256話目【決戦前夜】
時刻は20時過ぎ、クサウラ将軍のテント。
「「 な、なんだって~!? 」」
「イナセ兵士長がシルフハイド国に寝返った!?」
「んな馬鹿な!? どういうことですか!?」
机をバンバン叩いて詰め寄るオタル兵士長とターニア兵士長、
椅子に座ったクサウラ将軍が仰け反っている。
「そんなに驚くことも無いだろう」
「驚きますよ!」
「だってあのイナんごご…」
「とにかく落ち着け、はぁ…」
顔を鷲掴みにされて元位置に押し戻される2人、
クサウラがヤレヤレといった様子で溜息を付いている。
「お前達なぁ…そんなに大声出して誰かに聞こえたらどうする?
念のためここに呼び出して正解だったな」
「「 モゴモゴ(すみません) 」」
「マイの件もあったんだ、少しは考えたりしなかったのか?」
「全く考えませんでした、な? ターニア兵士長?」
「私は…」
「え? マジ?」
「いや、そういうのじゃなくて、ちょっと帰りが遅いなって」
「そうか? 偵察に出たのが10日前でシルフハイド国の町までは、え~と…」
「1~2日、地形によっては3日だ、かなり多めに見積もってな」
「道に迷ってんですよきっと、それか魔物に襲われて…」
「オタル兵士長~自分で言っててあり得ると思うか?」
「まぁ、魔物はないですね、確実に」
「うん」
それは満場一致で無いらしい。
「残念ながら道に迷うというのも考え難い」
「テイジンさんの記憶は何十年も前の話ですし、同じ道を通ったとは限りませんけど」
「ふぅむ…」
「あれ? 俺なんか変なこと言いました?」
「ターニア兵士長」
「はい、シルフハイド国の町は森から飛び出ている巨木の下です、
兵士長たるもの作戦書にはちゃんと目を通しておいた方が良いと思います」
「そういうことだ、迷っても木に登れば確認できる」
「す、すみません…」
オタルがちょっと凹んだので緑茶的なヤツと煎餅的なヤツで一服。
「最近のイナセは変だっただろ、トド元将軍と決別を宣言するし、
マイとは顔を合わせれば喧嘩ばかり、何故か急に大兵士長を意識し始めたりな」
「それは考え方の違いだって言ってましたけど」
「極端すぎないか?」
「まぁ…」
「確かにあまり等級とか気にする人ではなかったですね」
「俺だってイナセを信頼したかった、そのためにお前達に監視させたんだが」
「「 実力不足ですみません 」」
「いや、お前達がどうというよりもアレは警戒心が強過ぎる、異常だ」
「だからといって…」
「他にも理由があるのですよね?」
「ある、これだ」
机に見覚えのある書簡が置かれた。
「これってあの時の」
「マイさんと接触した怪しい回復士が持ってたヤツですよね?」
「そうだ、この中に俺がイナセが寝返ると考える根拠が書かれている、
読んだら後には退けんぞ、どうする?」
「「 … 」」
顔を見合わせる2人、少し迷ったようだが頷いてオタルが手に取った。
「嘘だろ…」
「カエン様は…」
「そこまでだ、あの時俺が止めた理由が分かっただろ?」
「た、確かに…」
「これは危険ですね…」
「絶対に他言するなよ、俺はお前達だからこそ見せたんだ」
「しませんて…」
「それと油断するな、誰が敵か分からんからな、俺がそうかもしれんぞ」
「はは…将軍が敵て…笑えない冗談はやめて下さい…」
「そういう状況ということだ、確かめようがない以上は
お前達のどちらかが敵の可能性もあるんだぞ」
「「 え? 」」
「オタル兵士長もしかして…」
「違う! お~い、違うぞ~! 変な目で見るなよ」
「でも、毎日コソコソしてるよね?」
「何が? コソコソなんてしてませんけど?」
「封鎖中の坑道」
「ひゃっ…」
オタルが変な声を出して白目になった。
「どうしたオタル兵士長? 何かやましいことでもあるのか?」
「なにしに行ってるんですか? まさか国外逃亡の手助けとか?」
「ち、違う! 断じて違う! 実はその~…」
「「 … 」」
オドオドするオタルに視線が集まる。
「ま…」
「「 ま? 」」
「魔物の…子供が…」
「「 … 」」
「だって可哀想なんだよ~きっと親と逸れたんだ、
まだ小さくて1人で餌捕れないのぉ~、
俺が行かないと飢えて死んじゃうかもしれないだろ、
野営地に連れて来る訳にもいかないし~」
「「 (う~ん…) 」」
野良魔物にこっそり餌を与えているらしい。
「実は今日手を舐められたんだ、俺が行くと柵の隙間から顔を出してさ~
可愛いんだぜ~」
「へぇ…」
「どうでも良さそう!?」
「(まぁ、魔物だしな…)」
兵士は魔物から国民を守る仕事です。
「そういうターニア兵士長だってコソコソしてるだろ」
「な、何が? 私は別に…」
「いつも訓練中に鞄を持っていなくなる」
「へぁっ…」
今度はターニアが白目になった。
「理由を聞かせて貰っていいかターニア兵士長?」
「何か怪しい物でも入ってるんじゃないの~? 書簡とか」
「ち、違います! アレは…」
「「 … 」」
しどろもどろのターニアに視線が集まる。
「オ…」
「「 お? 」」
「オニギリ…パンもたまに…」
「「 … 」」
「どうしても我慢できないもので…配給品の余りを分けて貰ってて、
ずっと動きっぱなしでお腹が空くんですよ~、、
訓練中にお腹鳴ると格好付かないし、他の人に見られると気まずいから…その…」
「「 (う~ん…) 」」
訓練兵達は組み分けごとに交代するが
兵士長は基本的に1日中指導しっぱなし、お腹が空くのも仕方がない。
「いつも貰いに行ってるせいか最近具が多くなって、
オニギリ3個貰える時もあるんですよ、
他の人には申し訳ないけど有難いな~って」
「ほ~ん…」
「もしかして憐れまれてる!?」
「(コイツ等に策略とか無理そうだよな…)」
岩陰とかで周りを警戒しながら食べているそうな。
「お~い話を戻すぞ、説明するから聞け~」
「俺あまり複雑なのはちょっと…」
「私は大丈夫です、複雑すぎるとあれですけど」
「安心しろ、分かり易いように図にしてある」
「「 たすかります~ 」」
クサウラによるカエン関連と絡めたイナセが裏切る理由説明(図解)。
「「 な、なんだって~!? 」」
「イナセ兵士長がツキヨ参謀と組んでいて!?」
「カエン様を皇帝にするためにトリフェン様とアズラ様をんごご…」
「声が大きい、さっきも言っただろ…」
「「 もごもご(すみません) 」」
顔を鷲掴みにされて元位置に押し戻される2人、
クサウラが溜息を付いている。
「カエン様を唆してシルフハイド国と戦争になるように仕向けた、
だが実はイナセ兵士長とシルフハイド王は取引をしており」
「クサウラ将軍の立案した作戦の変更を進言したのはワザと負けるためである、
え~と、マイさんとの不仲は実は演技で、
国民を国外へ逃がすことで訓練兵の数を減らし軍の弱体化を図っていた」
「囮部隊の装備に関する提案も弱体化の一部、
奇襲部隊の狙いは障害になるクサウラ将軍と有力な兵士長の排除」
「いいそ、最後はここだ」
クサウラが登場人物が線で繋がれた図を指でなぞっており、
オタルとターニアが目で追いながら説明された内容を復唱している。
「え~と、戦争に負けた後はカエン様とツキヨ参謀を、
無益な戦争に国民を駆り立てたとして断罪し」
「シルフハイド王に任命される形で敗戦後の国を治める(国を手に入れる)、
一方、シルフハイド王は鉱石の採掘権(仮)を手に入れる」
「「 はぇ~ 」」
口半開きで感情の薄い2人、若干パンク気味である。
「どうだ? 理解できたか?」
「まぁ筋は通ってます、かね?」
「これならイナセ兵士長の変わりようも理解できる、かも?」
「でもちょっと偵察の帰りが遅いからって、こんなねぇ…俺はまだ…」
「分かるぞオタル兵士長、俺もこの予想は外れて欲しいと思っている、
考えられる中で最悪の事態だからな」
「シルフハイド国とイナセ兵士長が一緒に攻めて来るとか」
「はは…考えたくないですね…」
オタルとターニアが遠い目をしている。
「だがなぁ~残念なことに俺の予想は当たりそうなんだ」
「「 えぇ… 」」
「(どんな顔だそれは…)」
絶望と困惑が入り混じった顔である、
平たく言えばムンクの叫びみたいになっている。
「イナセが偵察に出る際に4人の監視を付けた、
カガ兵士長、マワリ兵士長、サルトバ兵士長」
「フユキ兵士長ですか?」
「そうだ」
「あぁ~それで最近見なかったのか」
「この4人はイナセと古い付き合いでな、取り分け仲が良い、
実力も申し分無い、もしもの時にはイナセを止めてくれると期待したんだが…」
「誰も戻ってないんですか?」
「あぁ」
「全員は流石に変です」
「イナセと戦闘になったか、元から組んでいた、もしくは取り込まれたか、
罠に嵌められた可能性もある、何にせよ俺の失態だ」
「「 … 」」
「全ての話を踏まえてお前達はどう思う? どうしたい?」
「私はクサウラ将軍の考えを支持します、
最悪を想定した方が何かあった時に対処できます」
「オタル兵士長はどうだ?」
「俺イナセ兵士長のこと信じてるんですよ、でも状況的には…
兵士長だしちゃんと考えないといけないってことは分ってるんですけど…」
「分かるぞオタル兵士長、何もかもが不確かだ、だが信じられるものもある」
「その書簡ですか」
「あぁ、コイツはな、マツバ元宰相が国内だけではどうにもならないと判断して、
国外に出た者達と他国の助力を得るため残した最後の希望だったんだ」
「元? 最後ってどういう…」
「マツバ宰相に何かあったんですか?」
「マツバ宰相は亡くなられた、だから元宰相だ、まだ後任も決まっていない」
「嘘…」
「まさか殺されたんじゃ…」
「分からん、が、その可能性もある、この書簡を持っていた女は
キノという名でマツバ元宰相の弟子らしい、
国外への脱出方法を探っていてマイの元に辿り付いたそうだ」
「あれはそういうことでしたか」
「たまたま俺達が捕えたと」
「運が良かった、あと少し遅ければこの書簡は処分されていたかもしれん、
俺がイナセの策略に気付けたのはお前達のおかげだ」
「「 へへへ、どうも 」」
オタルとターニアが照れくさそうにペコペコしている。
「イナセがシルフハイド国と手を組んでいるとなると、相当マズイぞ」
「う~ん、作戦が敵にバレているってことだし…」
「正面からぶつかると確実に負けますよねぇ…」
「なら戦わなければいい」
「「 え? 」」
「こちらが手を出すまで静観しているくらいだ、
シルフハイド国は正当な理由を欲している、
ここでキキン帝国が戦争を中止するとだ…」
「なるほど、シルフハイド国は責めて来ない、つまり戦う必要がない、
誰も死ななくて済むし イナセ兵士長が寝返っていても関係ない、
そういうことですねクサウラ将軍?」
「うむ、そういうことだ」
「いやほ~う! そ~れで行きましょう!」
「うむ、勢いがあることは良いことだぞオタル兵士長、とりあえず座れ」
「はい」
オタル着席、晴れ晴れとした顔でお茶を啜っている。
「あの~戦争を止めるってどうやって?」
「え?」
「それが出来ないからこうなってる訳で」
「あ…」
「あ…て、オタル兵士長ちゃんと考えてる?」
「可能な限り…」
「心配するな、俺が終わらせる、この書簡を使って無理やりにでもな」
「それは!? キキン帝に反逆するってことですよ?
カエン様は正式な皇族ではありませんけど
皇帝であることには変わりありませんし…」
「いいさ、元々気乗りのしない任務だった、俺は将軍だからな、
国民を守ることこそが仕事だ、そしてお前達兵士を守ることも俺の仕事だ、
そのためなら皇帝殺しの罪くらい背負う覚悟はある」
「「 クサウラ将軍… 」」
「俺は明日の朝一で宮殿に向かいでキキン帝に謁見する、
お前達は俺を信じて全兵士と訓練兵を前線から撤収させろ」
「「 はい! 」」
オタルとターニアがテントから出て行き、
暫くして双子兵士長の片割れが入って来た。
「失礼します」
「うむ(どっちだ? あ、タラコか)」
「何か気になる事でもありましたか?」
「いや、何も」
胸が小さいので姉のタラコである。
「わざわざあの2人を取り込む必要があったのですか?」
「ふふふ、こういう細かい地固めが大切なんだ、
ことが成った時に知っていたのと知らなかったのでは印象が違うからな」
「それにイナセ兵士長と争うことになっても
こちら側に居て貰った方が都合が良い、ですよね?」
「そうなのだが、お前が言うと勘ぐってしまうな」
「私なりに一番勝率の高い方法を探っているだけです、相手が相手ですので」
「油断は出来んな、お茶飲むか?」
「頂きます」
タラコもお茶で一服。
「イナセ兵士長がシルフハイド王に助力を求める可能性はあるのですか?」
「十分あり得る、だがまず無理だな、
お前がシルフハイド王なら敵国の兵士の頼みを聞くか?」
「いいえ、罠だと思います」
「俺もだ、どうやって信じて良いのかわからん、
シルフハイド国側からすれば助力する利点も無いしな、
監視を任せた4人との戦闘でも見たならイナセの危険性に目がいく、
警戒されて終わりだ」
「帰りが遅いのは助力を求めて拘束されたか、
あとはそうですねぇ~国外へ逃げた?」
「マイを置いて逃げはせん、大方偵察4人と仲良く檻の中だろう、
なんとかシルフハイド王を口説こうとしてるんじゃないか?」
「マワリ兵士長達のやったことを知れば激高して
殺してしまったかもしれませんよ」
「おいおい、滅多なこと言うな、俺は全員生きて帰って欲しいと思っている」
「おや、実は私もです」
「嘘だな」
「あははは、本当ですよ~クサウラ将軍は私を何だと思っているんですか?」
煎餅を齧りオバちゃんみたいに手をヒラヒラさせている。
「長い道のりだったが明日で全てが終わる、楽しみだな」
「はい」
クサウラの先見性は非常に高く、
実際殆どが予想通りに推移している、
これは運否天賦ではなくクサウラ自身が望む結果を得るために
あの手この手を尽くし軌道を修正しているからである。
優れた先見性と、率先した行動力に加え、
武力と求心力とリーダーシップとなんかフランクな親しみやすさと、
ムキムキ筋肉と髭と、あと野心も少々。
世が世なら、いや、産まれた世界が異なれば
国を統べていたに違いない逸材である。
キキン帝国の行く末を賭け各々の想いが交差する中、
盤上を支配しているのは間違いなくクサウラ、
夜明けを待たずして勝敗は決していた。
「(へぇ~凄い、こりゃイナセさんが警戒するわけだよ)」
本来なら勝敗は決していた…のだが、
盤上の外から現れた予想外の出来事が2つある。
「(明日の朝一か、お腹もすいたし戻って報告しよ)」
1つ目はたった今テントの上から飛び去った僕っ子、シルトアである、
ハイエルフより遥かに優れた風魔法の使い手であり、
成人女性にしては遥かに小柄な彼女は、
繊細な魔法さばきにより飛行中の風が周りの与える影響が極めて小さい、
蝋燭に囲まれた状況でも火を揺らさずに離着陸できる程に
研ぎ澄まされた技術を有している、極めて静音で正確、
並大抵のことでは気付かれないのでまさに隠密のシルトアである。
今回もテントの上でこっそり聞き耳を立てていたらしい、
よもや会話を盗聴されているとは思うまい。
※今回は周りが静かだったので風魔法による音の拡張は行っていません。
「お、シルトアが戻って来たな」
「何か動きがあったということでしょうか?」
「そうでなければ許さん、飯抜きだな」
「いやそれは流石に可哀想では…確かに野宿続きで体が痛いですし、
魔物に警戒しなければならないので気が休まりませんが」
「ただ待つのがこんなにも退屈だとは…はぁ…
町から届く食事だけが唯一の楽しみだ、せめて酒が飲めればな…」
「まぁまぁケルシス様、もう暫くの辛抱です」
国境付近の森の近くでは簡易な小屋の中でシルフハイド王とシャガールが食事中、
他にも主要メンバーが揃っているが暗がりでよく見えない、
誰も火を使っていないのは潜伏中だからである。
「戻りました~」
「いかがでしたかシルトア様?」
「クサウラ将軍がぐぇ…
「先に言っておくが内容によっては飯抜きだぞ」
「やめて下さいよ~それ好きなんですか?」
ケルシスがシルトアを締め上げて
マナを込めた右拳を顔に向けシュッシュッしている。
「僕はカード王国とタルタ国の代表ですよ、いいんですかそんな対応で」
「う~む…仕方ない、肉をやる」
ちょっと悩んだ結果、しぶしぶ何かの肉を貰った。
「報告なんですけど明日の朝一にほにゃららで~」
「「 ほう 」」
「早速皆に知らせましょう」
「ふふふふふ、ようやくだな、明日は早いぞ、早く寝ろシルトア」
「まだ食事中ですって、肉旨い」
2つ目は他国の介入である、
イナセとテイジンだけであればクサウラの読み通り
シルフハイド王が助力することはなかった、
だが、ルコール共和国の代表であるシャガールと、
カード王国とタルタ国の代表であるシルトアが現れたことにより、
思いがけず全ての国の総意がイナセを後押しする形となった。
そして盤上でクサウラの予想を逸脱した出来事が1つ、
ダダ兵士長とタマニの心変わりである。
「ダダ兵士長からの情報では明日だ、もう後がないぞトド」
「イナセは間に合わんか、困ったの~」
「私達が出来ることは2つだけだ、クサウラより先にキキン帝と謁見し
戦争の中止を宣言させる、イナセ君が戻って来た時のために
マイさんを見つけ出し人質にされないようにする」
「分かっておる、タマニまだ調べが付いていない地下牢は何処じゃ?」
「西側から北側に掛けて、まだ半分も調べられていません」
「結構多いっすね、タマニさんもうちょっとなんとかならなかったんすか?」
「黙れ馬鹿が」
「おん!?」
「担当以外の牢をそう簡単に調べらえるか、殺すぞ」
「まぁまぁ、お2人共、落ち着いて、御一緒に、筋トレでも、いかがですか?」
「「 いえ、遠慮します 」」
腕立て中のラニー支部長に首を振るタマニとクダマキ、
ここはトド率いる反抗勢力の根城、東の地下牢である。
「「 ふん、ふん 」」
ソバコとソバミも一緒に腕立て中、若干顔が変わっている気がする。
「マツバよ、マイは内地に捕らわれていると思うか?」
「いや、可能性は低いだろう、私なら野営地を選ぶ」
「可能性は低いが無くないか、良し、出るぞ」
「なに? 今からか?」
「そうじゃ、なにせワシ等の戦力は乏しいからの~、闇夜に紛れんと無理じゃて」
「任せて下さい! 俺がトド将軍の力になるっす!」
「ほほほ、そうしたいところじゃが、
取り敢えずはタマニに頼るとするかの、得意そうじゃし」
「分かりました」
「俺も、俺もやりますって、頑張りますって」
「黙ってろ、お前弱いし暗闇で真面に動けないだろ」
「はい…すみません…」
正論でぶん殴られてクダマキがションボリしている。
「そう落ち込むなクダマキ、ワシ等を守るのがお前の役割じゃ」
「ト、トド将軍を俺が…が、頑張りるっしゅ!」
『 (りるっしゅ?) 』
噛みはしたがクダマキが活力に満ちてキラキラになった。
「トドよ、宮殿に忍び込むのか?」
「いや、キキン帝に会いに行くのは朝日が昇ってからじゃ、
それまでは各地の地下牢でも巡ってマイを探すとしよう」
「ほう、ついでに邪魔になる兵士を減らすということで良いのか?」
「ついでじゃな、本命はワシの槍じゃ、
カエンを説き伏せる時に必要になる、あそうじゃ」
「どうしたっすか?」
「飯食べとらんな」
「トドよ…今はそんなことを言っている場合ではないぞ」
「いいや、これは重要なことじゃぞマツバ、腹が減ってはなんとやらじゃ」
「飯を取って来ます、手伝えクダマキ」
「うぃっす」
「だそうです、この辺りで終わりにしましょう」
「いや、あと10回、いや20回お願いします」
「最後の追い込みが一番気持ちいい…」
「(この人達も一緒に行くのだろうか?)」
ラニー支部長とソバコとソバミも一緒に行きます。
「ラニー支部長、これから命がけの大事なのだが…
それは絶対に飲む必要があるのか?」
「当然です」
魔法の粉をグビグビする3人、
筋トレ後のタンパク質摂取は全てにおいて優先される。




