヨォ~!」

「そうか、そうかぁ、ピ~ヨは優しいなぁ、ありがとう、でもゴメン、俺は一緒に行けないや」

「ピーヨォ…」

「本当にありがとねピ~ヨ、ご両親もありがとう御座います、

 心配して貰えて嬉しいんですけど俺も行かないといけない場所があるので、

 一緒には行けないんです、スミマセン」

「ピーヨォ…」


松本が1歩退いて深々と頭を下げるとピ~ヨが悲しそうに鳴いた。


「はは…本当にゴメンね、でも優しいなぁピ~ヨは、本当に…もう大好きぃぃ!」

「ピーヨォ~! ピーヨォォ~!」

「ぁ…」

「オ、オマツゥゥゥゥ!?」


感極まって抱き着いたらまた食べられた。


「ピーヨォ! ピーヨォォ!」

「ぐぇ!?」


そしてまた吐き出された。


「スミマセンでした…ピ~ヨの無垢な優しさがあまりにも嬉しくてですね…

 あと罪悪感もありまして…いやはい…言い訳だってのは分かってます…

 スミマセン…本当にスミマセンでした…」

「えぇ…」


今後は泣きながら土下座する松本にモジャヨが引き続き困惑している。


「元気でな~ピ~ヨ~、次会う時はもっと大きくなってろよ~」

「ピィーヨォォォ!」


その後、せめてもの感謝の気持ちとして松本が大量のパンを出現させ、

食べ終えたライトニングホークファミリーは南の空へと飛び去って行った。


「ピ~ヨって足で鷲掴みにされて運ばれてるんだな…」


小鳥を背中に乗せて飛ぶなんてのはファンタジー的な解釈である。



「ねぇオマツ…さっきのパンって…」

「食パンとフランスパンどっちが好きですか?」

「食パンだけど…」

「はい、どうぞ」

「あぁん!? びっくりした…何? どういうこと?」

「今まで隠しててスミマセン、実は俺、手からパンが出せるんです、

 ポッポ村の皆と特定の人だけが知ってる秘密でして」

「そ、そうなの? ってちょっと待って、いきなり過ぎてモジャヨ良く分かんなぁい」

「俺にも理屈は分からないんで詳しいことを聞かれても答えられないですよ、

 ハッキリと言えるのはマナを消費するので魔法の類ってことだけです」

「え? じゃぁパンの精霊様がいるってこと?」

「いや、いないと思います、レム様もいないって言ってましたし」

「あそう」

「まぁ、とにかくですね、秘密にして欲しいんです、その食パンは口止め料ってことで」

「変な話だけど、いいわ、これはここだけのヒ・ミ・ツ」

「おぉ~話が分かる~」

「オマツも私の秘密を内緒にしてくれたもの、それに良い女ってのは口が堅いのよ」

「ひゅ~モジャヨさん素敵~良い女~」

「やぁ~ん嬉しいぃん、もっと言ってもっと言って~ん」


モジャヨが両手で頬を覆ってクネクネしている。


 

「結局さっきのライトニングホークは何だったのかしら?」

「住処に俺を連れて行ってくれる気だったみたいです、たぶんですけど」

「それって以前オマツが卵と一緒に連れていかれた巣のこと?」

「アレは竜の背ビレですから違います、一時的な子育て用の場所なんでしょうね、

 詳しい人によると本来の住処は禁断の地らしいんで」

「へ~そうなの?」

「らしいですよ、俺も聞いた話なんであれなんですけど、

 禁断の地より安全だからこっちの大陸で子育てしてると考えられてるみたいです、

 だとしたら生後2か月くらいでまだ飛べないピ~ヨを連れて帰るのは早過ぎませんか?」

「そうねぇ、まだまだ心配よね、人間だったら2ヶ月なんて赤ちゃんだし」

「ライトニングホークも魔王の復活を察知して避難したんだと思います」

「え? そういうこと? マズいわよ~オマツ」

「ですよね、急ぎましょう」

「さぁ立ってポニーシャ、いつまでも泣いたら駄目駄目よ~」

「モジャヨさん、ポニ助は雄ですよ」

「分かってないわねオマツ、ポニーシャは女の子よ~、よく見て、女の顔してるでしょ」

「(う~む…そうなのか?)」


松本達の馬車を引くポニコーンはちょっとまつ毛が長めだった。


「ポニ助いけそう?」

「…」

「頑張ってポニーシャ、貴方だけが頼りなの」

「ヒヒン」

「(う~む…)」


名前が気に入ってるだけかもしれないが、たぶん女(雄)っぽい。


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